中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2016年09月28日 (水)
2016年09月27日 (火)
国会の開会は昨日でしたが、すでに8月下旬から自民党の中では政策に関する議論が始まっています。
自民党には、「部会」と言う制度があります。様々な政策課題に対応した部会がほぼ毎日開催されており、どの部会でも自由に参加して意見を述べることができます。
つまり、わたし自身は国会では予算委員会と財政金融委員会に所属していますが、自分の関心のある分野や課題に関する自民党内での議論にいつでも参加できるという仕組みです。
また部会では、関係省庁の担当者やその分野に詳しい議員の発言や議論を聞くことができますので、国会議員としての能力を高める非常に良い勉強の場でもあります。
ただ問題は、同じ時間帯に複数の部会が開催される場合があることです。たとえば今日は、朝8時から外交部会と経済産業部会、そのあとが厚生労働部会でした。同時に2つの部会に出ることは不可能なので、スタッフと手分けしてカバーしました。
かなり大変ですが、それだけの労力をかける価値は十分にあると思います。
参議院議員 中西けんじ(神奈川県選出)
2016年09月26日 (月)
2016年05月26日 (木)
5/24(火)の財政金融委員会では、「骨太の方針」の内容の変化、今後の財政運営、金融機関と顧客のあり方、金融グループにおける経営管理の充実について取り上げました。
1. 「骨太の方針2016(素案)」について
まだ先週水曜日の経済財政諮問会議において発表されたばかりの(素案)段階ですが、いわゆる「骨太の方針2016」の内容に大きな変化があったので取り上げました。
昨年と同様に「経済の好循環」がうたわれているのですが、昨年は「中長期の発展に向けた重点課題」とされていたのに対して、今年は「成長と分配の好循環の実現」と「分配」という文言が明示されていました。冒頭に「結婚・出産・子育ての希望・働く希望・学ぶ希望の実現」が掲げられており、成長戦略から「分配」に重点が移っている様に見受けられます。
従来から「成長の果実を確保した上で分配へ」という主張をしてきましたので、「社会保障を一層充実させることが可能な段階に至ったことを示したものか?」という点に関して大臣の所見を伺いました。
麻生財務大臣からは、「単に成長の成果を国民全体に行きわたらせるということに留まらず、分配面の強化が成長力の強化につながるという好循環を意識したもの。特に『格差を固定しない』という観点から、雇用環境の改善に力を入れてきており、有効求人倍率は24年ぶりの高水準、最低賃金が3年連続で引き上げ、ベアが3年連続となっている。社会保障面でも所得の低い方への健康保険負担の軽減などが進んでいる」という答弁がありました。
今回の骨太の方針では、「働き方の改革」が、「最大のチャレンジ」として取り上げられています。日本の社会の活性化のためには、長時間労働の是正や多様な働き方を認めることは非常に重要です。
「同一労働同一賃金の実現」に関しては、正規労働者と非正規労働者の待遇格差の改善という文脈で語られることが多いですが、さらに「就職ではなく就社。新卒で入りそこなうと大変」という日本の会社の職に対する考え方に対する問題提起というところに大きな意味があると考えています。
2. 今後の財政運営について
日本のGDP成長率がこのところ一進一退を繰り返している理由のひとつには、政府支出の寄与度が2013年度以降低い事があると考えています。震災の影響が懸念される中、先日補正予算が成立し、本年度予算の前倒し実行も行われていますが、そうなると下期の反動減を懸念せざるを得ません。
先日のG7では「各国が自国の状況を踏まえつつ財政・金融政策を実行することで成長を促進する」ということで合意してしますので、「一進一退とならない様、今後も機動的な財政運営を行なう準備が整ったと理解してよいか?」とおたずねしました。
麻生財務大臣からは、「各国で色々と事情が異なるのは確かだが、『資金はあるが需要がない。個人消費、民間設備投資が出なければ政府支出が出る必要がある』ということでは一致している。日本は97兆円という史上最大の予算を組み、リーマンショック直後以来となる8割の執行前倒しを目指している。従って、指摘された通り後半に空きが出てくることは間違いない。今後の経済情勢によるが、柔軟に対応することはきちんと伝えている。ハードランディングを避ける為には、需要が必要という点でG7各国は一致している」との答弁がありました。
3. 金融機関と顧客との関係のあり方について
現在の銀行の窓口では、ほとんどすべての保険商品の販売可能です。従って、相当な額が取り扱われています。
生命保険は「一般的な保障性の保険や安全な貯蓄性保険」と「特定保険契約」に大別されます。この「特定保険契約」とは、変額保険や外貨建ての保険などを指し「元本割れリスクがある」「投資性が強い」ことから金融商品取引法の適用対象となっています。
そこで銀行窓販に占める「特定保険契約」の割合をおたずねしたところ、金融庁から「8割」という驚くべき答弁がありました。正確な統計はないそうですが、金融庁の担当の方に確認したところ、「生命保険会社がみずから販売する場合には、この割合ははるかに低い」とのことでした。
これほどの割合になるということは、インセンティブがあるはずです。そこで手数料をお伺いしたところ「円建てで1~6%。外貨建てでは4~9%。商品が複雑で説明負担が大きいことなどの理由から『高く設定されている』と認識している」とのことでした。
金融庁も「特定保険契約は投信と同じなので、手数料を開示させる方向」に動いていました。ところが先週土曜日の日経新聞に、「保険の販売手数料の開示を見送る」という記事が掲載されていました。開示が滞っているというのでは困ります。
そこで手数料にとどまらず、「金融機関と顧客との高度の信頼関係(フィデュシャリ―・デューティー)」との観点から大臣の所見を伺いました。
麻生金融担当大臣からは「顧客との信頼関係をきちんと構築するために、情報を開示し説明責任を果たすことは、信用にかかわる重要な問題であると認識している。従って、一律に最低限の対応を義務づけるよりも、各金融機関がその趣旨を十分に理解して対応するように促す方が効果的だと考えている。いずれにしても開示していくという方向にいかなくては、顧客からの信頼を得られないのではないか」など、顧客保護を高次元で確実なものとする方向性が示されました。
4. 金融グループにおける経営管理の充実
これまで金融庁の「金融コングロマリット監督指針」で定められていた金融グループの経営管理責任が、今回の銀行法改正で法制化されました。ただ、グループ持ち株会社は、株主としての権限はあるものの子会社の取締役に具体的に指揮命令する権限がなく、「経営管理の充実」という点ではもう一歩踏み込み不足を感じます。
この点が今回の改正で制度化されなかった理由と今後の方向性を質しました。
金融庁からは「問題点としては認識している。ただ銀行法だけではなく、子会社の少数株主の権利保護など会社法に関わる部分もあり、他の法規との整合性など検討すべき課題が残っている。他の省庁と連携をとりながら、引き続き検討する」との答弁がありました。
2016年04月15日 (金)
2016年03月23日 (水)
3/22(木)の財政金融委員会では、企業の国際競争力と公的負担、企業業績と賃上げ、信用保証制度の見直し、地域金融機関のリスク管理などについて取り上げました。45分という長い質疑時間のおかげで、じっくりと落ち着いて議論をすることができました。
1. 広義の企業の公的負担の国際比較の必要性
冒頭、目標としていた法人実効税率の20%台への引き下げ目途が立ったことを評価した上で、日本の立地競争力、企業の国際競争力の強化という観点からは、租税特別措置や社会保険料の事業主負担などを含めた「広義の企業負担の国際比較が必要ではないか」という問題提起を行ないました。
2. 企業業績と賃上げ
内部留保は「過去の税引き後利益から配当などを引いたもの」という会計上の概念であり、「内部に現金が留保されている」ということではありません。従って「内部留保を吐き出させて、、、」という議論は誤りであることを指摘する一方、「過去5年間に積みあがった32兆円の現預金は、賃上げや投資に回すことができるはずでは?」という問題意識に関して政府の見解を伺いました。
さらに、春闘の一斉回答に見られるように「労使ともに未来を見ず、過去を見て見通しを形成している」ことなどを指摘し、物価上昇率+生産性上昇分の賃上げを行なわない場合「コーポレートガバナンス・コードに基づき、説明責任を求めていくべきではないか」と提言しました。
3. 信用保証制度の見直し
昨年5月の参議院経済産業委員会で、「信用補完制度に対する多額の財政支援が継続している状況に鑑み(中略)見直し及び検証を行うこと」という付帯決議がなされています。「多額の税金が、制度の赤字の穴埋めに投入されている」という指摘ですので現状を質しました。
答弁で示された数字によれば、景気の回復によって財政状況は順調に改善していました。中小企業庁からは「信用保証制度の見直しは、財政状況の改善のみを目指すものではない。創業期の支援を手厚くするとともに、金融機関がより中小企業に寄り添った業務を行うことを目指す」との答弁がありました。
「見直しによって、中小企業の駆け込み寺的役割が落ちるのでは」という問いに対しては、「見直しで貸し渋りが起きるようでは元も子もない。きちんとモニタリングを行なう」との答弁がありました。
4. 金融機関のリスク管理
特に地域金融機関において、
1)投資信託への投資がここ数年急増している
2)透明性、流動性が低くリスクの高い「私募投信」を購入している
3)金利水準全体が下がったことから、より高い利回りを求めて満期までの期間が長い債券の残高が増え金利リスクが増大している
4)外債投資が増加したことで、信用リスク、為替リスクに加え外貨資金調達リスクを抱えるようになっている
といった点を指摘し、金融庁の認識と対処方針を伺いしました。
金融庁も同様の危機意識を持っており、信用リスク、流動性リスクなど様々な観点からチェックを行なうとともに、「ストレス・テストの実施、非常時の詳細なアクション・プランの作成」などの施策を検査指針に織り込み、市場リスクの管理体制を注視しているという答弁がありました。「外貨調達構造はぜい弱」という答弁があったことからして、今後市場が大きく変動した場合には注意すべきだと思われます。
最後に、投資信託や外債投資に資金を振り向けることは、国債や日銀の当座預金に資金を寝かせているよりはマシではあるものの、信用創造つまり貸出あっての金融機関のはずであることを指摘して質問を終わりました。
2016年03月11日 (金)
本会議での11回を含め170回目の質疑となった3/10(木)の財政金融委員会では、金融機関の日本経済に果たすべき役割、財政政策のあり方などについて取り上げました。
1. 金融仲介機能の復活
<不動産向け融資の伸び>
大規模な金融緩和によって、民間銀行の貸し出し残高は過去3年前年比プラス2%程度で安定的伸びています。ただ、不動産向け融資の伸びが高まっているという気になるデータを入手したので、まず
(1) 不動産融資全体の伸びに問題はないのか
(2) 大手行よりも地域銀行のほうが不動産融資への集中度が高い。「人口減少傾向は地方のほうが厳しくなる」と指摘されている中、今後リスクが顕在化してくるのではないか
という点に関して金融庁の認識をお伺いし、
「バブル期の前年比30%などという水準にはないが、伸びが高まっていることは認識している。金融機関のリスク管理体制のみならず、賃貸業界向け融資がビジネスモデルとして持続可能なのかという観点までを含めて注視している」
とのご答弁を頂きました。やはりかなり気になっている模様です。
<質の高い金融仲介機能への道筋>
「『事業性を評価した融資』といった金融機関本来のビジネスができていないことが、不動産融資の伸び(担保主義)につながっているのではないか」
「麻生大臣は『金融処分庁というイメージを脱却し金融育成庁を目指す』と再三強調しているが、実際の取り組みはどうなっているのか?」
という質問に対しては、
「幅広い事業支援を行う姿勢が、営業現場レベルにまで浸透しているかを評価するなどの取り組みを行なっている。融資先企業に金融庁が直接ヒアリングを行なうなど、工夫している」
とのご回答を頂きました。
たしかに「金融仲介の改善に向けた検討会議」が発足し、昨年末の第一回会合ではかなり突っ込んだ議論がなされていました。最近活発化している地銀の再編を含め、今後の動向を注視していきたいと思います。
2. マイナス金利政策の影響
<金融機関の収益への影響が軽微、過去最高益、それなのに賃上げ見送り?>
マイナス金利政策の金融機関の収益への直接的な影響は200億円程度と試算されており、約8兆円の資金益と比較しても大きくはありません。しかも、2014年度の銀行全体の当期純利益は、約3.3兆円とほとんど過去最高を記録しています。
そこで、
「金融機関の経営に関する懸念はほとんどないのに、過去最高益を叩きだした3メガバンクのベアが見送りとなるというのは如何なものか?」
とおたずねしたところ、
「一般論として、もうかっているのに現金をためこむばかりという点には問題意識を持っている。大臣も経済財政諮問会議やその他の機会をとらえて、税制改革の趣旨を理解して賃上げに前向きに取り組んでもらえるよう要請している」
という答弁がありましたので、さらに
「マイナス金利政策を理由に、組合側からベアの要求を取り下げたと報じられている。依然としてデフレマインドからの脱却ができていないこと示しており懸念せざるを得ない」
とコメントしました。
3. 財政政策のあり方について
「入るを量りて出ずるを制す」ということわざがあるように、「収入がどれくらいあるのかをまず考え、それに見合った支出をしなさい」といわれれば、ほとんどの方が納得すると思います。しかし、財政政策の場合は、若干事情が異なると考えています。
「本当に必要としているところにおカネをとどける」ということをまず考え、「そのために必要な財源をどうやってねん出しようか」という順番ではないでしょうか?
この点に関する認識をお伺いしました。
財政再建を掲げている財務省としては非常に答えづらい質問だったのですが、岡田財務副大臣から「今後の歳出の伸びに対応するために、持続可能な財政構造を構築するよう努力する」との答弁をいただきました。
家族や企業なら「ひどい状態になっている人がいたら、助けてやろう」という自発的な連帯が期待できます。しかし社会全体、見も知らない人同士の連帯というのは容易ではありません。本当に援助が必要な人に対しては、政府が関与する必要があります。
ただ財務省が懸念するように、歳出が税収を大きく上回っているのも事実です。持続可能な財政とするために、きちんとした成長戦略を実行し税収を増加させることが重要です。
2016年02月19日 (金)
2/18(木)の財政金融委員会では、マイナス金利政策導入と新たなETFの買い入れスキームなどを取り上げました。
冒頭、「今回のマイナス金利政策は『金融政策のゼロ金利制約』を大幅に後退させ、柔軟性を高めた点で大いに評価したい」と述べた上で、以下の様な質疑を行ないました。
<マイナス金利政策導入に関する国会での質疑に対する認識>
(中西)「1月18日の予算委員会で『超過準備に対する付利をやめるべきではないか』と問いかけた時には、『検討しておりません』という答弁であった。政策決定会合の直前であり答えにくかったことは理解しているし、私自身は危機意識を共有できたと思っている。ただ、国会審議の意義という点に関して意見を伺いたい」
(黒田総裁)「国会での発言は、それまでの政策委員会での議論・公表文を踏まえたものである。かなり以前、つまり私が総裁になる前に、『ゼロにすべき』という議論があったが否認された。それ以降、議論はまったくなされていない。また、私自身も質問を受けた時には、考えていなかった。従って『検討していない』と述べた。
(20日~23日の)ダボス会議に行く前に『追加緩和が必要な場合のオプションを検討するように』指示し、戻った段階でいくつかの提言がなされたものである(←その中にマイナス金利政策があったことを示唆)。
ただ、できるだけ誤解のないように答弁をしていきたい」
<金融市場の混乱と政策決定との関連性>
(中西)「イエレンFRB議長は議会証言で、『金融情勢が経済成長をあまり支えなくなった』と発言し注目された。特に『ドル高、株安、信用度の低い借り手のコスト増』など(金融情勢の不安定さに)に具体的に言及していたが、今朝発表されたFOMC議事要旨でも、金融市場の動向に関して、かなり議論がされたことが明らかになっている。
わが国の金融市場の状況の変化が、今回の政策決定で大きな考慮のポイントとなったのかどうかおたずねしたい」
(黒田総裁)「たしかに金融市場が世界的に不安定となり、わが国においても為替や株が変動していた。為替や株を直接的なターゲットとして金融政策を行なうわけではないが、企業のコンフィデンスの転換や、消費者のデフレマインドの改善に対して悪影響を及ぼし、物価目標の達成に悪影響が及ぶリスクが増大しているというのが政策委員会の多数意見だった。そのリスクの顕在化を防ぎ、現在のモメンタムを維持するためにマイナス金利政策を導入した」
<マイナス金利政策の効果の発現目途>
(中西)「ここ数年、我々を含め多くの人間が『金融政策を発動したら、すぐに効果が出るのが当たり前』であるかのような錯覚に囚われていたように思われる。金融政策の効果が現れるまでに、かなりなタイムラグがあるというほうが理論的には常識である。
今回のマイナス金利政策は、どの程度のラグを持って効果が発現すると想定しているのか?」
(黒田総裁)「発表直後すぐにイールドカーブ全体が下がり、貸出の基準となる金利(TIBOR)や住宅ローン金利が低下するなど、金利面ではすぐに効果が現れた。設備投資や住宅投資と行った実体経済にも影響が及ぶことになるが、やはり一定のラグはあると考えている」
(中西)「物価目標の達成に関しては、(展望レポートで明らかにされたように)2017年度前半ということだろうと思われる」←明確な答弁ではなかったため、こちらから確認しました
<新型ETFの購入について>
(中西)「マイナス金利政策の方に目がいってしまい若干忘れられている感があるが、前回の政策決定会合で『設備・人的投資に積極的な企業』のETFを3000億円買うことになった。ただ、そのようなETFは存在していない。あくまでETFができればという話だったはずだが、現状はどうなっているのか?」
(黒田総裁)「具体的な買い入れ基準の策定に向けて、市場関係者からの意見の聴取を行なった。今後、金融政策決定会合において基本要領の改正などを行ない、実務的な準備が整い次第すみやかに実施する。ただ、あくまで市場でETFができることが前提であり、この趣旨に合致するものができることを期待している」
質疑にもある通り、「金融政策を発表したら、すぐに効果が出る」という錯覚からそろそろ覚めるべき時期が来ていると思われます。
正社員が8年ぶりに増加し、女性の賃金も過去最高を記録しました。増加数で正社員が非正規社員を上回るのは、じつに21年ぶりのことです。
金融市場は短期的に振れ幅が大きくなっていますが、これまで提唱してきた大規模な金融緩和の効果は着実に現れつつあります。この流れを逆転させないために、さらに努力を続けてまいります。
2016年02月18日 (木)
2月17日(水)「国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会」では、
河村小百合日本総合研究所上席主任研究員(財政、金融、公共政策)
佐藤主光一橋大学公共政策大学院教授(財政学)
小黒一正法政大学経済学部教授(公共経済学)
から、現在の財政・金融状況に関するご意見をお伺いしました。
冒頭、3人の参考人からは、「日本の財政状況は危機的な段階を迎えており、金融政策にも限界が見えつつある」「早急な対処が必要である」という内容のご説明を頂きました。
これを受けて、質疑においては、対処に的を絞っておたずねしました。
<河村参考人との質疑>
(中西)「量的・質的金融緩和が時間を買う政策であり、いつまでもやるものではないことは理解している。ただ、政策の波及経路として最も有効だったのは為替、つまり円安を通じての企業収益の改善とそれを背景とした株価の上昇である。
早急に見直すべきだというご提言だが、為替レートに対する影響、つまり円高を引き起こす可能性が高いと思われる。その点に関する評価をお伺いしたい」
(河合)「円高が良いのか円安が良いのかという議論に関しては、たしかに円安によって企業業績が良くなり助かった面がある。また、Jカーブ効果はどこにいったのか(輸出が増えない)、この国の空洞化はそんなに進んでいたのかと気づかされたということもある。
短期的には円高にふれるかもしれない。しかし、もう少し長い目では超円安によって、輸入インフレどころではなく物価目標など簡単に達成できるインフレの方が怖い。円安になればなるほど景気が良くなる訳ではない。
日本のような大国が、為替ばかりを見て政策を行なうのは如何かなと思う」
(中西)「短期的という概念が不明だが、1年、2年という期間円高がつづくと、大変なことになるのではないかと申し上げておきたい」
<佐藤参考人との質疑>
(中西)「所得税の見直し、特に若年勤労者に手を差し伸べる見直しは必要だと思う。ところで、日本では年収1千万円以下に対する税率は10%以下、しかも納税者の80%以上がこのカテゴリーに入る。国際比較では著しく低い。この部分に手をつけるべきだと言うことか?」
(佐藤)「地方税が10%かかり、社会保険料も高いためピンと来ないかもしれないが、たしかに日本の場合所得税はあまり払っていない。一方、最高税率はというと、地方税まで合わせれば55%と国際的に見ても低くはない。
従って、税率表を見直すべきかもしれないが、問題の根源は所得控除が大きすぎることの方だ。1千万円稼いでいてもあれこれ控除されて、実際の課税ベースは小さくなっている。稼ぎに関係なく定額減税となる税額控除とするべきだ」
<小黒参考人との質疑>
(中西)「世代間格差を無くすべきだという論点に関しては、シルバー民主主義とのぶつかり合いという問題が避けて通れない。先ほど世代別選挙区制というご提言を頂いているが、この問題を考えるに当たってほかに留意すべき点があればご教示頂きたい」
(小黒)「世代間の対立に関しては、税収をどう配分するかという問題は当然あるのだが、もうひとつ挙げるならば情報の発信の仕方が稚拙だと思われる。
たとえば人口が減れば経済成長率は当然落ちる。そのため、マクロ的には配分するおカネがないように見えてしまう。しかし、1人当たりの成長率がプラスであるならば、配分するおカネは確保できていることになる。そういうことまで考えて制度設計をするべきだ」
学問的な立場から「あるべき姿」についてご教示頂き、財政・金融問題に関する知見を深めることができました。今後の活動に生かしていきたいと思います。
2016年02月12日 (金)
大沢真理参考人(東京大学社会科学研究所教授)
神野直彦参考人(東京大学名誉教授) 鈴木準参考人(株式会社大和総研主席研究員)
2月10日のデフレ脱却調査会において、信頼できる社会の構築による経済成長及び健全な財政の実現(国民の信頼を構築するための社会保障の在り方)をテーマに参考人質疑を行いました。
まず、大沢真理参考人(東京大学社会科学研究所教授)に対して、「所得再分配機能を強化するという主張は、所得税の累進性を高めるということを念頭に置いていると思うが、その増収分で若年層への再配分が十分に行われうるか」という点について尋ねました。
大沢参考人からは、以下のご回答をいただきました。
「税率表で各国の累進度を比較するのは問題である。OECDの税負担の統計も平均税率の統計で比較している。」
「平均税率を所得類型別にみていくと日本のカーブはほかの国に比べて寝ている。特に(所得の)下のほうのカーブがほとんどない。そのため、累進度の低さがデータ的に裏付けられている。」
「実質的な累進度をいかにして図るかにおいて避けて通れないのが社会保険料負担。特に低額負担しているところのテコ入れをしないと累進度を上げたり、再分配の効果を上げたりすることはできない。そのため、表面税率の最高税率をいじるという議論には意味がないと思っている。」
次に神野直彦参考人(東京大学名誉教授)に「交通網の発達により共同体が物理的に破壊されていく中で、『分かち合い』の仲間意識を持つためにはどうすればいいのか。よく例に出されるスウェーデンと比較して日本はどうやって意識改革を行っていくべきなのか」と尋ねました。
神野参考人からは、以下のご回答をいただきました。
「日本の社会で一番重要な点は、『分かち合う』ということの基礎になっている社会のほうがぐずぐずになっていることである。」
「スウェーデンの中学校の教科書では、『私たちの社会のなかで一番重要な組織は家族です。なぜなら、家族の中ではありのままでいながら好かれていることが感じられるからです』と教えられている。ところが、日本では家族と一緒にいることはストレスだと感じる割合は半分以上になっている。」
「スウェーデンモデルであれば、『国家は家族のように組織化されないといけない』というと説得できる。しかし、日本では、家族はストレスという認識であり、説得できない。いわば、分かち合いの社会に向けた説得材料が希薄化している。」
「このようななかで意識改革を行うのであれば、祭りでもなんでも意識的に共同作業をやることで『仲間じゃないか』という意識を培養していくしかない。」
鈴木準参考人(株式会社大和総研主席研究員)に対して、「社会保障のコスト意識を醸成して価格を通じて資源配分の効率性を高めるというご意見は、現在の社会保障給付の中で、金銭給付ではなくサービスの給付というのが非効率とおっしゃっているのか。また、どのようにして効率化を図るのか」という点についてお尋ねしました。
鈴木参考人からは、以下のご回答をいただきました。
「日本の医療において、高額医療機器の稼働率が低くてコストが高いことが問題となっている。また、ベッドがあるところは医療費がかかっているとよく言われている。しかし、実際はよくわからない。それぞれの住民は、自分の住んでいる自治体以外のことはよくわからない。」
「データは出そろっているので、データの見える化を行うべき。その際には、普通の人が普通に見てわかるフォトマップ型の見える化を行うべき。」
「非効率があっても見える化をして示していければ、破たんを避けなければならないというのは共通認識が持てると思う。そういう改革が必要」
成長と分配のどちらを優先する立場に立っても、社会保障の効率化を目指す方向に変わりはありません。本日の議論を今後の社会保障政策に活かしてまいります。