中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2016年02月12日 (金)
大沢真理参考人(東京大学社会科学研究所教授)
神野直彦参考人(東京大学名誉教授) 鈴木準参考人(株式会社大和総研主席研究員)
2月10日のデフレ脱却調査会において、信頼できる社会の構築による経済成長及び健全な財政の実現(国民の信頼を構築するための社会保障の在り方)をテーマに参考人質疑を行いました。
まず、大沢真理参考人(東京大学社会科学研究所教授)に対して、「所得再分配機能を強化するという主張は、所得税の累進性を高めるということを念頭に置いていると思うが、その増収分で若年層への再配分が十分に行われうるか」という点について尋ねました。
大沢参考人からは、以下のご回答をいただきました。
「税率表で各国の累進度を比較するのは問題である。OECDの税負担の統計も平均税率の統計で比較している。」
「平均税率を所得類型別にみていくと日本のカーブはほかの国に比べて寝ている。特に(所得の)下のほうのカーブがほとんどない。そのため、累進度の低さがデータ的に裏付けられている。」
「実質的な累進度をいかにして図るかにおいて避けて通れないのが社会保険料負担。特に低額負担しているところのテコ入れをしないと累進度を上げたり、再分配の効果を上げたりすることはできない。そのため、表面税率の最高税率をいじるという議論には意味がないと思っている。」
次に神野直彦参考人(東京大学名誉教授)に「交通網の発達により共同体が物理的に破壊されていく中で、『分かち合い』の仲間意識を持つためにはどうすればいいのか。よく例に出されるスウェーデンと比較して日本はどうやって意識改革を行っていくべきなのか」と尋ねました。
神野参考人からは、以下のご回答をいただきました。
「日本の社会で一番重要な点は、『分かち合う』ということの基礎になっている社会のほうがぐずぐずになっていることである。」
「スウェーデンの中学校の教科書では、『私たちの社会のなかで一番重要な組織は家族です。なぜなら、家族の中ではありのままでいながら好かれていることが感じられるからです』と教えられている。ところが、日本では家族と一緒にいることはストレスだと感じる割合は半分以上になっている。」
「スウェーデンモデルであれば、『国家は家族のように組織化されないといけない』というと説得できる。しかし、日本では、家族はストレスという認識であり、説得できない。いわば、分かち合いの社会に向けた説得材料が希薄化している。」
「このようななかで意識改革を行うのであれば、祭りでもなんでも意識的に共同作業をやることで『仲間じゃないか』という意識を培養していくしかない。」
鈴木準参考人(株式会社大和総研主席研究員)に対して、「社会保障のコスト意識を醸成して価格を通じて資源配分の効率性を高めるというご意見は、現在の社会保障給付の中で、金銭給付ではなくサービスの給付というのが非効率とおっしゃっているのか。また、どのようにして効率化を図るのか」という点についてお尋ねしました。
鈴木参考人からは、以下のご回答をいただきました。
「日本の医療において、高額医療機器の稼働率が低くてコストが高いことが問題となっている。また、ベッドがあるところは医療費がかかっているとよく言われている。しかし、実際はよくわからない。それぞれの住民は、自分の住んでいる自治体以外のことはよくわからない。」
「データは出そろっているので、データの見える化を行うべき。その際には、普通の人が普通に見てわかるフォトマップ型の見える化を行うべき。」
「非効率があっても見える化をして示していければ、破たんを避けなければならないというのは共通認識が持てると思う。そういう改革が必要」
成長と分配のどちらを優先する立場に立っても、社会保障の効率化を目指す方向に変わりはありません。本日の議論を今後の社会保障政策に活かしてまいります。