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わたしが大学を卒業したのは、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと日本全体が強烈な熱気につつまれていた昭和63年です。出張先のニューヨークの街で、排気ガスをまき散らしながら走る図体のデカいアメリカの車に交じって、スマートでクリーンな日産やホンダの車が颯爽と走り、ウォークマンの黄色いヘッドフォンをつけた人が大勢歩いているのを誇らしい気持ちで見ていました。
ところが株価が史上最高値から下げに転ずると、世の中の雰囲気がだんだんとおかしくなりました。「こんなはずはない」と色々と努力をするのですが、うまくいきません。やがて「日本はもう成長しない」「日本の時代は終わった」などと、ちょっとニヒルに語る人たちが現れました。
本当にそうなのでしょうか?
「日本はこんなものじゃない」という強いメッセージを発信し正しい経済政策を行なえば、優秀な科学技術とすそ野の広い企業群、真面目で勤勉な国民が活躍する国が眠りについてしまうことなどあり得ない。そう信じてビジネスの世界から政界に転じました。
それから11年。「就職氷河期」などという言葉をなくすために大規模な金融緩和を積極的に推進し、さらには安心して老後を過ごしていただくための配偶者居住権を新設するなど、様々な政策の実現に取り組んできました。
医療、介護、年金、子育て環境の充実のためには財源が必要です。団塊の世代の皆さんが75歳となり社会保障費が増大する「2025年問題」に的確に対応するためには、経済がしっかりとしていなければいけません。社会のデジタル化は待ったなし。仕事を効率化するだけではなく、様々な制約によって活躍の場が限られてしまっていた人たちに、大きな可能性を開く道具としてしっかりと活用すべきです。