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わたしが大学を卒業したのは、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと日本全体が強烈な熱気につつまれていた昭和63年です。出張先のニューヨークの街で、排気ガスをまき散らしながら走る図体のデカいアメリカの車に交じって、スマートでクリーンな日産やホンダの車が颯爽と走り、ウォークマンの黄色いヘッドフォンをつけた人が大勢歩いているのを誇らしい気持ちで見ていました。
ところが株価が史上最高値から下げに転ずると、世の中の雰囲気がだんだんとおかしくなりました。「こんなはずはない」と色々と努力をするのですが、うまくいきません。やがて「日本はもう成長しない」「日本の時代は終わった」などと、ちょっとニヒルに語る人たちが現れました。
本当にそうなのでしょうか?
「日本はこんなものじゃない」という強いメッセージを発信し正しい経済政策を行なえば、優秀な科学技術とすそ野の広い企業群、真面目で勤勉な国民が活躍する国が眠りについてしまうことなどあり得ない。そう信じてビジネスの世界から政界に転じました。
それから14年。「就職氷河期」などという言葉をなくすために大規模な金融緩和を積極的に推進し、さらには安心して老後を過ごしていただくための配偶者居住権を新設するなど、様々な政策の実現に取り組んできました。
また、堅実な長期投資による資産形成を後押しするために、自民党の財務金融部会長としてNISAの抜本的な改革と大幅な拡大に奔走し実現しました。「使いやすい制度になった」とメディアなどでも大きく取り上げられたので、「NISAって何?」という方は、もうほとんどいないと思います。
皆さんの暮らしをより良いものにするために、長年取り組んでいるのが「賃上げ」です。「過去最高益を叩きだした企業の労働組合が、ベアの要求を見送るとは何事か!」と国会で労使双方に苦言を呈したのは2016年でした。
わが国は自由主義国家ですので、私企業の賃金に政府が直接口を挟むことは出来ません。しかし、税制面からの後押しをすると共に、「従業員の権利を代弁する取締役を置くことを定めるべきである」と言った提言を行なっています。
医療、介護、年金、子育て環境の充実のためには財源が必要です。団塊の世代の皆さんが75歳となり社会保障費が増大する「2025年問題」に的確に対応するためには、経済がしっかりとしていなければいけません。社会のデジタル化は待ったなし。仕事を効率化するだけではなく、様々な制約によって活躍の場が限られてしまっていた人たちに、大きな可能性を開く道具としてしっかりと活用すべきです。