中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2015年05月15日 (金)
5月13日(水)、参議院デフレ脱却調査会において、黒田東彦日本銀行総裁へ、金融政策の現状認識と物価安定目標の達成時期について、質問しました。
1、金融政策の現状認識について
3月の完全失業率は3.4%であり、日銀は完全雇用水準に達していると言っております。また、需給ギャップについてはほぼゼロ近辺であるという認識を示しています。
そこで、黒田総裁へ、「金融政策の所期の目的というのは、既に達成されているのではないか。」と尋ねました。
黒田総裁からは、以下のご答弁をいただきました。
「失業率の場合も需給ギャップの場合も、構造的失業率以下になってはいけないということではなくて、景気が良くなっているときには構造的失業率以下になることも十分あり得ますし、需給ギャップの計算上もマイナスがゼロになってプラスになっても別におかしくないわけです。」
「他方で、2%の物価安定目標への道筋はまだ道半ばであるため、2%の物価安定目標の実現を目指して、量的・質的金融緩和を着実に推進していくことが必要であろうと思います。」
2、物価安定目標の達成時期について
2%の物価安定目標の旗を掲げ続けるということは金融政策論的に正しいと言えますが、「2年で達成する」と期間を区切る理論的根拠は乏しいと思われます。「期限が迫っているから」という理由で追加的な金融緩和を打ち出すことにでもなれば、かえって良くない物価上昇を招く恐れすらあります。
そこで、黒田総裁へ、物価安定目標の「期限」に対する認識についてお尋ねしました。
黒田総裁からは、以下のご答弁をいただきました。
「2013年1月に政府と日本銀行で出した共同声明における『できるだけ早期に』の英訳は、as soon as possibleではなく、at the earliest possible timeとなっており、かなり明確な早期というものを設定して日本銀行はコミットしたわけであります。」
「私ども、別に何か一定のきっちりした日にちに迫られて云々ということではありませんが、かなり明確な早期に実現するということにコミットしておりますし、量的・質的金融緩和も2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するということではじめていますので、このコミットメントはやはり引き続き重要であろうという風に考えております。」
昔の日銀のように「デフレを放置しても構わない」という姿勢は論外としても、金融政策だけで潜在成長率を引き上げることができるわけではありません。今後も日銀の金融政策を注意深く見守って参ります。
2015年05月14日 (木)
5月12日参議院財政金融委員会において、政策投資銀行における危機対応業務について質問しました。
政策投資銀行とは、大企業・中堅企業向けの融資を目的として設立された政府系金融機関のことであり、政府が全額出資しております。
政策投資銀行は、完全民営化の方向が決まっているのですが、リーマンショック・東日本大震災による金融秩序の混乱への対応(危機対応)のために完全民営化を先延ばしにしてきたまま、現在に至ります。
今回の法改正は、民間金融機関が危機対応業務を担えるようになるまでの「当分の間」政府に3分の1超の株式保有を義務付ける、というものですが、「当分の間」の見通しが立たず、完全民営化の方針が骨抜きにされるおそれがあります。
そもそも、危機対応業務は、民間金融機関から敬遠されています。理由は、危機対応業務はリスクが大きく、民間金融機関では担いきれないと受け止められているから、と思われます。しかし、政策投資銀行の危機対応業務の実績を調べてみると、異なる側面が浮かび上がって参ります。
資料②(委員会配布資料に即して付番しています)は政策投資銀行の危機対応業務と通常業務及び他の業態の金融機関における不良債権比率を比較したものですが、危機対応業務の不良債権比率(0.11%)は、主要行(1.28%)や同じ政策投資銀行の通常業務(1.31%)よりも低いという結果が認められます。
資料③は、2014年3月までの危機対応業務における融資と法的整理に至った融資の累積額を整理したものですが、これによると5兆3911億円弱の融資を行うに当たり、5兆3877億円は政策金融公庫からの借り入れで賄い、政策投資銀行の自己資金は34億円だけであったことが分かります。また、法的整理に至った776億円のうち、524億円は日本政策金融公庫から補填を受け、現実に回収不能となった金額は252億円にとどまります。
そのため、危機対応業務の実績からは、不良債権比率は極めて低く、自己資金もわずかで行うことができ、融資先が法的整理に至っても損害の補てんを受けることができる、という実態が浮かび上がってきます。
ところが、このような情報は基本的に開示されておりません。政策投資銀行が行うディスクロージャーは、あくまで危機対応業務と通常業務を併せた財務状況の開示に留まります。これでは、危機対応業務の実態が分からず、民間金融機関が参入を思いとどまることが容易に想像されます。
そこで、麻生財務大臣に対して、「政策投資銀行の危機対応業務を切り出す形で、情報開示を行うべきではないか」と提案いたしました。
麻生大臣からは、「政投銀等とよく調整しながら、今後とも財務省として開示ができる範囲、開示という方向で検討していきたいとい考えております。」とのご答弁をいただきました。
民間金融機関による危機対応業務への参入を促すのであれば、せめてそのための判断材料は用意すべきではないでしょうか。今後とも、完全民営化の方向性を常にチェックして参りたいと思います。
なお、情報開示の実効性を高めるべく、以下の内容を附帯決議に加えるように提案し、実際に附帯決議として採択されました。
「日本政策投資銀行の完全民営化に向け民間金融機関による危機対応業務への参入を促すため、これまでの危機対応業務に基づく貸付債権の状況などの開示を促すこと。」
2015年04月24日 (金)
4月23日(木)参議院財政金融委員会において、黒田日銀総裁へ、物価安定目標達成時期と出口戦略、市場との対話について質問させて戴きました。
1、物価安定目標について
黒田総裁は、4月19日(日)米ミネソタ州での講演において、2%の物価安定目標の達成時期について、「2015年度または2016年度の初め」(fiscal 2015 or early fiscal 2016)と言及されました。
これまで「2015年度を中心とする期間」であり、「2016年度にはみ出る可能性もある」と仰っていましたが、「2016年度の初め」(early fiscal 2016)と言及されたので、「2016年度の初めとは、具体的にどの時期を指しているのか。(6月までなのか、それとも9月までなのか。)」と質問致しました。
黒田総裁からは、
「2016年度の前半というか初めというか、そういう頃に達する可能性が高いということを申し上げた。」
「(具体的な時期については)今出ている展望レポートの範囲を超えて申し上げるのは若干僭越かと思います。」
とのご答弁をいただきました。
2、出口戦略について
物価上昇に関する日本銀行のメーンシナリオは、「当面0%で推移した後、秋ごろからかなり加速していく」というものです。
このように、秋以降0%から2%へと物価上昇率の急上昇が予想されるため、対応が後手に回らないためにも、「スタッフペーパーやワーキングペーパーのような形ででも出口戦略の議論を示すべきではないか。」と提案させて頂きました。
黒田総裁からは、
「私どもとしては、量的・質的金融緩和の出口の在り方というのは政策委員会で検討すべきものであろうと(思います。)」
「様々な状況に対応できるように金融市場調節手段などの技術的な側面の検討は…事務方でしておりますが、具体的に実際にどのような手段をどのような順番で行うかという出口の議論はまだしておりません。」
とのご答弁をいただきました。
3、市場との対話について
黒田総裁は、昨年10月末の大規模金融緩和第二弾を実施するにあたり、その数日前に行われた参議院財政金融委員会において、「経済の基調や物価に関する見方に全然変わりありません。」と強気の発言をされていました。
ところが、その直後に大規模金融緩和に踏み切り、国会との対話という意味において非常に問題があると認識しております。同じことは市場にも当てはまるのではないかと考えております。
そこで、「今後もサプライズによって金融政策の有効性を高めていく、お考えでしょうか。」と質問致しました。
黒田総裁からは、
「基本的に金融政策の透明性が金融政策の有効性を高める上でも重要である、という考えである。」
「わざわざサプライズを狙って、あるいはサプライズによって効果を出そうというようなことは考えておりません。」
「従来から2%の物価安定目標の実現のために、必要になれば躊躇なく調整を行うという方針は申し上げてきたわけです。」
「昨年10月末の量的・質的金融緩和の拡大につきましては、原油価格の下落…が期待物価上昇率、あるいは、賃金の上昇率や企業の価格設定行動に影響が出てくる恐れがあることを懸念し、重視して拡大が決まったわけです。」
とのご答弁をいただきました。
黒田総裁からは以上のようにご答弁戴きましたが、市場関係者やエコノミストからは、「黒田総裁の発言を額面通り受け取ると、金融政策の予想を誤る。」と言われ始めております。
市場との対話という意味においても、政策の透明性を高めるという意味においても、2016年度の前半における2%物価安定目標の実現に自信を持たれているのであれば、それよりも前に出口戦略の議論をしなければいけないという姿勢を見せるべきではないでしょうか。
そうすることで、政策の透明性が高まり、ひいては金融政策の有効性も高まっていくものと思います。
2015年04月22日 (水)
4月20日(月)参議院決算委員会(外交・防衛)において、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と集団的自衛権について、質問致しました。
1、アジアインフラ投資銀行について
AIIBの設立の背景にはアジアにおける膨大なインフラ需要(2010年~2020年で8兆ドルと推計)があると言われております。
AIIBの参加の是非について「バスに乗り遅れるな」という論調には、このインフラ需要を取り込めなくなることを危惧した意見が少なくありません。
しかし、同じ国際開発金融機関であるアジア開発銀行(ADB)の融資を受けた事業の国際競争入札における国別の落札率(全入札案件に占める落札企業の所属国の割合)を比較すると、中国やインドは2割近いのに対して日本は0.34%と、我が国の落札率が極端に低い事実が浮かび上がってきます。
この状況でAIIBに参加したとしても、インフラ需要を取り込むことはできない恐れがあります。
そこで、政府に対して、以下の点を尋ねました
①落札率が低い原因をどのように捉えているか。
②その対応策として、どのように取り組んでいくか。
財務省からは、以下の答弁をいただきました。
①について
「国際競争入札であるため、中国やインドといった新興国企業がより低い価格を提示していると考えている。」
②について
「調達契約も含めたインフラ輸出が重要と認識している。この促進については、官房長官を中心としたインフラ戦略会議においても議論している。」
「JICAやJ-BICといった日本の支援機関を活用して参りたいと考えている。」
AIIBへの参加の是非を検討する際には、「バスに乗り遅れるな」という側面だけではなく、インフラ需要を取り込めるのか、日本の企業による落札率をどうやって高めていくのか、といった視点も重要であると考えます。
2、集団的自衛権について
4月8日の日米防衛相会談において、宇宙空間における取組みについても議題となりました。
現在の防衛装備品多くは、人工衛星を通じたGPS機能を利用しています。そのため、人工衛星が破壊または無力化された場合、我が国の安全保障も無力化される恐れがあります。
そこで、中谷防衛大臣に対して、「将来的にわが国が運用するもの含めた我が国の人工衛星、あるいは米国の運用する人工衛星に対する攻撃は、集団的自衛権の対象となる武力行使に当たるのか。」と質問させて頂きました。
中谷防衛大臣からは、以下のご答弁をいただきました。
「特定の事例が武力攻撃に該当するか否かは、当時の国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、態様を通じて個別の事情に応じて慎重に判断する必要がある。」
「人工衛星への攻撃という要件のみによって、あらかじめ論じることは困難である。」
「日米防衛当局間においても、宇宙についての協議を進めてまいりたいと考えている。」
人工衛星・GPS機能というのは非常に重要だと考えています。そのため、今後の安保法制においても取り上げてまいりたいと考えています。
2015年04月17日 (金)
髙橋 洋一 先生 井堀 利宏 先生 井出 英策 先生
4月15日(水)に開催されました「国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会」において、3名の参考人の先生方のご意見を伺いました。
1、高橋洋一先生(嘉悦大学ビジネス創造学部教授)
高橋先生には、以下の2点を尋ねました。
①政府は、経済見通しについては高めに見積もり、後で下方修正をするのに対して、税収については低めに見積もり、後で上振れさせている。このように方向性が逆になってしまうのは何故か。
②税収弾性値(税収の伸び率を名目経済成長率で除した値)について、財務省は1.1を、内閣府は1.0を使っているがどちらも低いと思われる。いくらを用いるべきか。
高橋先生からは、以下のご回答をいただきました。
①経済と税収の見通しについて
「経済見通しと税収見通しがズレル原因は、マクロは内閣府、税収は財務省とばらばらに担当しているため。マクロできちんとやるのが大前提。」
②税収弾性値について
「ここ十数年の実績ベースで、税収弾性値は3。景気回復局面では赤字企業が税金を払いだすので、弾性値は大きくなる。財務省が弾性値を低く見るのは予算上のテクニックに過ぎない。」
2、井堀利宏先生(政策研究大学院大学教授)
井堀先生には、財政健全化目標についてお尋ねしました。
具体的には、財政健全化目標は、2020年度PBの黒字化でいいのか、もっと進んで財政収支を黒字化すべきなのか、あるいは債務の対GDP比率が発散しなければいいのかについて、お尋ねしました。
井堀先生からは以下のご回答をいただきました。
「財政健全化には2つの目標がある。ひとつは全体の財政が持続可能であること、もうひとつは中身の話。」
「全体の持続可能性という点ではPBの黒字化は中間目標であり、最終的にはGDP比の公債残高が安定的に下がっていく必要がある。そのためには数パーセントの黒字のレベルを作らなければならない。」
「他方で、マクロベースで均衡していても、賦課方式で人口が減少していく社会では世代間で不公平が生じ、若い人には財政に対する不信感が拭いきれない。財政や社会保障が中長期的に日本国民に受け入れられるためには、抜本的な社会保障改革という中身の改革も必要である。」
3、井手英策先生(慶応義塾大学経済学部教授)
井手先生には、井手先生が主張される「国税については累進性を高めてもいい。地方税については低所得の方にも払って頂きたい。」ということを進めた場合、結果として直間比率はどのような姿になると想定されるのか、をお尋ねしました。
井手先生からは、以下のようなご回答をいただきました
「女性の社会進出が進み、かつて女性が家庭で果たしてきたサービスの負担が問題となってきた。その結果、対人社会サービスの担い手である地方自治体に仕事や権限が下りてくる。」
「この財源については、みんなが納税者になるべきというのが私の考え方。そのため、税収は、地方消費税を増やすか、住民税を増やすかのどちらかと考える。」
「住民税が増えるか、地方消費税が増えるかによって、全体の直間比率の構造が変わってくる。ただし、自治体関係者が住民税の増税を言い出すことが難しいということを考えると地方消費税のウェートが大きくなると思う。」
先生方のご見識を伺い、財政再建への知見を深めることができました。今後の委員会質問に活かして参りたいと思います。
2015年04月17日 (金)
月刊誌Wedge 2015年5月号「企業価値4兆円超!『破壊者』UBERの正体」のなかで、旅館業法の規制緩和(Airbnbの活用など)への取り組みが掲載されました。
Wedgeの特集は、AirbnbやUBERといった新しいアイディアによるビジネスモデルと、旧態依然とした法規制との軋轢に焦点を当てたものです。そのなかで、「旅館業法の規制を緩和し、空き家の有効活用を図るべきだ」という主張が採り上げられました。
Airbnbとは、個人が、個人所有のマンションや別荘を宿泊施設として提供するに当たり、インターネットを通じて仲介を支援するサービスのことです。
Airbnbの活用が進み、当面使う予定のないマンションや別荘の宿泊施設としての提供が増えれば、今後予想される宿泊施設の不足(訪日外国人旅行者2000万人・3000万人時代に予想される宿泊施設の供給不足)の有効な解決策になると考えられます。
のみならず、昨今問題視されている空き家の活用にもつながり、空き家問題をビジネスチャンスに変えることも不可能ではありません。
もっとも、個人宅の宿泊施設としての提供に問題がないわけではありません。
なぜなら、頻度・態様によっては、「人を宿泊させる営業」として旅館業法の規制が及ぶ恐れがあるからです。仮に、旅館業法の規制が及ぶとすれば、客室数や床面積の基準、水道水などの衛生基準を満たした上で、旅館営業の許可を受ける必要があります。
そのため、Airbnbを通じた日本国内の宿泊施設の提供は、旅館営業の許可を受けない限り、旅館業法に抵触する恐れのあるグレーゾーンで行われているのが実態です。
この点について、Airbnb運営者は、利用者(宿泊施設の提供者)に対して、旅館業法の許可を受けるように求めていますが、現実的ではありません。
確かに、Airbnbのビジネスモデルは優れたものですが、現在のグレーゾーンな環境での運営は、旅館業法の規制のお目こぼしに基づく「裏街道」でしかありません。
真っ当なビジネスモデルとして「表街道」で堂々と競争するためには、Airbnb運営者の側も、利用者(宿泊施設の提供者)に責任を転嫁するような運営を改め、正々堂々と規制緩和を訴える姿勢が必要なのではないでしょうか。
Wedgeにも以下の見出しが掲載されています。
「裏街道」に健全な発展なし
「表街道」で堂々と競争できる環境を
技術の進展や環境の変化に応じた規制緩和を求めていく中で、その時代に応じた適切な規制が導かれていくのではないでしょうか。
今後も、Airbnbのような新しいビジネスモデルを積極的に支援して参りたいと思いますが、事業者にも「表街道」を正々堂々と歩む覚悟を求めてまいりたいと思います。
【参照】3/17(火)参議院 予算委員会報告③ 旅館業法の規制緩和
http://nakanishikenji.jp/diet/15149
【参照】質問主意書≪旅館業法≫
2015年04月09日 (木)
本日、4月9日(木)、参議院本会議において、平成27年度予算案が採決され、与党の賛成多数により、可決、成立しました。
本予算には、魅力あふれるまちづくりや、子育て支援の充実、外交・安全保障の立て直しといった点に見るべきものはあるものの、予算委員会を通じて以下のような不十分な点が明らかとなりました。
1、財政規律を保てない
安倍内閣は、本予算案によって2015年度プライマリーバランス対GDP比赤字半減目標が達成見込みであると主張しています。
しかし、現時点において、この目標の達成は、税収が見込みよりも上振れすることがない限り相当厳しいと思われます。理由は、国債費の余りを補正予算の財源に充てる、予算編成の慣行にあります。
プライマリーバランスは、政策経費(一般会計予算における国債費を除いた経費)を対象とするため、国債費(国債の償還や利払いに充てる費用)は対象となっておりません。
ところが、当初予算の編成時点において国債費を多めに見積もり、余った金額を当該年度の補正予算の財源に充てるという慣行が続いております。直近5年間では、およそ1兆円前後の金額が、国債費から補正予算の財源に振り替えられています。
このように「国債費→補正予算の財源」と振り替えられた金額は、プライマリーバランスの対象となります。そのため、例年通り補正予算を編成するのであれば、当初予算の段階でプライマリーバランス対GDP比赤字半減目標とのバッファーが1兆円程度なければ、目標の達成は難しいということになります。しかし、本予算におけるバッファーは、およそ3000億円程度しか見込まれておりません。
そのため、この予算編成では、2015年度プライマリーバランス対GDP比赤字半減目標の実現はおよそ不可能と考えられます。
【参照】3/27(金)参議院 予算委員会報告② 国債費の積算金利・2015年度PB赤字半減について
http://nakanishikenji.jp/diet/15239
2、世界で一番ビジネスをやりやすい国とは言えない
安倍内閣は、「世界で一番ビジネスをやりやすい国」を目指しています。その目標に何ら異論はありませんが、そうであれば「東京一極集中の是正」をスローガンに掲げることは違和感を覚えます。
そもそも、近年の国家間の競争は、都市間競争という側面が強くなっています。ところが、東京は、国際的な都市の魅力度調査ではロンドンやニューヨーク、シンガポールの後塵を拝しており、近年の順位は下降傾向にあります。
「ビジネスをやりやすい都市」なくして、「世界で一番ビジネスをやりやすい国」になることは不可能です。
もちろん、地方が独自性を発揮して、地方の魅力を最大限に高めるという意味において、地方創生には大いに賛成です。しかし、その手段として、東京に本社のある企業を、わざわざ税の優遇措置を設けて縁もゆかりもない地方へ移転するように促すという政策は、かえって国全体の競争力を損なうのではないでしょうか。
「世界で一番ビジネスをやりやすい国」を目指すためにも、都市間競争を勝ち抜く東京を目指すべきではないでしょうか。
【参照】3/27(金)参議院予算委員会① リー・クアンユー氏と都市間競争
http://nakanishikenji.jp/diet/15277
3、空家問題をビジネスチャンスに変えるような規制緩和を!
本予算では成長戦略(アベノミクス第三の矢)を十分に示せておりません。
たとえば、海外では個人がインターネットを通じて使わなくなった民家や普段使っていない別荘などを宿泊施設として貸し出すことが盛んに行われています。しかし、現在の旅館業法の規制では、旅館業法の許可を受けない限り宿泊施設としての提供は認められていません。
旅館業法の制定当時(昭和23年)においては、旅館業法の規制も意義があったと思われますが、国内の衛生状態も建物の安全性も向上した現代においては、過度な規制となりつつあります。
訪日外国人2000万人時代を迎えるに当たり、宿泊施設の不足が予測されるなか、個人宅の宿泊施設としての利用が認められれば、空家問題をビジネスチャンスに変えることも可能となります。
しかし、本予算は、このような規制緩和に取り組む内容とはなっておりません。
【参照】3/17(火)参議院 予算委員会報告③ 旅館業法の規制緩和
http://nakanishikenji.jp/diet/15149
【参照】質問主意書《旅館業法》
http://nakanishikenji.jp/diet/15034
予算は政府の政策を映す鏡であるため、以上のような不十分な点がある以上、賛成できません。安倍内閣への提案を真摯に受け止めて戴くためにも、本予算案には反対票を投じさせていただきました。
2015年04月07日 (火)
2015年04月07日 (火)
4月7日(火)参議院財政金融委員会(予算委員会委嘱審査)において、支出官レートと国債費の積算金利(想定金利)についてお尋ねさせて頂きました。
支出官レートとは、防衛装備品の購入や在外公館での支払いなど1兆円を超える外貨建て支払いに充てるために予算編成時に設定する当該会計年度の為替レートのことです。
この支出官レートは、過去の一定期間の為替相場の平均をとる形で算定されていますが、過去5年間の平均の採り方(算定期間)は区々です。平成23年度・平成24年度は12か月間をとっていますが、平成25年度・平成26年度・平成27年度は、それぞれ1か月・10か月・3か月となっています。【資料②参照】
為替上昇局面で算定期間を極端に短くすることは、財務省の相場観を表しており、公には認められない為替予測となるのではないかが問題となります。
また、平成25年度~平成27年度予算における、国債費の積算金利の各年度の算出根拠も区々です。【資料①参照】
平成25年度予算:直近3年間の長期金利推移(1.0%)+平成11年度の金利の上昇(0.8%)
平成26年度予算:直近1年間の平均長期金利(0.7%)+過去の金利の急上昇(1.1%)
平成27年度予算:直近3年間の平均長期金利(0.7%)+過去の金利の急上昇(1.1%)
積算金利における平均長期金利の算定期間は、直近1年間(平成26年度予算)→直近3年間(平成27年度予算)と伸びています。
この点について、麻生財務大臣より、「平成26年度予算においては、量的・質的金融緩和が始まったばかりであるため、極めて短期間の平均しか取れなかった。」「平成27年度予算においては、量的金融緩和が定着しつつあったため、平均をとる期間の長さが長くなった。」とのご答弁がありました(平成27年3月27日参議院予算委員会)。
しかし、量的・質的金融緩和の影響で平成26年度予算編成時の算定期間を短くとるというご説明は、平成26年度の算定期間を長くとる支出官レートの算出方法と矛盾します。(1か月→10か月→3か月)
また、量的・質的金融緩和を始めた後(平成26年度以後)、国債費の積算金利における金利上昇のバッファーを厚くとっていること(0.8%→1.1%)から、量的・質的金融緩和によって金利変動リスクが高まったのではないかとの疑念が生じます。
そこで、以下の質問をさせて頂きました。
①支出官レートの算定期間の取り方に、財務省の相場観を含んでいるのではないか。これを避けるため、一律に機械的に定めるべきではないか。
②平成25年度予算~平成27年度予算における積算金利の算定期間(3年→1年→3年)と支出官レートの算定期間(1か月→10か月→3か月)は、量的質的緩和の捉え方が矛盾しているのではないか(平成26年度が短い⇔長い)。
③積算金利における金利上昇バッファーを0.8%→1.1%へ引き上げたことは、アベノミクスによる量的質的緩和によって金利変動リスクが高くなったことを意味しているのか
麻生大臣からは、以下のようなご答弁をいただきました。
①について
「外国為替相場の動向は様々であるため、一律に算定期間を定めるよりも、市場の動向をきめ細かく勘案することで合理性を持たせるべきと考えている。」
「一律に算定期間を定めてしまうと、どのくらいの期間を決めてしまうかで差が出てしまう。その時の流れとかを考える努力をしないといけないと思う。」
②について
「国際市場と為替市場があるが、それぞれの市場の動向をある程度きめ細かく勘案する必要がある。そのため、平均を取る期間が異なることに問題があるとは思っていない。」
③について
「過去の金利の上昇を参考にしているが、急上昇した時の金利の幅をどれだけ保守的に見るかというところは、金利の動向などを総合的に勘案して適切に判断するしか方法がない。」
「これ以上話すと、この話が市場にそのまま抜けてしまうことになる。不測の影響を与えることもあるので(答弁は)差し控えたい。」
しかし、①支出官レートの算定期間を機械的に決めない限り、財務省の相場観は避けられず、為替予測となる懸念はぬぐえません。
また、量的・質的緩和の影響についても、②国債市場と為替市場において異なる捉え方をする理由はご説明頂けなかったうえ、③金利変動リスクについても、明確にご答弁戴けませんでした。
本日の質問時間(15分)では上記の質問に留まりましたが、今後も引き続き追及して参ります。
【資料①】国債費の積算金利
【資料②】支出官レート
2015年04月01日 (水)
3月31日(火)参議院財政金融委員会において、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)について質問しました。
NACCSとは、税関手続き、その他の輸出入関連省庁の手続き、及びこれらと関係する民間業務を処理する官民共用のシステムのことです。
かつて輸出入関連手続きは、省庁ごとに別々に行う必要がありましたが、NACCSによって窓口の一元化とペーパーレス化が実現しました。
輸出入申告総件数の98%がNACCSを利用しており、日本の輸出商品としても海外から高い評価を受けております。
NACCSによって、窓口とデータベースの一元化は実現されましたが、省庁間の情報の共有は為されておりません。たとえば、農林水産省所管の植物検疫検査に引っかかった輸入品に関する情報については、港湾を管理する国土交通省の側からアクセスできません。
しかし、税関業務は多忙を極めており、情報共有による業務の効率化が考えられます。
また、NACCSを運営する輸出入・港湾関連情報処理センター(NACCSセンター)は、法律(電子情報処理組織による輸出入等関連業務の処理等に関する法律)によって、できる限り速やかに株式を売却することが定められています。
しかし、NACCSで扱う情報の重要さに鑑みれば、いかにして情報セキュリティを図るかが問題となります。
そこで、以下の点について質問しました。
①省庁間の垣根を越えてNACCS登録情報の利用を認めるべきではないか。
②NACCSセンターの株式売却に当たり、いかにして情報セキュリティを図るのか。
①については、麻生財務大臣より、
「当該省庁の利用目的以外に利用を行わない、という前提で情報提供を受けている。そのため、他の行政機関による利用は許容されないことを、ご理解いただきたい。」とのご答弁をいただきました。
②について、財務省関税局長より
「株式売却後も、国が引き続き議決権の過半数を保有することが義務付けられている。」
「法律によってNACCSセンター職員に守秘義務が課されている。」
「業務運営について、財務大臣の認可・監督・報告の求めなど国の一定の関与が定められている。」とのご答弁をいただきました。
NACCSは重要なシステムと考えております。そのため、株式の売却方法や売却後の制度設計については慎重に考えて頂きたいと考えております。