中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2015年06月09日 (火)
議長提出:2015年06月8日
内閣転送:2015年06月11日
回 答:2015年06月16日
政府は、平成二十六年七月一日に「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議決定し、自衛の措置としての武力の行使の新三要件(以下「新三要件」という。)を満たす限りにおいて集団的自衛権の行使は憲法上も許容される、との見解を示している。
そして、新三要件の第三要件「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」の意義について、安倍内閣総理大臣は、平成二十六年七月十五日の参議院予算委員会において、「この新三要件に言う必要最小限度とは、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される原因をつくり出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度を意味するわけであります。」と説明している。もっとも、「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」と認められるためには、「我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度」にとどめなければならないのか、それとも、これに加えて「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除」することまで許容されるのかは、不明確な点がある。
また、「必要最小限度」の意味について、岸田外務大臣は、平成二十七年五月二十七日の衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、「必要最小限度という用語ですが、国際用語で言う必要最小限度、国際法の用語としての必要最小限度、これは均衡性を意味する、委員御指摘のとおりであります。しかし、同時に、我が国においては、この三要件を通じて、我が国に対する武力攻撃、または我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険をつくり出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃、これを排除する、こうしたために必要最小限度である、こういった枠を当てはめております。よって、我が国における必要最小限度、国際法の用語で言う均衡性という意味とは一致するものではありません。」という説明がなされており、新三要件における「必要最小限度」と国際法における「必要最小限度」の意味の乖離が問題となる。
そこで、以下質問する。
一 集団的自衛権の行使が許される「必要最小限度の実力行使」は、「我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度」にとどめなければならないのか。それとも、これに加えて「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除」することまで許容されるのか。また、我が国に対する武力攻撃が発生し、これを排除するために、個別的自衛権を行使する場合の「必要最小限度の実力行使」は、国際法上の均衡性と同一の範囲・内容のものとなるのか。我が国が、集団的自衛権を行使する場合と、個別的自衛権を行使する場合で、新三要件の第三要件にいう「必要最小限度の実力行使」の範囲・内容は異なってくるのか。
二 存立危機事態における自衛の措置としての武力行使が、新三要件における「必要最小限度の実力行使」を上回るために第三要件を満たさないものの、均衡性を満たすために国際法上の「必要最小限度」を満たす場合、かかる自衛の措置としての武力の行使は、国際法上適法か。憲法上の根拠を欠く自衛の措置としての武力行使の国際法上の評価について明らかにされたい。
三 新三要件の第三要件「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」について、国内法ではどの法律のどの条文で担保されているのか。当該条文は、新三要件における「必要最小限度」と国際法における「必要最小限度」のどちらを意味するのか、その点が明確に認識できるように規定されているのか。
右質問する。
一について
「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)でお示しした「武力の行使」の三要件(以下「新三要件」という。)に該当する場合の自衛の措置としての「武力の行使」で、国際法上の根拠が集団的自衛権となるものについての「必要最小限度」とは、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される原因を作り出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度を意味する。
お尋ねの「我が国に対する武力攻撃が発生し、これを排除するために、個別的自衛権を行使する場合」の「必要最小限度」とは、武力の行使の態様が相手の武力攻撃の態様と均衡がとれたものでなければならないことを内容とする国際法上の用語でいう均衡性に対応するものであるが、これと必ずしも「同一の範囲・内容」となるものではない。
新三要件に該当する場合の自衛の措置としての「武力の行使」については、その国際法上の根拠が集団的自衛権となる場合であれ、個別的自衛権となる場合であれ、お尋ねの「必要最小限度の実力行使」の「範囲・内容」は、武力攻撃の規模、態様等に応ずるものであり、一概に述べることは困難である。
二について
お尋ねの「憲法上の根拠を欠く自衛の措置としての武力行使の国際法上の評価」については、政府として行っていない。
三について
お尋ねの「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」については、新三要件の第三要件に対応するものとして、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十八条第二項並びに現在、国会に提出している我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案による改正後の武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第三条第三項及び第四項において明確に規定されている。
≪提出にあたって≫
集団的自衛権における「必要最小限度の実力行使」の意義について質問主意書を提出いたしました。
安倍内閣は、平成26年7月1日に「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議決定し、いわゆる新三要件のもと集団的自衛権の行使は憲法上許容される、と見解を改めました。
今回は、新三要件の第三要件「必要最小限度の実力行使」の意味について質問致しました。
安倍総理は、平成26年7月15日の参議院予算委員会において「新三要件における必要最小限とは、…我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度を意味するわけであります。」と答弁されています。
しかし、「必要最小限度の実力行使」が、「我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度」に留まるのか、これに加えて、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除すること」まで含むのかは明らかではありません。
また、「必要最小限度」の意味は、国際法上は均衡性を意味すると解されるのに対して、新三要件では、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃、これを排除する…ために必要最小限度である」こととされており、国際法と新三要件の間における「必要最小限度」の意味の乖離も問題となります。
そこで、以下の点について質問しました。
①集団的自衛権の行使が許される「必要最小限度の実力行使」とは、「我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度」に留めなければならないのか、あるいは、これに加えて「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除」することまで許容されるのか。
②自衛の措置としての武力行使が、新三要件における「必要最小限度の実力行使」を上回るために第三要件を満たさないものの、均衡性を満たすために国際法上の「必要最小限」を満たす場合、かかる自衛の措置としての武力の行使は、国際法上適法か。
③新三要件の第三要件「必要最小限度の実力行使に留まるべきこと」について、国内法ではどの法律のどの条文で定められているのか。
集団的自衛権の議論は、従来の憲法解釈を一部変更しているうえ、国際法における概念と異なる解釈をとっているために、議論をより一層わかりにくくしています。今後も問題点を整理したうえで、政府の見解を質して参ります。
≪回答を受けて≫
政府の答弁は以下の通りとなります。
①集団的自衛権の行使が許される「必要最小限度の実力行使」とは、「我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度」に留めなければならないのか、あるいは、これに加えて「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除」することまで許容されるのか。
→「必要最小限度」とは我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される原因を作り出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度を意味する。
②自衛の措置としての武力行使が、新三要件における「必要最小限度の実力行使」を上回るために第三要件を満たさないものの、均衡性を満たすために国際法上の「必要最小限」を満たす場合、かかる自衛の措置としての武力の行使は、国際法上適法か。
→「憲法上の根拠を欠く自衛の措置としての武力行使の国際法上の評価」については、政府としては行っていない。
③新三要件の第三要件「必要最小限度の実力行使に留まるべきこと」について、国内法ではどの法律のどの条文で定められているのか。
→自衛隊法第88条第2項並びに武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律第3条第3項及び第4項(改正案)に規定されている。
①については、従前の見解を述べただけという印象であり、我が国の存立を全うし国民を守ることができるという状態に達したのであれば、密接関係国への武力攻撃が継続していても、それ以上の自衛の措置は採りえないのか否かが明らかではありません。
また、②について、「憲法上の根拠を欠く自衛の措置としての武力行使の国際法上の評価」については、政府としては行っていないとのことですが、行き過ぎた自衛の措置としての武力行使(=いわゆる過剰防衛にあたる自衛の措置)については、憲法上も国際法上も議論になることが予想されます。
さらに、③において示された条文の文言は「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」であり、「必要最小限度」との文言の乖離が問題となります。
これらの点については、今後も、質問主意書や国会での審議を通じて、追及して参ります。