中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2018年05月28日 (月)
5月24日の法務委員会の動画(約20分)と質疑の速記録です。
「再犯防止」「犯罪被害者の救済」「国際仲裁の活性化」の3つのテーマについて質疑を行なっています。
○中西健治君
おはようございます。自由民主党の中西健治です。
本日は、再犯防止対策についてまずお伺いしていきたいと思います。
刑法犯の認知件数というのは、近年劇的に減少しているということであります。平成十四年のピーク時には二百八十五万件認知されていたものが、平成二十八年は百万件を下回るということにまでなってまいりました。一方、再犯者率は一貫して上昇しておりまして、平成二十八年には四八・七%まで上昇していると、ほぼ二分の一というところまで来てしまっているということであります。
こうしたことを受けて、議員立法で平成二十八年には再犯防止推進法が制定をされ、そして昨年十二月に再犯防止推進計画が閣議決定されたという経緯になっているところであります。この再犯防止推進計画は、五つの基本方針の下、七つの重点課題について百十五の施策を盛り込んだものであり、罪を犯した人などに対して官民一体となって息の長い支援を行い、再犯を防止することから、大変重要なものであると考えているところであります。
上川大臣が所信の冒頭で述べられていたとおり、本年はまさに推進計画元年ということなのではないかと思います。政府の取組について伺いたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君)
おはようございます。 委員御指摘のとおり、昨年の十二月に再犯防止推進計画が閣議決定をされまして、五つの基本方針の下、七つの重点課題につきまして百十五の施策が盛り込まれたところでございます。国そして地方公共団体、また民間団体等がそれぞれの役割に応じて連携をしながら取り組んでいく、再犯防止施策を推進する、このことにつきましてのまさに裏付けとなる計画でございまして、大変意義が大きいものというふうに考えております。
法務省におきましては、さらに、そのうち特に重点を置くものとして十の施策を取りまとめまして、再犯防止アクション宣言ということで公表をさせていただきました。その意味では、いよいよ本年四月から実施段階に入ったところでございまして、推進計画元年、まさに今年、その意味で極めて重要な一年であるというふうに考えております。
そのため、政務三役が再犯防止キャラバンとして、地方公共団体に、地方版の再犯防止推進計画の策定等を働きかけるということで随時お願いに行っているところでございますが、その第一号といたしまして、鳥取県の再犯防止推進計画を策定していただきました。また、地方公共団体が再犯防止の取組を共有するための会議体等の枠組みづくりや、また地方公共団体が再犯防止を推進するための事業を実施するに当たっての財政的支援を行う枠組み、こういった取組も行っているところでございます。
こういった取組をしっかりと継続をする、そのためにも、国、地方、民間一体となって、この推進計画に盛り込んだ一つ一つの課題につきまして着実かつスピード感を持って取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○中西健治君
ありがとうございます。
政府の取組も大変重要でありますけれども、地方議会、地方公共団体の取組も非常に重要ということでありますので、我々も地方議員を通じて働きかけを行っているところでございます。
こうした再犯防止の中でも、特に性犯罪の再犯防止については、犯罪者に対する対応だけではなく、被害者の生活の平穏、その他の権利や利益に十分配慮して、さらには二次被害の防止や被害者の心情といった面にまで気を配るといった丁寧かつ包括的な対応が求められるということではないかと思います。
性犯罪に特有のこのような側面を踏まえた上での再犯防止に関する具体的な取組についてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君)
性犯罪に遭われた被害者の皆様につきましては、多大な精神的また身体的苦痛を受けているということでございまして、そのような被害に遭われた方々の心情に十分に配慮した再犯防止対策が必要であるというふうに考えております。
また、性犯罪者の再犯を効果的に防止するためには、性犯罪者等に対しまして、性犯罪に特有の問題性、これに着目し、そのことを踏まえた働きかけが極めて重要であるというふうに考えております。
被害に遭われた方々の心情に十分配慮した再犯防止対策といたしまして、性犯罪被害者の心身の健康の回復、その支援を行う重要な機関でありますワンストップ支援センター等の関連機関との連携を引き続き積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。
また、法務省といたしましては、この再犯防止推進計画に基づきまして、新たな被害者を生まないという決意の下で、まず医療・福祉関係機関との連携を強化すること、また、性犯罪者等に対する、矯正施設収容中から出所後まで一貫性のある効果的な指導を実施すること、また、三点目といたしましては、海外における取組などを参考にしつつ、矯正施設や保護観察所における専門的な指導や処遇プログラム等の性犯罪者等に対する指導等につきまして、効果検証の結果を踏まえました指導内容、方法の見直しを図るなど、再犯によりまして新たな性犯罪被害者を生まないための方策につきましては一層の充実を図ってまいりたいと考えております。
○中西健治君
今、性犯罪被害者の思いをしっかりと受け止めなきゃいけないと、こういうお話もあったかと思います。
犯罪被害者に対する施策全般について続いてお伺いしたいと思いますけど、今日は警察庁にも来ていただいておりますので、まず、いわゆる犯給制度の現状についてお伺いしたいと思います。
犯罪によって仕事を続けられなくなった被害者や家計の柱となる人を失って残された家族などが経済的に困窮する、また社会において孤立を余儀なくされるといった、犯罪による被害そのものに加えて副次的な被害に苦しめられているケースというのが多々指摘されているところであります。
平成二十八年四月の第三次犯罪被害者等基本計画に盛り込まれた具体的施策のうち、損害回復、経済的支援等への取組、特に犯給制度についてその現状をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(山岸直人君)
お答えいたします。 御指摘の第三次犯罪被害者等基本計画におきまして、犯罪被害給付制度に関する検討として、重傷病給付金の支給対象期間、犯罪被害者に負担の少ない支給、若年者の給付金及び親族間犯罪被害に係る給付金等の在り方について、警察庁において実態調査等を行い、その結果を踏まえた検討を速やかに行って必要な施策を実施することが盛り込まれました。
これを踏まえ、警察庁では、平成二十八年度末までに所要の調査を実施し、昨年四月から犯罪被害給付制度に関する有識者検討会を開催して、同年七月に提言が取りまとめられました。この提言を踏まえ、重傷病給付金の給付期間の一年から三年への延長、幼い遺児がいる場合における遺族給付金の引上げ、親族間犯罪における減額・不支給事由の見直し等を内容とする制度改正を行い、本年四月から施行されたところであります。
本改正によりまして、長期の療養を受ける重傷者や犯罪で父母を亡くした幼い子など、犯罪で苦しむ方々への支援の一層の充実が期待されるところであり、新たな制度が適切に運用されるよう、都道府県警察を引き続き指導してまいります。
○中西健治君
我々のところにもいろいろと声が届けられていますので、重要なステップが踏まれているというふうに思いますけれども、是非拡充を図っていっていただきたいというふうに思います。
続きまして、子供の性被害防止についてお伺いしたいと思いますけど、児童買春や児童ポルノなどにより、成長過程にある児童の心身が被る被害は大変深刻であります。断じて許すべきものではないというふうに思います。ただ、児童ポルノ事犯の増加というのは、我が国だけではなくて世界的に見られるということになっております。
子供の性被害防止に関する取組についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(小田部耕治君)
お答えいたします。 子供の性被害をめぐる情勢につきましては、昨年、児童ポルノ事犯の検挙人員が過去最多を更新したほか、SNSの利用に起因して性的な被害に遭う児童が増加傾向にあるなど、深刻な状況にございます。
こうした子供の性被害の防止に向けまして、政府といたしまして総力を挙げて取り組むべく、昨年四月、犯罪対策閣僚会議におきまして子供の性被害防止プランが策定され、このプランに基づきまして、児童ポルノ等の子供の性被害防止に向けた国民意識の向上、被害児童の保護や支援、取締りの強化等の総合的な取組を進めているところであります。
今後とも、関係機関、団体や民間事業者等との緊密な連携を図りながら、子供の性被害防止に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。
○中西健治君
警察庁が公表した犯罪被害類型別調査というのを見させていただきましたけれども、性的な被害はどこにも、誰にも相談していないという回答が非常に多くなっているということであります。潜在化が非常にしやすいということだと思います。
犯罪や犯罪が疑われる事案に関して速やかに警察へ通報する、相談をする、こうしたことが事件の解決のみならず深刻化を防ぐ上でも大変重要だというふうに思いますけれども、被害者が警察にアクセスしやすくなる、そうした工夫も必要なんじゃないかというふうに思います。取組状況についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(山岸直人君)
お答えいたします。 平成二十八年四月に閣議決定をされました第三次犯罪被害者等基本計画におきまして、性犯罪被害者を始めとした被害が潜在化しやすい犯罪被害者等に対する相談体制の充実等が盛り込まれました。これを踏まえまして警察庁では、各都道府県警察が設置をしております性犯罪被害相談電話につながる全国共通の短縮ダイヤル番号、シャープ八一〇三、ハートさんと呼んでいますけれども、これを昨年八月から導入をいたしました。これは、シンプルな全国共通番号を導入することによりまして、相談窓口の認知度の向上を図るとともに、相談者が相談窓口にアクセスしやすくなるなど、性犯罪被害者が相談しやすい環境を整えることとしたものであります。
警察庁といたしましては、今後とも、この全国共通番号に関する広報を積極的に行うなど、性犯罪被害者が一人で悩むことなく、警察に相談しやすくなるように鋭意取り組んでまいります。
○中西健治君
ありがとうございます。 シャープ・ハートさん、まだまだ知られていない、昨年八月ですから知っている方も少ないということじゃないかと思いますので、広範に知らしめるようにしていただきたいと思います。
続きまして、国際仲裁機能の強化についてお伺いしたいと思います。
私、先日、許可を得て香港とシンガポールの国際仲裁に関係する機関や省庁を訪問してまいりました。そして、アジアのリーガルサービスの需要の伸びが著しく増加しているということを確認してきた、実感してきたところであります。一方、我が国の国際仲裁件数というのは、皆さん御承知のとおり、低調なままの状況が続いているということであります。
国際仲裁の活性化に向けて関係府省が今後取り組むべき課題等を明確にした中間取りまとめというのが本年四月に策定されました。この意義と目的など、お伺いできればと思います。
○政府参考人(山内由光君)
お答えいたします。 国際仲裁は、中立的であること、あるいは秘匿性を確保できることなど等の観点から、国際取引における紛争、この解決のグローバルスタンダードになっておりまして、日本企業の海外進出を後押しするとともに、海外から我が国に対する投資を呼び込むにも資するということから、我が国においてもその活性化が急務であると承知しております。
御指摘のように、本年四月二十五日、内閣官房副長官補を議長とする国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議において、中間取りまとめとして、国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策が作成されております。
この取りまとめは、関係府省が今後取り組むべき課題などを明確にしたものでございますが、具体的に申しますと、国際仲裁を熟知した人材の育成、仲裁手続を行う施設の整備、国際仲裁の意義や利点などに関する企業などの意識啓発や広報などの諸点について取り組むべきであるということが取りまとめられております。
○中西健治君
シンガポール、香港へ行ったと申し上げましたけれども、やはり彼と我の差というのはかなりあるというふうに思うわけでありますけれども、ただし、このシンガポールの国際仲裁センターを例に取りますと、取扱件数が四倍に急増したのはこの十年間のことであります。ですので、ずっと昔からということではありませんので、今スピード感を持って取り組めばキャッチアップすることも可能ではないかということも感じた次第であります。ですので、このスピード感と、いつまでに何をやるのかということが大変重要ということではないかと思います。
我が国における国際仲裁の利用が低調にとどまっている原因の一つとして、経済界において国際仲裁のメリットが十分に知られていないということもあるのではないかというふうに思います。広報や意識啓発について何を行っていくのか、これをお伺いできますでしょうか。
○政府参考人(山内由光君)
委員御指摘のように、日本における国際仲裁の活性化を図っていくためには、主たるユーザーである企業において、裁判と異なる国際仲裁のメリット、あるいは日本を仲裁地とすることのメリット、これについて十分御理解していただく必要がございまして、また実際の契約締結に当たりまして、日本を仲裁地とする取扱いが少ないという御指摘があります。こうした状況を踏まえまして、今後、法務省といたしましては、経済界に対して日本を仲裁地とするような取扱いも検討していただくように普及、広報に努めることが重要であると認識しております。
とりわけ、既に海外に拠点を有している、そして国際仲裁を利用しているという、こういう企業もあれば、これから海外進出を検討していくという企業もございます。こうした国際仲裁に対する経験、これらの有無を考慮しつつ適切なアプローチをしていくことが必要であろうと認識しております。
そして、この点に関しましては、本年五月から、大阪中之島の合同庁舎を活用した民間における広報、意識啓発などのパイロットプロジェクトというのが開始されたところでございます。このパイロットプロジェクトでは、仲裁に関する企業向けのセミナーやシンポジウムを開催するほか、実際の仲裁事件も取り扱うものと伺っております。
法務省といたしましては、引き続き、こういったプロジェクトを始めとして、関係省庁や民間団体とも連携しながら、経済界に対する広報や意識啓発、これに積極的に取り組んでまいりたいと存じております。
○中西健治君
我が国の国際仲裁を活性化させるためには、仲裁人、仲裁代理人等の人材育成というのがもう喫緊の課題となってまいります。香港、シンガポールで感じたこととして、そちらで働いている弁護士さんなどは、例えば前職はオランダのハーグでしたと、若しくはフランスのパリでしたと、こういう方々が多いんですね。ですから、このキャリアアップのサークルの中に香港もシンガポールもパリもハーグも入っていると、こんなようなことを感じました。その中に、今、東京、日本は、大阪にしてもまだ入っていないということだと思います。
こうした海外の著名な仲裁機関との連携強化なども通じてこの人材育成というのを図っていかなければいけないと思いますが、それについて取組を、できれば簡潔にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(山内由光君)
国際仲裁を活性化する上では、やっぱり人材育成が喫緊の課題であると承知しておりますが、海外では、やはり著名な国際仲裁機関において、様々なその法域の出身の様々な専門性を有する多くの仲裁人が活躍しております。仲裁人以外でも、ほかの国の仲裁機関との間の法律事務所との人材の行き来、これが行われておりまして、こういった人材の行き来も、やっぱり人材育成に関して大きな役割を果たしていくというふうに考えております。
法務省といたしましては、やっぱり国際仲裁の第一線で活躍できる人材の育成に向けて、アジアや欧米における海外の著名な国際仲裁機関との連携を強化し人材を派遣するとともに、海外の著名な仲裁人を招聘するなどして効果的な人材育成の在り方について引き続き検討して、必要な取組を進めてまいりたいと存じます。
○中西健治君
是非、この数年が勝負だと思いますので、取組を進めていっていただきたいと思います。 質問を終わります。ありがとうございました。
2018年05月24日 (木)
今朝の法務委員会では、「再犯防止」「犯罪被害者の救済」「国際仲裁の活性化」の3つのテーマについて質疑を行ないました。
昨年8月から警察の性犯罪相談電話につながる全国共通番号「#8103(ハートさん」が導入されました。
「どこにも誰にも相談できない」ことにより、性的な被害が潜在化することを防ぐ手立てのひとつとなって欲しいと思います。
2018年05月10日 (木)
「日本・EU議員会議]
<議題2:日本とEUとの関係強化>
このセッションの議論の口火を切る最初の発言者として、昨年末に妥結した日・EU経済連携協定が、自由貿易体制堅持という強いメッセージとなったことや、わが国の経済成長の新たなエンジンとなることが期待されることなどについて述べている場面です。
ちなみに今回来日された方の言語構成により、会場では日本語、英語、ハンガリー語、ポーランド語の同時通訳が行なわれました。
2018年05月06日 (日)
香港、シンガポールが、内外を問わず人材とビジネスを惹きつけることに傾注していること、信頼され、使いやすい司法制度は、まさにその基盤を成すものであることを痛感しました。
これからの政策作りに活かしていきたいと思います。
2018年05月05日 (土)
お早う御座います。香港とは打って変わって見事に晴れわたっているのですが、今度は蒸し暑さとの闘いです。
今日も1日しっかりと活動していきます。
2018年05月04日 (金)
司法制度調査会の視察団の一員として昨日の朝日本を発ち、昨日は香港国際仲裁センター(HKIAC)や法務部(律政司)などを訪問。夜は大使主催の夕食会に参加しました。
今日はシンガポールに移動し、シンガポール国際仲裁センターや現地の日本企業などを訪問します。
2018年04月18日 (水)
昨日(4月17日)の法務委員会の動画(約15分)と質疑の速記録です。
人事訴訟法等の一部を改正する法案に関して、国際裁判管轄問題(国際的な離婚、養子縁組、相続など)、国際裁判の準拠法、外国での判決の執行、親権に関する取扱いなどについての質疑を行なっています。
<速記録>
1.国際裁判管轄法制整備の国際的な位置付け
(1)国際裁判管轄については条約で
○中西健治君 おはようございます。自由民主党の中西健治です。
本日は人事訴訟法、家事事件手続法の改正案、これについて質疑を行うということでありますけれども、国際的な要素を有する人事に関する訴え、例えば国際的な離婚ですとか養子縁組ですとか相続などの案件について、どのような場合に日本の裁判所が管轄権を有するのかということを定めるということでありますが、こうした管轄権についての法案の審議のとき私いつも思うんですけれども、本来条約によって決めるべきものなのではないかということをいつも思います。
この本源的な疑問について、法務大臣の方からお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 国際裁判管轄法制は自国の裁判所の管轄権がいかなる範囲に及ぶかを定めるものでありまして、各国がその国内法において規定することができ、現にそのような取扱いをしている国が少なからず存在しているというものと認識しております。
例えば、ドイツ、フランス、韓国等におきましては、国内法によりまして、国際裁判管轄に関する規律が明らかにされているところでございます。御指摘のとおりでございますが、国際裁判管轄に関する規律が条約により定められれば、各国の法制の抵触を防ぐことができ、また法的安定性を確保する観点からも望ましいものと考えられるところでございます。
しかし、国際裁判管轄につきましての各国の法制の在り方は必ずしも一致しているものではございません。特に身分関係に関わる制度につきましては、文化的、社会的背景に基づく差異があるのが現状でございます。そのため、このような現状に鑑みると、近い将来、国際裁判管轄についての一般的かつ広範なルールを定めた多国間条約が作成されることは期待することがなかなかできないという状況にあるというふうに言えます。
そこで、今般、国内法を整備することによりまして、人事訴訟事件及び家事事件につきましての国際裁判管轄法制を整備することといたしたところでございます。
(2)「国際裁判管轄に関するハーグ条約」を批准していない理由
○中西健治君 条約があれば法的安定性を確保する意味からも望ましいというお答えでありましたけれども、国際裁判管轄の合意に関するハーグ条約という条約があります。名称としてはそのものずばりの条約かなというふうに思います。
EUやアメリカなどを含めて三十か国ぐらいが署名ないし批准を行っているという状況のようでありますけれども、このハーグ条約では国際的な人事案件には対応できないということでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。今委員御指摘のこの国際裁判管轄の合意に関するハーグ条約でございますけれども、ハーグ国際私法会議におきまして二〇〇五年に採択されて二〇一五年に発効したものでございます。
この条約でございますが、国際的な商取引の、当事者間で選択した裁判所のみに管轄を認めてそれ以外の裁判所の管轄を排除するという専属的管轄合意を適用範囲とするものでございます。この条約でございますけれども、商取引の当事者間の専属的管轄合意の有効性を保障するものでございまして、そのような合意に基づく訴訟において下された判決の承認及び執行についても規律しております。
この条約でございますけれども、その規定の内容が、この外国判決の承認、執行についての我が国の民事訴訟法等の規定と異なる点があります上に、また現在の国際商取引の実務に合致したものであるか否か、こういった点につきましても慎重な検討を要するものと考えられます。このため、我が国は現在のところこの条約を締結していないという状況でございます。
またさらに、この条約でございますが、先ほど申し上げましたとおり、国際的な商取引の当事者間の専属的管轄合意を適用範囲とするものでございまして、国際裁判管轄一般についてのものではございません。また、婚姻関係や相続などの家族法上の事項につきましては適用対象外とされております。したがいまして、人事訴訟事件及びこの家事事件の国際裁判管轄については、この条約では対応することはできないというものでございます。
2.国際裁判における準拠法と執行
(1)準拠法の問題
○中西健治君 家事事件などには対応、この条約ではできないというお答えでありました。そして、大臣の方からは、諸外国でも韓国やドイツなど国内法によって規定を定めているということでございました。
今回、管轄権については定められるということになりますけれども、管轄権とはまた別個独立した問題で準拠法というものがあります。
日本の裁判所が取り扱うことにはなるんだけれども、じゃ、準拠法は必ずしも日本の法律とは限らないと、これは別個の独立した課題ということの問題だということなんじゃないかと思いますが、そこで、我が国の裁判所が裁判をする場合において、準拠法はどのように決まるのかということ、これらについてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。我が国の裁判所に提起されました訴えにつきましてその国際裁判管轄が認められると、こういう場合におきましては、その事件に適用されるべき法律、すなわち準拠法がいずれの国の法律になるのかどうか、こういう点につきましては、法の適用に関する通則法等の国際私法によって定められることとなります。
具体的に申しますと、例えば夫婦の一方が他方に対して離婚の訴えを提起した場合、被告の住所が日本国内にあるときは、改正後の人事訴訟法の規定によりまして、我が国の裁判所に国際裁判管轄が認められることとなります。
そして、離婚請求が認められるか否かにつきましては、一般論としましては、法の適用に関する通則法の二十七条によって定められます準拠法によって判断されることとなります。
例えば、当該夫婦が外国人同士という場合でありますれば、この二十七条本文の規定によりまして、この夫婦の本国法が同一となりますので、その本国法、すなわち外国法が準拠法となります。
他方、原告が外国人でありましても日本に住所を有する被告が日本人であると、こういった場合には、この二十七条のただし書の規定によりまして日本法が準拠法となると、こういったようなものでございます。
(2)外国法が適用される事案への対応
○中西健治君 今、例にありましたとおり、日本に居住している外国人同士の裁判など、離婚裁判などというのもあるわけでありますが、実際に平成十七年に東京地裁でアメリカのテキサス州法が適用されて離婚請求が認容されるという事例がありました。
今後、外国法を準拠法とする事案というのも増えてくるのではないかと思いますが、それについてどのように対応されていくのでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。先ほど申し上げましたとおり、我が国の裁判所に管轄権が認められる場合、どの法律が適用されるのかと、準拠法につきましては、国際私法、法の適用に関する通則法等の国際私法によるということになります。
そういった国際私法に基づきまして外国法が準拠法となるような事案におきましては、裁判所におきまして当該外国法の内容を調査する必要がございます。
この調査でございますけれども、基本的には裁判所が職権で行うものとされておりますけれども、実務上は事件の当事者や代理人の弁護士がその訴訟手続の中で外国法の内容に関する資料を提出することがあるものと承知しております。
また、裁判所が外国法の内容を調査する方法としては、公刊されている文献の調査をする、こういった方法のほかに、外国の領事館等に調査の嘱託をする方法などが考えられます。こういったことでこの準拠法の調査がされるというふうに理解しております。
(3)判決の外国での執行
○中西健治君 管轄権、そして準拠法というものについてお伺いしましたけれども、続きまして、判決の外国での執行ということについてお伺いしたいと思いますけど、日本の裁判所が管轄して、そして日本の裁判所で勝訴の判決を得たとしても、その判決を外国で執行できるかどうかはまたまた別問題ということになるかと思います。
当該国の外国での判決の承認ルールに左右されてくるということになります。
今回、どのような場合に日本の裁判所が管轄権を有するかが明文化されるということになりますけど、これはこれで予見性を高めるという意味で高く評価できるものだというふうに思いますけれども、判決の実効性が他国において担保できるのかという懸念は残ってくるということになるかと思いますが、その点について、現在の状況はどのようになっているのか、御答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。委員御指摘のとおり、日本の裁判所でされました確定判決が外国で効力を有するか否か、こういった点が問題となることがあります。
典型的な場面といたしましては、例えば、日本において離婚訴訟がありまして、そこに勝訴した原告が外国において再婚をしたいと、こういった場合に、その従前の婚姻関係が解消されているかどうか、こういったことの確認を当該外国から求められる、こういった場面もございます。
まず、ある国がどのような場合に外国の裁判所の判決の効力を認めるかという問題につきましては、これは本来、各国がその国内法におきまして自由に規定をすることができるものでございます。
したがいまして、仮にある国におきまして外国の判決を承認する制度が設けられていないと、こういったような場合には、日本の裁判所でされた判決の効力はその国では生じないということにもなるわけでございます。
もっとも、主要国では、我が国と同様に一定の要件の下で外国の判決の効力を承認する制度を設けているというふうに承知しております。したがいまして、そのような制度の下では、その国で定められた要件に該当するか否か、こういったような問題は存しますが、その要件を満たせば日本の裁判所でされた確定判決はその国でも効力を有することとなりますので、その意味でその判決の実効性が担保されると、このように考えております。
3.法律案の規定について
(1)親権に関する審判事件の取り扱い
○中西健治君 ありがとうございます。今回の法案の個別具体の規定について一点お伺いしたいと思うんですが、それは親権に関する審判事件の取扱いということでございます。
法案を読んでいて少し矛盾がひょっとしてあるのではないかというふうに思いましたので、質問をさせていただきます。
家事事件手続法第三条の八という条項によりますと、親権に関する審判事件などについて、子の住所、住所がない場合又は住所が知れない場合には居所が日本国内にあるときは日本の裁判所が管轄権を有すると、このようにされております。
住所か居所がある場合に管轄権と、こういうふうにされているわけであります。
それに対して、人事訴訟法第三条の四によりますと、日本の裁判所が婚姻の取消し又は離婚の訴えに対して管轄権を持つ場合には、その夫婦の子の親権者の指定についての裁判に係る事件については管轄権を有すると、このようにされています。
この人事訴訟法の条文によりますと、子の住所の有無にかかわらず日本の裁判所が管轄権を有することと、こういうふうに読めるんじゃないかというふうに思います。
家事事件手続法とこの人事訴訟法、二つの規定に矛盾があるようにも感じられますけれども、この点はいかがでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。改正後の家事事件手続法の三条の八におきましては、親権に関する審判事件あるいは子の監護に関する処分の審判事件につきましては、子の住所、住所がない場合又は住所が知れない場合には居所ということになりますけれども、これが日本国内にあるときに日本の裁判所が管轄権を有するものとしております。
この規定が適用されます典型的な場面といたしましては、父母が離婚する際に一旦子供の親権者が定められたものの、離婚から一定の期間が経過した後に父母の一方が親権者の変更や子の監護に関する処分の審判を求めて申立てをしたという場面が想定されます。このような場面を想定しまして、子供の住所、子の住所等を管轄原因としておりますのは、親権に関する審判事件におきましては裁判所が子の生活状況等を十分に調査する必要がある、しかしながら、あるところ、子の住所が日本国内にあれば、我が国の裁判所がその調査を実効的にすることができ、適正かつ迅速に審理、裁判をすることができると考えられるからでございます。
他方で、父母が離婚する際には、あわせまして、その子供の親権者や監護の在り方が同時に決定されることが子の利益に資するものと考えられます。そういった観点から、改正後の家事事件手続法三条の四におきましては、離婚の訴えについて我が国の裁判所に国際裁判管轄が認められる場合に、子の親権者の指定や子の監護に関する処分についても管轄権を認めるものとしております。
そして、その離婚の訴えが係属する裁判におきましては、一般的に申しますと、当該夫婦のこれまでの家庭環境に関する資料が提出されることとなりますけれども、ここには子の生活状況等に関する資料が含まれるのが通常でございますので、子の住所等が日本国内になくても当該裁判所が親権者の指定や子の監護に関する処分について適正かつ迅速に審理、裁判をすることができると考えられます。
このように、委員御指摘の二つの規定でございますが、それぞれ想定されています異なる場面におきまして、子供の利益の保護を考慮して子供の親権者の指定等に管轄原因を定めたものでございまして、矛盾するものではないというふうに考えております。
○中西健治君 想定される場面が違うということでありました。私の方はこれで質問の方を終わらせていただきます。ありがとうございました。
2018年04月17日 (火)
今朝の法務委員会は、人事訴訟法等の一部を改正する法案の審議です。その冒頭、国際的な離婚、養子縁組、相続などについて取り上げました。
さらに国際裁判の準拠法、判決の執行、親権に関する取扱いなどについても質疑を行なっています。
2018年04月11日 (水)
おはようございます。本会議に出る直前です。
本会議につづいて「政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会」、午後は「国民生活・経済に関する調査会」、夕方からはトムソン・ロイター社主催「リッパー・ファンド・アワード・ジャパン2018授賞式典」での特別講演とつづきます!
2018年04月10日 (火)
4月5日の法務委員会の動画(20分)と質疑の速記録です。
出入国管理の適正化と迅速化、無戸籍者問題への対処に関する質疑を行ないました。
○中西健治君 自由民主党、中西健治です。本日も質問の機会をいただきまして、どうぞよろしくお願いいたします。まず初めに、出入国管理についてお伺いしたいと思います。
先日、羽田空港の入国管理局を訪問してまいりました。そして、国際線ターミナルの指紋認証ゲートや顔認証ゲートといった最新設備ですとか、あと、変造されたパスポートを見抜くシステムなどを拝見させていただきました。大分整備されてきたなという思いとともに、まだまだこれから急いでやっていかなきゃいけないなという思いも強く持ったということであります。
今週月曜日に来年のG20 サミットの大阪での開催というのが発表されましたけれども、あわせて、我が国がG20 の議長国として開催する関係閣僚会合というのが、これはもう大阪ではなくて、ほかにも、財務大臣・中央銀行総裁会議は福岡市でと、観光大臣会合は北海道の倶知安町、外務大臣会合は愛知県、農業大臣会合は新潟市などと、もう全国津々浦々で開催されると言ってもいいのかと思います。
そして、もちろん2020年東京オリンピック・パラリンピックというものがありますので、テロ対策ということもしっかりやっていかなきゃいけないということになるかと思います。その中で、現在のこの出入国管理について、法務省の取組についてまず聞きたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) おはようございます。ただいま御質問いただいた出入国管理の重要性ということでございますが、まさに2019年の大阪を始めとして全国各都市でG20 が行われ、また2020年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されるわけでありまして、テロの未然防止等の水際対策、また増加する観光客等に対しまして適切な入国審査の実施につきましては喫緊の課題であるというふうに思っております。
法務省といたしましては、厳格な入国管理と円滑な入国審査、これを高度な次元で両立させる必要があると認識しておりまして、必要な人的体制の充実、物的設備の強化等に計画的に取り組んでおるところでございます。
まず、厳格な入国管理のための具体的な取組ということでございますが、平成十九年から、顔画像や指紋の個人識別情報、これを活用いたしました入国審査を実施しているわけであります。
また、平成二十七年一月からは、航空会社に対しまして、乗客の予約記録でありますPNR、この報告を求めまして、これを出入国管理インテリジェンス・センター、これにおきましてその情報につきまして分析をいたします。そして、不審者を発見する手法の活用等を行っているところでございます。
また、平成28年10月17日からでありますが、テロリスト等の入国の水際阻止ということのために、上陸審査時におきましての顔画像照合を実施しております。
また、円滑な入国審査のための取組といたしまして、入国審査官の機動的な配置、さらに上陸審査場案内の充実、また自動化ゲートの運用を行っているほか、平成28年10月1日からは、関西、高松及び那覇空港におきまして、また平成29年は4月15日でありますが、成田、中部、新千歳、福岡、静岡空港等十二空港におきましてバイオカートの運用を行っております。
本年五月からは北九州及び大分空港に拡充することを予定しているところでございます。さらに、今後でありますが、29年10月18日からスタートいたしました顔認証ゲート、これを、これは先行導入を羽田空港の上陸審査場から日本人の帰国手続ということで先行導入したところでありますが、平成30度中に、羽田空港の出国審査場に加えまして、成田、中部、関西及び福岡空港の上陸出国審査場への本格導入、これを予定しており、そのための準備を今鋭意進めているところでございます。
今後でありますが、さらに、入国審査体制の強化や諸施策の運用の推進に加えまして、外国人出国確認手続の自動化に係る検討等を進め、厳格な入国管理と円滑な入国審査、これを高度な次元で両立させることができるよう鋭意努力をしてまいりたいと考えております。
○中西健治君 ありがとうございます。今、御答弁の中にバイオカートという言葉が出てきましたけれども、顔認証ゲートですとか指紋認証ゲートというのはすぐ何かというのが分かるということだと思いますけど、このバイオカートというのは何なのかということをお伺いしたいと思いますし、あと、この顔認証ゲート、指紋認証ゲートですけれども、利用できる人というのはどういう人たちなのか、これについてもお伺いしたいと思います。
○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。バイオカートと申しますのは、入国手続の合理化を図り、入国手続の円滑化を図る目的で、外国人の方の上陸審査に際しまして、外国人の方から提供いただいております指紋及び顔写真という個人識別情報を審査待ち時間の間に取得を行うことを可能とする可動式の機器でございます。
指紋認証ゲートでございますが、これは日本人及び一部の外国人の出入国手続におきまして、あらかじめ入国管理局に指紋及び旅券情報を提供して利用希望者登録を行いました方につきまして、登録時に提供いただきました指紋の画像と指紋認証ゲートの指紋読み取り装置で取得しました指紋画像を照合することによりまして同一性の確認を機械的に行っておるものでございます。
顔認証ゲートでございますが、これは日本人の出帰国手続におきまして、旅券のICチップ内の顔画像と顔認証ゲートのカメラで撮影いたしました顔画像を照合することによりまして同一性の確認を機械的に行うという自動化ゲートでございます。
○中西健治君 ということは、バイオカートというのは、外国人の方が列をつくっている中で、この待ち時間を有効に利用して、入国の時間を短縮するということだということだと思います。今、首都圏では成田ということですけれども、是非これは多くの空港で導入していってもらいたいなというふうに思います。
先ほどお話のありました、今もありました羽田にある顔認証ゲートですけれども、私も見てきたと申し上げましたけど、三台設置がされております。この三台について、どれぐらい一日当たり利用しているのか、日本人だけということでありますけれども、どれぐらいの数の人が利用していて、これは日本人の帰国者に占める割合はどれぐらいになっているのか、お伺いしたいと思います。またあわせて、今後の導入予定についてもお伺いしたいと思います。
○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。平成29年10月18日から羽田空港の上陸審査場におきまして、日本人の帰国手続を行う顔認証ゲート三台を先行導入したということは先生から御指摘のあったとおりでございます。
この平均利用者数でございますが、一日当たり羽田空港を利用して帰国した日本人の約二割に当たりますおよそ2600人の方が利用しておられます。
今後でございますが、平成30年度中に、羽田空港の出国審査場に加えまして、成田空港、中部空港、関西空港及び福岡空港の上陸及び出国審査場への本格導入を予定しておりまして、全体で137台を整備する予定でございます。
○中西健治君 この顔認証ゲートですけれども、今は日本人のみですけれども、外国人についても使える、利用できるようにするという計画はありますでしょうか。
○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。顔認証ゲートの外国人の方への利用の拡大につきましては、日本人の出帰国手続において導入する顔認証ゲートを観光等の目的で入国した外国人の出国手続にも活用するという方向で検討いたしておりまして、平成三十一年度中に運用開始を目指して所要の準備を行っているところでございます。
これらの取組による合理化を進めまして、より多くの入国審査官を外国人の方の入国審査に充てることとしておるところでございます。
○中西健治君 ということは、出国のときには使うけれども、入国についてはいかがなんですか。
○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。外国人の入国審査時に顔認証ゲートを利用することにつきましては、検討すべき課題も多うございまして、現時点においては導入する予定はございません。
○中西健治君 はい、分かりました。この羽田に設置されていた顔認証ゲートですけど、もう本当に審査が速くて、パスポートを置いたらすぐさま審査が終わるということですので、実際に帰って入国しようとする人がもうゲートが開いたのが分からないぐらいということで、透明のゲートに蛍光色のテープが貼られていてすぐさま気付くように、そんなようなことも施されているというものでありました。
ということは、大変高度な技術が内蔵されているものなんだろうというふうに思いますけれども、こうしたセキュリティー関係の技術というのはアメリカですとかロシアですとかイスラエルが先行しているというふうに私自身は理解しております。
この羽田にある三台、そして今後導入されるもの、これについては外国製なのかそれとも日本製なのか、お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。現在導入されているものはいずれも日本製でございます。また、今後導入する予定のものも全て日本製でございます。
○中西健治君 日本の技術が他国と勝るとも劣らないという状況、ずっとあってほしいなというふうに思っております。
今後、百数十台、今年度も導入するということだと思いますけれども、これらの財源は、昨日から参議院で審議が始まりました国際観光旅客税、これが充てられるということでよろしいんでしょうか。
○政府参考人(和田雅樹君) 今後導入されます予定の顔認証ゲートに係ります経費のうちの一部につきましては、ただいま御指摘のございました国際観光旅客税を財源としておるものでございます。
○中西健治君 そういう意味でもこの国際観光旅客税、大変重要なものだというふうに私自身は認識を持っているところであります。
続きまして、無戸籍者問題についてお伺いしたいと思います。先週の委員会でも石井先生もお取り上げになられていましたけれども、私も先日、三十過ぎまで戸籍がないという方、その方が学校にも通えず、そして保険証もなかったので病院にも行かずと、こういう方の悲痛なお話というのを聞く機会がありましたので、再度取り上げさせていただきたいと、こういうふうに思っているところであります。
親によって出生の届出が出されなかったために無戸籍の状態になっている方々について、法務省は徹底した実態把握に努めると、これも大臣の所信でも述べられていたかと思います。
現在のこの無戸籍者問題の状況はどのようになっているのか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。無戸籍の状態となっている方々につきましては、法務局におきまして、市区町村等と連携して把握した無戸籍の方々の情報を集約しているところでございますが、平成26年9月10日から平成30年3月10日現在までに把握した無戸籍の方の累計は1630名でございます。このうち、924名の方が無戸籍状態を解消して、現在、無戸籍の方は706名となっておりまして、解消率は約56.7%でございます。
○中西健治君 今御答弁にありました市区町村長と連携してということでしたけれども、先日お話を伺った方は、やはり行政の方での理解というのも少なくとも何年か前まではなかなか進んでいなかったなと、こういうようなことも一つ大きな論点として述べられたかなというふうに思いますけれども、この市区町村と連携してというのは今はもうどのような形になっているのか、これを教えていただきたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。現在のその情報の収集でございますけれども、具体的には、無戸籍の方あるいはその母親の方が市区町村の戸籍や住民票の窓口、児童相談所や市区町村の児童福祉の窓口、教育委員会を含む学校教育部門等に相談に来られたときなどに無戸籍であることを把握できることが多いという状況でございます。
そのほか、法務局への相談につきましても、ポスターやリーフレット等で広報しておりますが、直接法務局に相談に来られた、そういう機会に無戸籍であることを把握できる場合もございます。
○中西健治君 無戸籍の方については国民としての社会的基盤が与えられていませんから、人間の尊厳にも関わる重大な問題が生じているというふうに認識しています。こうした無戸籍の方々が発生する原因についてどのようなものが考えられるのか、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。無戸籍の状態が生じます原因には様々なものが考えられますが、法務省が把握しております現在の無戸籍の方のうち、民法第七百七十二条に規定いたします嫡出推定によって、戸籍上、夫ないし前の夫の子とされるのを避けるために出生届を提出しなかったことが原因であるとしている方が全体の七五%を占めているものと承知しております。
○中西健治君 そういうことだと思います。通常の生活をしている限りにおいては、その人が無戸籍状態であるかどうかは第三者からは分かりません。一方、今の答弁にあったような問題を始め、何らかの事情で届出ができないということが主な原因になっているということだと思います。
つまり、カミングアウトしてもらわないと分からないのに、何らかの事情があってそれを人に言うことができないと、こういうことが問題の根本にあるわけですので、現状の把握というのも大変難しいということだと思います。DVですとか個人情報保護などの問題も関わってきているということではないかと思います。
無戸籍状態の方々を把握して戸籍を作っていただくためには、具体的にどのような取組を今しているのか、そしてこれからするのか、こうしたことについて、無戸籍の方と実際に接する行政の現場での対応と、そして法制度、制度の運用、こうしたことについてお伺いしたいと思います。これは大臣から御答弁いただき、これを私の最後の質問にしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 先ほど委員御指摘のとおり、この無戸籍の問題というのは個人の尊厳に関わる大変重要な問題であるというふうに思っております。
無戸籍の状態になっている方々に対しまして、行政の現場での対応、これは非常に重要な位置付けにございます。先ほどのように、なかなか御自分から言いにくい方がほとんどということでありますので、いかにその情報を得ることができるのか、このことが大変重要であるということでありまして、法務局におきまして、市区町村等と連携をいたしまして情報の集約をしっかりしていこうと、この確認をするとともに、その情報に基づきまして、お一人お一人の実情、これに寄り添いまして、戸籍に記載されるための丁寧な手続案内、これの取組に力を注いでいるところでございます。
また、さらに、法務省におきましては、関係府省を構成員といたします無戸籍者ゼロタスクフォース、これを設置いたしまして、また、日本弁護士連合会とも連携をしてきたところでもございます。
しかし、無戸籍であると新たに把握された方の中にも、まだ無戸籍状態が依然として続いているという方もいらっしゃいまして、市区町村によりましては、依然として、福祉担当部署などが把握をしていたとしても戸籍担当部署に情報提供がされていない可能性があるのではないかと思っているところでございまして、そのために、市区町村の戸籍担当部署以外の部署も含めた情報の集約に更に十全を期すべきと考えたところでございます。
そこで、最近の取組でありますが、法務省におきまして、市区町村に対しまして、例えば市区町村の福祉関係の部署などが無戸籍者の情報を把握した場合に、その戸籍の担当のところに提供するということについての少しハードルがあるという現場もございまして、これは法的な根拠に基づくものであるということ、あるいは個人情報保護の観点からも問題とならない旨などもしっかりと周知徹底をしていく、こういうところに総務省を始めとして関係省庁と連携をしているところでございます。
また、依然として無戸籍状態が解消されていない方がまだ相当数おられるという現状もございまして、その背景には、無戸籍状態解消のために裁判所における手続、これが必要となる事案が多いという実情がございます。そこで、法務局におきまして、裁判所における手続に関与する弁護士会、また法テラス及び家庭裁判所に働きかけを行いまして、無戸籍者問題の解消を目指した地方協議会、これを設置し、順次開催するなどしているところでございます。
今後の取組といたしまして、こうした手続案内開始して三年余りが経過した現在でございますので、さらに、無戸籍者問題の解消に向けまして、人間の、人の尊厳に関わることということで、人権擁護委員の皆様などの協力も得ながら、より一層積極的に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
二点目の御質問でございました、制度の見直しに係るという取組についての御質問でございましたので、これにつきまして申し上げたいと存じますが、これまで述べたような取組によっても無戸籍の方のうち約四割につきましては問題の解決に至っていないということにつきまして、大きな課題であるというふうに認識をしているところでございます。
現行法制度につきましては、嫡出否認の訴えを提起することができるのは夫に限られております。
この点も出生の届出を阻害する要因になっている可能性があるわけであります。この点を含めまして、嫡出推定に関する法制度の見直しにつきましては様々な御意見があり得るところでございますので、法務省といたしましても、どのような点が出生の届出の障害要因となっているかなどにつきまして無戸籍問題の原因分析をいたしまして、制度の見直しの要否につきまして検討してまいりたいと思っております。
○中西健治君 ありがとうございました。終わります。