中西けんじ公式ホームページ/自由民主党衆議院神奈川三区(鶴見区、神奈川区)

活動報告

中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。

国会活動

質問主意書《旅券返納命令》

2015年02月18日 (水)

 

議長提出:2015年02月18日
内閣転送:2015年02月23日
回答   :2015年02月27日

シリア渡航を表明する邦人に対する旅券返納命令に関する質問主意書

本年二月七日、外務大臣は、旅券法第十九条第一項第四号の規定に基づき、シリアへの渡航を計画する邦人(五十代男性)に対し旅券の返納を命じ(以下「本件旅券返納命令」という。)、同人の旅券を受領した。

しかし、同人は報道目的での渡航を計画していたため、本件旅券返納命令は、海外渡航の自由に対する制約のみならず、報道の自由及び取材の自由に対する制約としての側面も認められる。

海外渡航の自由、報道の自由及び取材の自由は、いずれも憲法上保障されると解される権利である。とりわけ、報道の自由及び取材の自由は、国民の知る権利に奉仕し、民主主義の根幹をなす権利であるため、その制約に当たっては極めて慎重な判断が求められる。

そこで、以下質問する。

一 外務大臣は、本件旅券返納命令を発出するに当たり、いかなる事情から「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」(旅券法第十九条第一項第四号)及び「旅券を返納させる必要があると認めるとき」(同法同条第一項柱書)に当たると判断したのか。本件旅券返納命令に至る判断過程及び考慮要素を明らかにされたい。

二 本件旅券返納命令における返納の期限は、何月何日何時何分と定められたのか。また、右返納期限を定めたのは何月何日何時何分か、日時を示されたい。

三 外務大臣は、旅券法第十九条第一項第四号に基づき旅券の返納を命ずるに当たり、行政手続法第三章に定める意見陳述のために、聴聞(行政手続法第十三条第一項第一号)又は弁明の機会の付与(同条第一項第二号)のいずれの手続を執るべきか、政府の見解を明らかにされたい。

四 本件旅券返納命令において、前記三における聴聞又は弁明の機会の付与はなされたか。仮に、前記三に定める手続がなされなかった場合、その理由を示されたい。

五 いかなる事情があれば、報道の自由又は取材の自由を制約しても「旅券を返納させる必要があると認めるとき」(旅券法第十九条第一項柱書)に当たるのか。海外渡航の自由の制約との違いに配慮しつつ、政府の見解を明らかにされたい。

右質問する。

参議院議員中西健治君提出シリア渡航を表明する邦人に対する旅券返納命令に関する質問に対する答弁書

一について

外務省としては、シリアにおいていわゆるISILが二名の邦人を殺害し、引き続き邦人を殺害する意図を宣言するという特殊な状況において、邦人がシリアに渡航すれば生命に直ちに危険が及ぶ可能性が高いと判断されることに鑑み、渡航の意思を報道機関を通じても明らかにしていた御指摘の邦人に対し、警察と連携し、シリアへ渡航しないよう説得したが、同人はその意思を変えるには至らなかった。

このため、外務大臣は、旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)第十九条第一項第四号の規定に基づき、同人に旅券を返納させる必要があると判断し、その返納を命じたものである。

二について

外務省においては、平成二十七年二月七日、御指摘の邦人がシリア渡航の意思を変えるには至らなかったことを直前までの本人とのやり取りにおいて確認の上、同日午後七時三十分頃に、旅券の返納期限を同日午後七時四十分と定めた。

三について

外務省としては、旅券法第十九条第一項第四号の規定に基づく旅券返納命令に当たっては、原則として、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項第一号の規定に基づき聴聞を行うことが必要と考える。

四について

外務省としては、今般の事案は、緊急な措置を要するものであり、行政手続法第十三条第二項第一号の規定に該当するものと判断し、聴聞を行わなかったものである。

五について

政府としては、報道の自由を十分に尊重する必要があると考えている一方で、海外に渡航する邦人や海外に在留する邦人の安全を確保することも政府の極めて重要な役割であると考えている。旅券法第十九条第一項の規定に基づく旅券返納命令については、個別具体的な事案に応じて判断する必要があると考えている。

 

 

 

≪提出にあたって≫

シリアでの取材を計画していたフリーカメラマンへの旅券返納命令について、質問しました。

本年2月7日、外務大臣は、シリアへの渡航を計画するフリーカメラマンに対して、旅券(パスポート)を返納するように命じました。

このフリーカメラマンの方は、隣接国を経由してシリアへ渡航する旨メディアを含む公の場で表明されていましたが、同地はイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の支配地域であること、さらには「イスラム国」が日本人の殺害を継続すると警告していることから、外務省・警察庁が何度も渡航の自粛を要請したうえでのやむを得ない措置であったと考えています。

この問題がマスコミで大きく取り上げられる背景には、本件旅券返納命令が報道の自由・取材の自由に対する制約になるという側面があります。

「イスラム国」のような日本になじみが薄く、世界的にも十分に解明されていない組織については、誰かが、その目的や行動をしらべ、「真実」を世に伝えなければなりません。

なぜなら、真実が伝わらないと、「(実際には存在しない)大量破壊兵器が存在するかもしれない」という不安感から戦争が生まれ、多くの犠牲を生むことになりかねないからです。

この役割を担う方々がジャーナリストであり、写真を通じて真実を伝えようとする方がカメラマンとなります。

ところが、真実を伝えられると困る人たちも存在します。そういった人たちは、真実を伝えようとする人に対して、妨害活動を行ってまいりました。

今回の旅券返納命令がマスコミで大きく取り上げられる理由は、この件が前例となり、今後マスコミが海外で取材活動をしようとした際の妨害活動につながる恐れがあるからだと思われます。

そこで、大きく分けて、以下の3点を尋ねました。

①本件旅券返納命令に至った事情

②本件旅券返納命令にあたってなされた手続保障の有無

③今後、報道の自由・取材の自由が制約を受ける可能性(海外渡航の自由の制約との違いに留意)

いずれも国民の知る権利を守るために不可欠な内容だと思います。

平和の尊さ、報道の自由・取材の自由の大切さをかみしめつつ、シリアで犠牲になられたお二方のご冥福をお祈りさせて頂きます。

 

≪回答を受けて≫

政府の答弁は、以下の内容となります。

①本件旅券返納命令に至った事情

→ISILが2名の邦人を殺害し、引き続き邦人を殺害する意図を宣言するという特殊な状況において、邦人がシリアに渡航すれば生命に直ちに危険が及ぶ可能性が高いと判断し、説得を試みたものの、同人が意思を変えるに至らなかった。そのため、平成27年2月7日午後7時30分頃に、旅券返納期限を同日午後7時40分と定めた。

②本件旅券返納命令に当たってなされた手続保障

→原則として行政手続法に定める「聴聞」を行うことが必要だが、公益上、緊急な措置を要するものと判断して、聴聞を行わなかった。

③今後、報道の自由・取材の自由が制約を受ける可能性(海外渡航の自由との違いに留意)

→個別具体的な事案に応じて判断する必要があると考えている。

これまで旅券返納命令の手続き保障については学説上も明らかではありませんでした。しかし、政府が、「弁明の機会の付与」よりも手続き保障の厚い「『聴聞』を行う必要がある」と明言したことは、報道の自由及び取材の自由に配慮したものと評価します。

もっとも、報道の自由・取材の自由に及ぼす影響について、「海外渡航の自由との違い」に留意しながら回答するように求めたのに対して、「海外渡航の自由との違い」に触れることなく、「個別具体的な事案に応じて判断する必要がある」という通り一遍の回答しか頂けなかったことは残念に思います。

今回の旅券返納命令が、国民の生命・身体の保護のためにやむを得ない措置であった以上、政府としては、自信をもって、報道の自由・取材の自由に対する配慮をどのように行ったのかを明確にして欲しかったと考えます。

 

 

このページのトップへ