中西けんじ公式ホームページ/自由民主党衆議院神奈川三区(鶴見区、神奈川区)

活動報告

中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。

国会活動

安全保障関連法案の成立を受けて

2015年09月24日 (木)

平成27年9月19日、安全保障関連法案(我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案、および、国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案)が成立しました。

私の安全保障に関する信条はあくまでも「国民の生命を守ること」にあります。そのため、集団的自衛権を全面的に否定するものではありません。むしろ、北朝鮮の弾道ミサイルという新たな脅威に対して米国と共同で対処するためには、集団的自衛権の法整備は必要であると考えます。

確かに、安保関連法案は、国論を二分する重要法案を11本も束ねたため、疑問点も少なくありません。しかし、安全保障問題は、感情論を戒め、党派を超えて、疑問点を整理し、冷静な議論を心掛ける必要があると考えます。

安保関連法案の成立を受けて、自分自身が8回質問に立ち、委員会審議を通じて訴えた問題意識を整理するとともに、今後の課題についても提言させて戴きます。

 

1、ホルムズ海峡の機雷掃海について

政府は、「日本に輸入される原油の8割が依存している」ことを理由に、ホルムズ海峡の機雷掃海を、集団的自衛権によって説明しようとしています。しかし、資源別発電実績に占める原油の割合は1割弱(9.3%)に過ぎず、その8割が途絶したとしても7%程度の電力不足に留まるため、集団的自衛権の要件である「国の存立が脅かされる」とまでは認められない、と考えます。

確かに、日本の機雷掃海能力は高く、これを活用するという発想自体は異論ありません。しかし、機雷敷設は、その海域を利用する国際社会に対する迷惑行為であるため、機雷掃海は、国際貢献の一環として捉えるべきではないでしょうか。機雷掃海については、集団的自衛権ではなく、集団安全保障の枠組みでとらえ直すべきと考えます。

【参照】7/30(木)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告① 集団安全保障による機雷掃海の可否

【参照】7/30(木)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告② ホルムズ海峡封鎖による機雷掃海

【参照】8/4(火)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告① ホルムズ海峡封鎖によるLNG不足

 

2、武力攻撃を受けた国の「同意または要請」について

集団的自衛権における「存立危機事態」の認定に当たって、武力攻撃を受けた国の「同意または要請」が必要か否かについて、政府の答弁は二転しました。

政府は、最終的に「『同意または要請』は、存立危機事態の認定に伴い閣議決定する対処基本方針の『認定の前提となった事実』として必要になる」との政府見解(平成27年8月28日「存立危機事態の認定に際し、相手国からの要請が必要であるかについて」)をまとめました。しかし、仮に、政府見解が示されないまま立法化された場合、「同意または要請」の要否を巡り、現場が混乱したことは想像に難くありません。

このような混乱が生じた原因は、「同意または要請」を条文に明記しなかったことにあると思われます。現場の無用な混乱を避けるためにも、安保法制全般を通じて、実態に即した形で条文の整除を行う必要があると考えます。

【参照】8/25(火)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告② 武力攻撃を受けた国の要請または同意

 

3、朝鮮半島有事の際の退避する邦人の保護について

現在、韓国には、短期滞在者も含めて6万人弱の日本国民が在留しています。そのため、朝鮮半島有事の際には、日本に退避する在留邦人の保護が問題となります。

ところが、政府の説明は、在留邦人を輸送する艦船が、日本の船か外国の船かによって防護の方法が異なる(日本の船であれば個別的自衛権、外国の船であれば集団的自衛権)というものです。そのため、仮に外国の船であった場合、その国が「日本と密接な関係のある国」と認められ、その国から「要請または同意」がない限り、在留邦人を輸送する艦船であっても防護できないということになります。

しかし、たまたま乗る船によって邦人保護に差異が生じるというのは不条理ではないでしょうか。北朝鮮問題は、まさに今そこにある危機です。私は、どちらの船も、邦人の生命を守るためには、個別的自衛権で防護すべきと考えます。

問題はその法律構成ですが、①いわゆる在外地国民の保護の事例(海外に滞在する国民の保護について、滞在国による保護が期待できない場合、例外的に、本国が自衛権を行使することで国民の保護を図ることも国際法上許容されている)と同様に解して、外国の船で退避する邦人の保護も個別的自衛権で図る、または、②「公海上の日本の船に対する攻撃は、我が国に対する武力攻撃と解する余地がある」「我が国事態と認められる場合には、邦人を輸送する第三国船舶も個別的自衛権によって防護しうる」という政府答弁から、日本の船に対する攻撃の着手を広く認めて、個別的自衛権による第三国船舶防護の範囲を広げる、ということが考えられます。

今回の安保関連法案の審議を通じて、非常に残念に思うことは、これまでの個別的自衛権の議論が十分整理されずに、いわば二項対立的に集団的自衛権の議論がなされたことです。安保関連法制の今後の運用に当たっては、これまでの個別的自衛権の議論を整理したうえで、個別的自衛権で対応できる部分と集団的自衛権が求められる部分を精査していくことが必要であると考えます。

【参照】8/4(火)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告③ 邦人輸送中の米艦防護

【参照】8/25(火)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告③ 在外邦人を輸送する船舶の防護について

 

4、昭和47年政府見解について

政府は、①昭和47年政府見解作成当時の事実認識と比べて安全保障環境が変化したことを理由に、②基本論理を維持すれば、当てはめの部分を変更して集団的自衛権の行使を認めても法的安定性を害さないとして、集団的自衛権の行使を認めないとした昭和47政府見解の憲法解釈を変更しています。

しかし、②´基本的論理と当てはめに分ける政府の昭和47年政府見解の読み方は、「接続詞」から読み取れる論理と矛盾すること、および、①´昭和47年政府見解と同じ日に提出されたもう一つの政府見解は「国際情勢、武力攻撃の手段・態様は千差万別」であることを認めており、安全保障環境の変化は理由とならないことから、昭和47年政府見解を、憲法解釈を変更する根拠とすることは大変理解しづらいと考えます。

国民の生命を守るために集団的自衛権の議論は避けて通れませんが、そのためには、他の政府見解も含めて、従来の議論との法的安定性を保てるだけの理論的検証が必要です。安保法制を整備する大前提として、集団的自衛権の行使を容認する理論的検証を再度行う必要があると考えます。

【参照】8/19(水)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告 昭和47年政府見解

【参照】9/9(水)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告 昭和47年政府見解作成当時の政府の事実認識

 

5、徴兵制について

安保関連法案を巡り「徴兵制が復活するのでは?」という危惧が示されています。

確かに、政府は、「徴兵制は憲法違反である」と説明していますが、他方で「徴兵制は、軍隊を前提とする制度である」「自衛隊は、軍隊とは異なるものである」とも答弁しているため、「自衛隊は、軍隊に当たらないため、強制的に加入させても徴兵制に当たらない」という解釈を生む余地が残されていました。

そこで、この点を指摘したところ、「自衛隊は、『軍隊』そのものではないが、本人の意に反して自衛隊に要する人員を徴集し強制的にその役務に服させることは、憲法上許容されるものではない。」という解釈の余地を埋める政府見解が示されました。

政府は、国民の理解を促すためにも、「総合的に判断する」等の抽象的な答弁を改め、裁量の余地を狭める結果となっても、具体的に説明する努力をされるべきだと思います。

【参照】8/4(火)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告② 徴兵制

【参照】8/25(火)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告① 政府の答弁姿勢

 

6、採決について

安保関連法案の採決は、平和安全法制特別委員会の議場が騒然となるなかで行われたとのことですが、議事録には「聴取不能」とあり、内閣提出の2法案及び維新の党提出の7法案のいずれが採決の対象となったのか明らかではありません。また、国民的な理解が進んでいない中での採決は大変残念でもあります。

しかしながら、旧みんなの党では、昨年、安保法制懇による答申が出された際に、基本的に集団的自衛権の行使容認の方向で、政調会長として議論の取りまとめを行っておりました。みんなの党は解党されましたが、こうした経緯を帳消しにする訳にはいきません。

そのため、参議院本会議での採決はあえて棄権いたしました。

安全保障環境を巡る問題は、党派を超えて取り組むべき問題だと考えます。委員会質疑を通じて見えてきた課題を含めて、不断に検討し、今後も提言して参りたいと思います。

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