中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2015年08月26日 (水)
8月25日の参議院平和安全法制特別委員会において、在外邦人を輸送する船舶の防護について、質問しました。
資料は、安倍総理が集団的自衛権を行使する典型例として説明する事例(海外有事の際に日本へ避難する日本人母子を乗せたアメリカの輸送艦を自衛隊が防護する事例)に、同じく日本へ避難する日本人母子を乗せた日本船舶と第三国船舶を加えたものです。
安倍総理は、この事例を集団的自衛権で説明されていますが、米輸送艦に乗船した日本人母子の防護は集団的自衛権で説明できるとしても、第三国船舶に乗船した日本人母子の命を守れるのかという観点から質問しました。
そもそも、事情判断にもよりますが、公海上の日本船舶に対する武力攻撃については、我が国は個別的自衛権を行使できると考えられております(平成14年7月16日政府答弁書)。
くわえて、政府見解「有事における海上交通の安全確保と外国船舶について」によると、我が国が個別的自衛権を行使しうる状況であれば、国民の生存を確保するために必要不可欠な物資を輸送する第三国の船についても個別的自衛権を及ぼしうる、との見解が示されています(昭和58年3月15日の参議院予算委員会)。
そこで、「物資の輸送」の事例において個別的自衛権を及ぼしうるのであれば、「在外邦人の輸送」の事例においても個別的自衛権を及ぼしうるのではないか、と質問しました。
安倍総理の答弁は、以下の通りです。
「既に日本への攻撃が発生している、我が国事態がすでに発生しているという状況であれば、日本への物資が運ばれている船を個別的自衛権の延長で当然に守れる。邦人を乗せている船に対して、日本を攻撃している国が攻撃すれば、守りうる。」
「我が国に対する武力攻撃が発生していない場合に、我が国の船でない船に対して攻撃がされた場合は、外形上は集団的自衛権の行使に当たる。」
政府が、我が国への武力攻撃(日本船舶への武力攻撃を含む)が発生していると認められる状況下において、日本人を輸送する第三国船舶に対しても個別的自衛権を及ぼし得る、との答弁を引き出せたことは、大変重要な意義があると考えております。
朝鮮半島有事の際には、数十万人の外国人(日本人だけでも6万人近く)が、ひとまず日本に退避してくることが想定されます。そのため、釜山~博多の間(200キロ:浜松~東京の距離に相当)は、日本人を含む数十万人を運ぶ船舶で埋め尽くされることが予想されます。そして、その船は、日本やアメリカの船に限らず、パナマ船籍・リベリア船籍といった第三国の船も多く含まれるでしょう。
このような状況において、はたしてパナマやリベリアから、「要請または同意」を取り付けて集団的自衛権を行使することが現実的といえるのでしょうか。むしろ邦人保護のためには、個別的自衛権を拡張していくケースと捉えるべきではないでしょうか。
政府の想定する集団的自衛権の行使では、邦人保護に当たって重大な欠陥を生じるおそれがあります。
この問題点については、引き続き質していこうと思います。