2017年1月20日
東芝 損失7000億円規模に拡大も:米原子力事業で

東芝の粉飾決算問題については、資本市場の信頼性を揺るがすものとして国会の場で再三取り上げてきました。

今週には、2015年末に米国の原発子会社が0ドルで買収した会社の企業価値が想定を大幅に下回り、7000億円の減損を計上する見込みと報道されています。

わずか1年で、資材や人件費などが7000億円も増加するとはどういうことなのか。2015年夏の粉飾決算事件で刷新されたはずの新経営陣は、買収に際してのdue diliegenceをどのように行ったのか。昨年度末の決算は、またもや不正なものであったのか。

今後の発表を待ちつつ、必要なことがあれば質していきたいと思います。

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[東芝 損失7000億円規模に拡大も 米原子力事業で](NHK)

参議院議員 中西けんじ(神奈川県選出)

 

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2017年1月20日
東芝 損失7000億円規模に拡大も:米原子力事業で
「長期一括借り上げの虚実」(週刊東洋経済:10月22日号)
 
9月30日に「神奈川県で空室率急上昇ー泣くオーナー」(日本経済新聞)
に関して、「相続税対策との事ですが、空室となっては目算が狂います。家賃保証付と言っても、『状況が悪化した場合に、果たして30年以上も同条件での家賃の保証を続けられるものなのか?』と疑問を感じざるを得ません」と指摘したのですが、この懸念はすでに現実のものとなっている様です。
 
株や現金などと比べて、賃貸不動産が有利となっている制度そのものを改善していくべきだと考えています。また、契約者は「消費者」ではなく「事業者」の扱いとなることにも注意が必要です。
 
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神奈川県で空室率急上昇

参議院議員 中西けんじ(神奈川県選出)

 
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2016年10月17日
相続税対策としての賃貸住宅の急増を懸念します

経済政策の究極の目的は、「働きたい人に活躍の場(職)を提供する」ことです。GDPや物価上昇率などといった指標は、中間目標や手段でしかありません。

97.3%と過去最高を記録した大卒就職率が、来春さらに2.8%も上昇するというのに「アベノミクスは失敗」と批判するのはおかしな話です。

「新卒一括採用」に関しては様々な批判がありますが、「若者の失業率を、諸外国と比べて著しく低く抑えている」というメリットもあります。むしろ「年金や人事評価で、中途採用者が不利にならない仕組み」を作っていくことが必要だと思います。

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大卒内定6年連続増(日本経済新聞)

参議院議員 中西けんじ(神奈川県選出)

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2016年10月16日
来春の大卒就職率-過去最高をさらに更新と予想(日経)

3月の財政金融委員会で取り上げた「不動産融資、特に賃貸住宅向け融資の増加問題」を、「借りる側」の視点から指摘した記事です。

相続税対策との事ですが、空室となっては目算が狂います。家賃保証付と言っても、「状況が悪化した場合に、果たして30年以上も同条件での家賃保証を続けられるものなのか?」と疑問を感じざるを得ません。

「首都圏では、特に神奈川県の空室率が高い」との指摘は、非常に気になります。
株や現金などと比べて、不動産(特に賃貸不動産)が有利となっている制度そのものを改善していくべきだと考えています。

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3/10 財政金融委員会(不動産融資の急増、マイナス金利政策の影響、賃上げ問題、量入制出か量出制入か)

アパート建設 空室率悪化で泣くオーナー

2016年9月30日
神奈川県で空室率急上昇

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実質賃金が、6カ月連続で前年を上回りました。

半年前、国会では「実質賃金が上がっていない」として、アベノミクス批判が展開されていました。しかし、政策の効果が出るまでには時間がかかりますし、経済の動きには順番があります。
そこで2月22日付の(中西の目ヂカラ)「雇用市場に現れた好循環の兆し」では、「今は我慢の時」であり「今後賃金は上昇に転ずる」ことを理論的にご説明させていただきました。

 

雇用市場に現れた好循環の兆し

もしあそこでブレて政策転換をしてしまっていたら、実質賃金は上がらないまま、日本経済は苦境に陥っていたことになります。

まだ、名目賃金の上昇幅が2%を下回っており、満足できる水準ではありませんので、引き続き正しい財政・金融政策を推進してまいります。

2016年9月6日
ブレない経済政策を(実質賃金が6か月連続前年比プラスを記録)

「有価証券報告書で開示されている取締役は、社外も含めて16人。それに対して、開示されていない相談役と顧問が17人。
年功序列を美風とする日本社会において、社長より年配のOBである相談役や顧問が、影響力を行使しうる立場にあることは想像に難くない。これではコーポレートガバナンスは絵に描いた餅になる」

昨年夏の財政金融委員会で、東芝の不正経理問題を取り上げた際に指摘をした問題点に関する実態調査が始まりました。

 

9/10 財政金融委員会(東芝歴代トップの責任、相談役・顧問の情報開示、金融政策の透明性)

スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードと、相次いで企業経営の透明性を高める働きかけが行われています。
ただ、この様な「見えない制度・慣習」が、その実効性を殺ぐ可能性に関して十分な注意が必要だと思われます。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160830/k10010658581000.html

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2016年8月30日
顧問や相談役の企業経営への影響 初の実態調査へ(NHK)

「英国のEU離脱」というニュースで金融市場は大荒れとなっています。確かに英国とEUの金融・経済に短期的に打撃があることは間違いありません。

しかし「1992年の英ポンドのERM離脱」の方が、本質的な意味での金融・経済への衝撃は大きかったはずです。

英国はポンドという独自の通貨を持ち、これまでもそしてこれからも独立した財政金融政策をとることができます。マクロ経済政策に、大きな変化はありません。

これが「ユーロ」という通貨でしばられた国が離脱する話(たとえばギリシャ)との違いです。

ポンド危機、アジア通貨危機、ベルリンの壁の崩壊、ITバブル崩壊、911同時多発テロ、リーマンショック、ユーロ危機などなど、金融市場の最前線で多くの「危機」を経験しました。

911同時多発テロを除けば、これらの危機の時には、かならず「経済合理性を欠いた不具合」がありました。無理のある経済運営や経済体制への固執、金融市場そのもののゆがみが危機を引き起こしています。

しかし、今回は違います。実体経済に深刻な問題が生じたのではありません。あくまで「国のあり方が変わる」という将来に対する漠然とした不安感が、市場の大きな変動という形で示されたものです。

「イギリス経済を支えている金融街シティから、金融機関が出ていく」という意見には、長年国際金融の現場にいたものの感覚として疑問を呈さざるを得ません。

歴史と文化に加え、最新の金融テクノロジーを身につけた有能な人材の集積地であり、国際金融の共通語である英語の母国である英国(シティ)には計り知れない魅力と底力があります。

むしろ、EU離脱は「政治的問題の方が、経済的問題よりもはるかに大きいのではないか」という冷静な視点が必要だと思います。

(選挙戦の真っ只中なので、詳細な分析はできていません。しかし、この程度の大局観は必要だと思っています)

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2016年6月26日
英国のEU離脱

<働く人が増え、しかも正社員が増えました>
先週発表となった総務省の2015年労働力調査では、雇用者数が過去3年で130万人増えただけではなく、正社員の数が8年ぶりに増加に転じたことが明らかになりました。

しかも正社員が26万人増加したのに対して、非正規社員は18万人の増加に留まっています。働いていなかった女性や高齢者が正社員になる例も増えていました。増加数で正社員が非正規社員を上回るのは、じつに21年ぶりのことです。

さらに、「なぜ非正規社員になったのか?」と言う問いに、「自分の都合のよい時間に働きたいから」と回答した人が30万人増えたのに対して、「正社員の仕事がないから」と答えた人は16万人も減少していました。

働きたい人が働けるようになっただけではなく、正規・非正規といった多様な働き方を選べるようになってきていることは明らかです。雇用市場が、良好な状態に向かっていることは間違いありません。


<実質賃金が上がらないと困りますよね。だけど、、、>
一方、「実質賃金が下がり、実際に使えるおカネが減って貧しくなった。そのために、個人消費が伸びていない。いまの経済政策は間違っている」という批判があります。たしかに厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2015年の実質賃金指数は、前年よりは改善したもののマイナス0.9%でした。

実質賃金というのは、皆さんが受け取る賃金(名目賃金)から物価の上昇分を差し引いたものです。

名目賃金が1%しか上がっていない時に物価が2%上がると、実質賃金は1%下がります。あくまで程度の問題ではありますが、「モノやサービスの値段が上がって、以前なら買えていたはずのものが買えなくなった」ことになります。インフレの悪いところです。

一方、名目賃金が2%下がっても、物価が3%下がってくれれば、実質賃金は1%上がります。「給料は減ったけど、以前よりたくさんのモノやサービスが買えるようになった」わけですから、喜ぶ人もいるかもしれません。デフレの良いところです。

この部分だけを切り取って考えると、たしかに「実質賃金を、いますぐ上げろ!下がったのはケシカラン!」という主張は正しいように聞こえます。

しかし、経済は、常に動きつづけている生き物です。短いあいだだけを輪切りにして判断してしまったのでは、一見正しそうな政策が「長期的にはとんでもないこと」を引き起こしかねません。


これから起きるさまざまな変化を、「時間を追って順々に考えていく」というのが経済学的なものの考え方です。俗にいう「風が吹けば桶屋が儲かる」という世界ですね。

逆にいえば、この思考ができないと経済政策を誤ってしまうことになります。



<失業者を減らすことが最優先>

少しこみ入った話になるので、経済学でよく使われる需要曲線(赤)と供給曲線(緑)を使ってご説明します。縦軸が実質賃金、横軸が雇用者数です。

<現在>という矢印の指しているところに、いまの日本の雇用市場はあります。

左側の縦軸の「今の実質賃金」というところから水平に線を引く(………)と、「雇いますよ」という需要曲線(赤)とぶつかります。ここから下におろした線の指しているところが、「今、雇用されている人数」です。

先ほどの水平な線をさらに右にいく(………)と、「働きたいです」という供給曲線(緑)とぶつかります。ここから下におろした線が指しているところの人数だけ「今、働きたい人」がいます。

ただ、実際に雇ってもらえるのは、需要曲線(赤)から降りてきたところまでの人数だけです。この差が「失業者」となります。

失業とは、「働きたいのに働けない」ということです。しかも、失業することによって収入がとだえて経済的に困窮するだけでなく、「社会から疎外されている」と感じてしまいがちです。

その結果、非常に残念なことですが、精神的・肉体的に追いつめられて、自殺という手段を選ぶ人が増えてしまいました。日本の失業率と自殺率の相関関係は、OECD諸国の中でも際立って高くなっています。


従って、「失業者をどうやったら減らせるか」「この図の赤い矢印の方向にどうやって進むのか」ということを最も優先して考えなければなりません。

 

<我慢して回り道を>
現在の実質賃金の水準で、そのまま点線の上をわたって供給曲線(緑)に到達できれば一番良いのですがそうはいきません。点線の上は、あくまで空間です。右のほうにいきたければ、黄色い矢印が指し示すように「斜め右下方向」に需要曲線(赤)の上を動くことになります。

あくまで「下」ですから、「実質賃金が下がらないと、雇用者数が増える方向には行けない」というのが現実です。これを変えることは、誰にもできません。

では、どうしたら実質賃金は下がるのでしょうか?

先ほどご説明したように、実質賃金は(名目賃金)-(物価の変動)で決まります。

「実質賃金を下げろ」といわれて、まず思いつくのは「名目賃金を下げる」、つまり「賃金カット」でしょう。強欲な経営者が「給料を20%下げることにした!」と叫べば、たちどころに下がって、、、というほど話は簡単ではありません。

名目賃金は、経営者と労働者の交渉で決まります。「交渉」といっても、全員が実際に膝をつきあわせて丁々発止とやる訳ではありません。


「この賃金なら雇いたい」「この賃金なら働こう」という「労働市場での需要と供給から決まる」と考えたほうが自然です。アダム・スミスの「神の見えざる手」は、ちゃんと働いています。

この名目賃金というものは、あまり簡単に上がったり下がったりしません。特に日本では、毎週(週給)や毎日(日給)といった単位で給料が変動する労働者は極めて少数です。大多数の労働者は月給制ですし、しかも年間の支給額が大きく変動することはありません。


「20%下げるぞ」などと宣言したら、翌日の職場はカラになっていることでしょう。

つまり、「名目賃金は、そう簡単には下がらないし下げられない」というのが、本当の話です。

では、「物価を上げる」というのはどうでしょう?

これは何か非常に難しいこと、特に長い間デフレに苦しんだわが国にいると、とんでもなく大変なことのように思えます。


しかし、何らかの政策で「強引に名目賃金を変える」よりも、「金融政策によって物価水準を変えることで、実質賃金を動かす」というほうが世界の経済学や経済政策の世界では一般的です。

たとえば2013年1月に、政府と日銀は「+2%と言う目標を定めて物価を上げる」という共同宣言を発表しました。これは「実質賃金は一時的に下がるものの、まず失業者を減らす政策をとる」ことを示したものであると言い換えることができます。

その後の政策は、よく「異次元の」という形容詞をつけて紹介されますが、「デフレという名の異常事態からの脱却」という局面だったために「異次元の手段」が必要だっただけです。政策そのものは、ごく常識的な経済理論にのっとったものです。

「異次元」ではあっても、「異常」ではありません。

いま「物価が上昇したことで実質賃金が下がっている」のは、この右下がりの黄色い矢印の方向に日本経済が走りだしたということです。実質賃金は下がりましたが、冒頭にご紹介したとおり雇用者数は増加しています。


赤い矢印の方向に動いていることは、間違いありません。

 


<デフレへの逆回転は絶対に阻止>
現在の状態を、「実質賃金が下がって貧しくなった」と批判するのは簡単です。しかし、黄色い矢印の方向に行かなければ雇用者数は増加せず、130万もの人が失業したままだった可能性は否定できません。

いまはひとりでも多くの人が働けるようになるために、少し我慢をする時です。

きちんと現在の金融緩和政策をつづけていれば、「完全雇用」と書いた部分を通過し、右側の黄色い矢印が示す「右斜め上」に向かって供給曲線(緑)の上を動いていけるようになります。いよいよステージの転換です。

人手不足により名目賃金が上昇し、実質賃金が上がります。しかも、もらえる給料の額面が増えています。


「もらえる給料は減ったけど、物価はもっと下がっている。だから、実質的に豊かになって幸せだ」などという冷静沈着な計算のできる人が、世の中の多数派だとは思えません。やはり「金額が増えてハッピー」という人のほうが多いですから、消費が増えて経済の好循環が起きます。

しかも右方向に動いていますから、働くことができる人は増えつづけます。もう「社会から疎外された」などと、悲観する必要はありません。


1998年に3万人を超え「世界的にも高水準」と懸念されていた自殺者数は、過去5年連続して減少してきています。大規模な金融緩和に踏み切った2012年以降、減少幅が大きくなっていますが、これがさらに加速していくと期待できます。

実際の経済はこんな簡単な図よりも複雑ですから、まだ「完全雇用」と書いたところに到達しているかどうかはよく分かりません。

しかし、比較的名目賃金が変わりやすい「パートやアルバイトの時給」が、大幅に上がっているのはご存知のとおりです。首都圏のパートやアルバイトの平均時給は1000円を超えました。厚生労働省が先週発表した賃金構造基本統計調査では、女性の賃金が過去40年で最も高くなっています。


さらに総雇用者所得も増えていますから、働いている人全体が受けとる賃金の合計は増えつづけています。

総務省の調査によると、正社員を増やした会社は「人材流出を防ぐため」「採用を優位に進めるため」という理由をあげていました。つまり、「良い待遇を与えないと、働いてもらえなくなった」ということです。これは「完全雇用」状態に近づき、働く人たちの立場のほうが強くなったことに他なりません。

結論は明らかです。「物価が上がったことで実質賃金が下がり、生活が苦しくなった。金融緩和政策をやめて物価を下げろ」と言う主張は、経済政策論的に完全に間違っています。物価が下がったおかげで「実質賃金が上がった」と喜ぶことができるのは、失業する心配のない人達だけです。

もし、そんな経済政策をとってしまうと、この図の青い矢印のように「左斜め上」に動いていくことになります。たしかに実質賃金は上がりますが、多くの人が職を失い苦しむことになります。これこそが、デフレの害悪です。

今の流れを逆回転させてはいけません。

2016年2月22日
雇用市場に現れた好循環の兆し

私が再三求めていた大胆な金融緩和政策は、黒田日銀総裁のいわゆるバズーカ緩和とそれに続くサプライズ緩和と言う形で実現されました。また、国内の総供給に対して総需要が足りない時(需給ギャップがある時)に財政出動を行なった事も、基本的には正しい経済政策であったと考えています。その結果、雇用情勢や企業収益などに、明るさが見えてきていたのは確かです。

 

ところが、消費税率が5%から8%へと引き上げられた事で、歯車が狂ってしまいました。私は消費増税自体が悪だとは考えていません。しかし、「賃金の上昇が始まる前の増税は、病み上がりの患者に冷水を浴びせかける様なものだ」として反対していました。結果は危惧していた通りです。これを「予想を超えた悪影響」などと、あたかも降ってわいた天災の様に呼ぶのはおかしなことです。

 

ただ、この消費増税の悪影響がなかったとしても、果たして日本経済が活力を取り戻せていたかというと疑問です。財政政策や金融政策は、景気を刺激し下支えしてくれます。しかし、経済の潜在成長力、つまり長期的に成長する力をつけてくれる訳ではありません。

 

そこですぐに思い浮かぶのはアベノミクスの三本目の矢、しかも「本丸」として挙げられていた「成長戦略」です。ただ、金融・財政政策と言う一本目と二本目の矢と比べると、その内容が判然としません。

 

「規制緩和等によって、民間企業や個人が真の実力を発揮できる社会へ」と言う方向性は分かっても、具体的な話となると一向に見えてきません。国家戦略特区を定めて、医療、雇用、農業などの分野で、既得権益に守られた「岩盤規制」を地域限定で緩和しようとしていますが、日本全体の成長につながるまでにはまだまだ時間がかかります。

 

そんな中、あまり注目されていませんが、反成長戦略とでも言うべき状況が、日本全体に温存されている事は深刻な問題だと考えています。

 

中小企業金融円滑化法は、2013年3月31日に期限切れとなりました。そろそろ3年が経とうとしていますので、皆さんのご記憶からは消え始めていると思います。この法律の延長が提案されるたびに私は反対をしてきましたので、「ようやく廃止された」と言う思いです。

 

ところが、期限切れとなった後も、金融庁の指導により「貸し付け条件の変更」つまり返済猶予が続けられてしまっています。

 

この法律が導入されたのは、リーマン・ショック直後の2009年12月です。たしかに、当時の急激な経済情勢悪化に対する緩和策としては有効な薬でした。しかし、その一方で「経済の新陳代謝を停止させる」という副作用を持っていたことも間違いありません。

 

たとえ稼ぐ力がなくなった企業であっても、従業員の雇用を守っている限り社会に貢献しているという考え方もあります。また、既存の企業が技術革新を行い、経営改革を通じて生産性を向上させていけば良いではないかと言う考え方もあります。

 

しかし、経済全体の成長や生産性の向上をはかる為には、新たな活力を持った優れた企業が参入し、非効率な企業が退出するという新陳代謝が不可欠です。稼げなくなった企業からヒト、モノ、カネが放出されなければ、新たに参入したい企業に、この経営に不可欠な三要素が回ってくることはありません。

 

どの先進国においても、新たに開業する企業(開業率)と廃業する企業(廃業率)とはほぼ均衡しています。たとえばアメリカは9.3%/10.3%、ドイツは8.5%/8.1%、フランスは15.3%/11.1%、イギリスは14.1%/9.7%です。日本はと言えば、均衡してはいるのですが4.8%/4.0%と著しく低い水準にあります。

 

開業率が低いことから、「日本人にはベンチャー精神が欠けている」などと言われます。しかし、実は「退出して経営資源を放出してくれる企業が少ない」事にも、大きな問題があると思われます。資源配分が適正に行われなければ、経済が真に活性化することはありません。

 

雇用の流動化には痛みが伴います。しかし、現在返済猶予を受けている30万社とも40万社とも言われる企業の内、健全性を取り戻す企業は1割もないとされています。返済猶予や「追い貸し」で延命している再建の見込みが薄い企業にいたのでは、賃上げはおろか前向きに働く喜びすら怪しいものとなってしまいます。

 

短期的には救われている様に見えても、長期的に不幸な状態に陥る事は避けねばなりません。もちろん、再雇用を円滑にする為の再教育制度の拡充、職場が変わっても引き継げる社会保障制度体系の構築、医療や年金制度の雇用形態による差別の撤廃など課題はあります。

 

しかし、痛みを避ける為に金融機関に延命治療をさせ続けるのは、ジリ貧を恐れてドカ貧に陥る道です。これからの国会での審議の中で、この様な「反成長戦略」が目に見えないところで続けられている事を指摘し、改善を求めていきたいと考えています。