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2021年03月12日 (金)
コロンビアのカラスキージャ財務・公債大臣と1対1での会議です。冒頭は先方の母国語であるスペイン語でご挨拶。イタリア語もお分かりになることが分かったので、少しイタリア語で話してから会議に入りました。
2021年02月05日 (金)
先日のビデオ講演の全文です。目次を見ながらお聞きいただくと、全体の流れや構成がお分かりになりやすいと思います。
(あ)英語化
(い)在留資格
(う)ワンストップ窓口
+++++++++++ 講演 +++++++++++
本日は、金融をはじめ様々な分野で活躍していらっしゃる皆さんがお集りになられたFinCity Global Forumでお話しする機会をいただき光栄です。私からは、国際金融都市構想に関する政府の取り組みについてお話しをさせていただきます。
新型コロナウイルスの感染の拡大は依然として世界的規模で続いており、日本でも先日緊急事態宣言が再び発令される事態となりました。
ワクチンの開発が進み、一部の国ではすでに接種が開始されたという朗報も届いていますが、WHOの定義で「新興感染症」と呼ばれているものだけでもSARSやMERS、エボラ出血熱、エイズなどが、この四半世紀ほどの間に次々と襲ってきたことは、皆さんのご記憶にある通りです。
さらには長年人類を苦しめているコレラやマラリアなどまで考え合わせると、この先もウィズ・コロナだけではなくウィズ・感染症、ウィズ・パンデミックという時代を生きる心構えが必要だと思います。
一方、地政学的リスクの変化にも注意が必要です。
ベルリンの壁の崩壊以降、中国経済が実質的に資本主義化し、インターネットなど通信分野が飛躍的に発展したこともあり、21世紀の世界は急速にグローバル化、端的にいうとフラット化の道をたどってきました。
しかし、米中関係の緊張の高まりやブレクジットなどに象徴される様に、これまでの流れを大きく変え、むしろ逆転させるような事態が発生しており、かつてのフラットで凪の様な状態から今や大しけとなりつつあります。
こうした感染症の爆発的な拡大の可能性や、地政学的リスクの高まりを踏まえると、金融資本市場のあり方についても、もう一度考え直す必要があるのではないでしょうか。
純粋に効率だけを考えるならば、例えば「1つのタイムゾーンに1つ」といった形で、国際金融センターは極力集中させるのが正解でしょう。極論かもしれませんが、世界でたった1つだけにしておいて、24時間体制でいつでもどこからでもアクセス出来るようにするのがベストかもしれません。
しかし、これは危険な賭けです。
わたしが20年以上奉職した投資の世界にはDon’t Put All Your Eggs in One Basket(全部の卵を一つのかごに入れてはいけない)という格言があります。
金融が「社会のインフラ」であることを正しく認識するならば、不確実性、つまりリスクが高まってきている今、「金融市場、金融センター自体の分散を通して、金融資本市場の強靭性を高めていくことが我々の責務である」と考えるべきだと思います。
東アジアでは、それぞれの金融センターが様々な特色を打ち出しつつ発展を続けてきています。
香港は中国へのゲートウェイであると同時に、アジアの国際金融センターとして機能しており、今後も重要な役割を果たしていくでしょう。
シンガポールは、現在は東南アジアのセンターとしての役割が中心ですが、金融AIハブとなるための国家プロジェクトを行う等、常に機能拡大のための新機軸を打ち出し続けています。
上海・深圳は、国内市場の大きさと成長力が魅力で、上海の新興ハイテク企業向け株式市場「科創板(かそうばん)」には、東証一部で時価総額上位になるような規模の企業がつぎつぎにIPOを果たしています。
これらの都市の発展は目覚ましいものがあり、金融業に携わっていた者として喜ばしい限りです。
しかし、アジア全体として様々なリスクに対して強靭な金融システムを築いていくということを考えるならば、日本が国際金融センターとして重要な役割を果たし、他の市場と相互補完的に機能できるようになることが重要だと思います。
日本には、安定した政治・法律制度、良好な治安・生活環境など、大きな強みがあります。また、GDPが500兆円を超える実体経済や1900兆円もの個人金融資産は、資産運用ビジネスにとっては大きな魅力であり、海外から資産運用会社や金融人材を呼び込み国際金融センターとなるポテンシャルを十分に備えています。
一方で、弱みとしては英語による行政対応や生活環境の不十分さや税制、専門人材の層の薄さといったものが挙げられます。
日本を国際金融センターとして確立するためには、日本の持つ強みは引き続き強化するとともに、弱みとして指摘されている点は可能な限り改善することで、金融資本市場としての魅力を総合的に高めていくことが必要です。
菅総理は内閣発足時の所信表明演説で「海外の金融人材を受け入れ、アジア、さらには世界の国際金融センターを目指します。そのための税制、行政サービスの英語対応、在留資格の緩和について早急に検討を進めます」との方針を明確に表明しました。
また、私自身の話をさせていただきますと、自民党のプロジェクトチームの座長として、昨年9月に「金融人材等の高度人材受入れに関する提言」を取りまとめました。
それは
の4つです。
この提言の実現については、引き続き政府の一員として尽力しており、昨年12月8日には「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」の一部として、国際金融センター関連の包括的な政策パッケージが閣議決定されました。
日本にいる外国人金融マンからは「日本で仕事をしようとする際の障壁は3つ。金融庁と税務署と入管だ」と言われます。つまり、金融当局による対応にとどまらず、縦割りを排し政府が一体となって取り組むことによって初めて、大きな障壁をきちんと取り払うことができるということになります。
閣議決定された国際金融センター関連の政策パッケージの内容について、もう少し詳細にお話ししたいと思います。
今般の政策パッケージでは、日本の金融資本市場の魅力向上のために、主に資産運用業者の誘致に力点を置きます。その上で、海外で資産運用業等を行ってきた事業者や人材が、同様のビジネスを国内で行いやすくするため、規制・税制面などでのボトルネックの除去を図っていきます。
規制面については、資産運用業の参入規制を見直します。
通常、投資運用業は登録が必要であるため、登録審査に相応の時間が必要となります。この点を改善するため、主に海外のプロ投資家を顧客とするファンドの資産運用業者や海外での業務実績・海外当局による許認可がある資産運用業者であれば届出制とするなど、参入手続の簡素化を図ります。
税制面については、昨年12月21日に政府税制改正大綱が閣議決定され、法人税・相続税・所得税について、大胆な措置が講じられる見込みとなりました。
法人税については、現在、非上場企業は業績連動報酬を損金算入できませんが、資金運用業者については、算定根拠等を公表すれば、これをできるようにします。
相続税では、就労等のために日本に居住する外国人に係る相続税については、その居住期間にかかわらず、国外の外国人や短期的に滞在する外国人が相続人となる場合、国外財産を課税の対象外とすることとなります。
所得税については、ファンドマネージャーが運用成果に応じ利益の分配として受け取るキャリード・インタレストについて、経済的合理性を有するなど一定の場合には、高額所得者に高い税率が課される総合課税ではなく、一律20%金融所得の対象となる条件などを明確化することになりました。
これら、規制・税制面でのボトルネック除去に加えて、海外事業者や高度外国人材がビジネス・生活をしやすい環境を整えていきます。具体的には、金融行政の英語化や在留資格の緩和、外国人の生活環境改善です。
(あ)英語化
金融行政の英語化については、本年1月、金融庁が「拠点開設サポートオフィス」を立ち上げました。この拠点開設サポートオフィスでは、新規の海外運用会社等の登録の事前相談から登録・監督までを英語によりワンストップで対応します。
併せて、新規に日本に参入する海外の資産運用会社からの英語での登録申請書の受付を開始します。加えて、今後、金融庁にAI翻訳サービスを導入して、金融行政の英語化を推進していきます。
(い)在留資格
高度金融人材の来日を促すための在留資格を緩和します。
例えば、起業準備のため在留資格「短期滞在」で入国した場合、これまでは事業開始前に一度日本から出国する必要がありましたが、これを出国することなく就労ビザを取得できるように変更します。
(う)ワンストップ窓口
国・地方公共団体・民間が一体となって、資産運用業等を始める外国人の法人設立・事業開始・生活立上げまでをワンストップで支援します。
今後、金融庁においてモデル事業を実施し、いくつかの海外事業者の日本拠点開設について、ライセンス登録に限らず創業全般をワンストップで支援します。
あわせて、金融庁で専用ホームページを立ち上げ、外国語対応可能な士業や民間事業者の情報や、医療機関・不動産業者・インターナショナルスクールといった生活面に係る情報発信を強化します。
以上申し上げたことは、当然のことながら「スタート」に過ぎません。これからそれぞれの施策を着実に実行し、成果に結びつけていくことが重要であり、私としても官民の関係者のご協力・知見をいただきながら、不断に改善に取り組んでいくことで、日本の国際金融センターとしての地位確立に向けて尽力していきたいと思っています。
最後になりますが、日本は、自由・民主主義・基本的人権・法の支配を尊重する国です。
冒頭申し上げた通り、感染症の脅威や地政学的リスクの高まりが懸念される中、日本は国際社会の中で重要な役割を果たしていかなければなりません。私も、政府の一員として、また金融業の発展を願う一個人として、この取り組みを力強く推進してまいります。
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