2024年12月04日 (水)
OECD加盟国の多くでは、外国人旅行者が購入した物品に対して消費税を還付しています。国によって付加価値税、売上税などと名称は違いますが、「観光などで訪れた国で購入した物品を、そのまま自国に持ち帰った場合に免税とする」という考え方では一致しています。
これは「輸出に対しては、消費税をかけない(かけるのはおかしい)」というルールを、旅行者が買って持ち帰ったものに対しても適用している為です。「自国に持ち帰るのは輸出と同じだから」という考え方です。我が国も同様の考え方に基づいて、消費税を還付しています。
2.観光立国とは
ただ、本当に「還付」するべきなのでしょうか?
私たちは、
・「観光」に来てもらって日本と日本人の素晴らしさを知って欲しいのか?
・高級ブランド品が売れて大きな利益を得る外国の業者を喜ばせたいのか?
もう一度、よく考え直すべきかと思われます。
3.外国人旅行者の支出の7割は買い物以外
観光立国という概念が明確に位置づけられたのは2003年1月、小泉純一郎政権の「観光立国宣言」以降です。その後、なかなか進捗が見られなかったのですが、各方面の地道な努力に加えて、ビザの要件が緩和されたことなどもあり徐々に増加し、街中で外国人の姿を見ることが多くなりました。
「爆買い」という言葉が一般的になりましたから、「外国人観光客=外国人買い物客」という印象があるかもしれません。
しかし、外国人旅行者の支出に占める「買い物代」の占める割合は3割にも満たず、7割は宿泊費や飲食代です。観光先進国に比べると高いとも言われていますが、際立って高い訳ではありません。ほとんどの外国人旅行者が、必ずしも「買い物目当て」で来ているのではないことが分かります。
この7割にかかった消費税は、もちろん還付などしていません。また「5000円以上」という基準がありますから、この買い物代のすべてが免税という訳でもありません。しかも、観光客が「モノ消費」から「コト消費」へ移ってきていることから、買い物代の割合は減少傾向にあります。
一方、この「外国人旅行者向け消費税免税制度」を悪用した事例が多発しています。たとえば、昨年の調査では「免税店で1億円以上の買い物をした外国人観光客」の数が680人にものぼっていました。とても実需とは考えられません。
しかも、「免税店で買い物をして日本国内で転売して利益を上げた」として摘発しても、「単なる『買い子』という手先でしかないために支払い能力がなく、徴求出来ていない」と担当者が非常に悔しがっていました。
その防止策として、来年度からは制度そのものを変えて、「買い物時点で消費税を徴求し、後で払い戻す」ことになりました。これにはシステム対応が欠かせませんから、大規模な投資が必要となっています。
日本に観光に来てもらって日本と日本人の素晴らしさを知って欲しいので、そのために大規模な投資をするのは大歓迎です。しかし、税金を返すために、さらに投資をするというのは如何なものでしょうか?
したがって、私は一貫して「免税措置の廃止」を訴えており、先日の自民党の税制調査会でも提言しました。
ちなみに、OECD加盟国すべてが、免税措置を講じている訳ではありません。アメリカで買い物をして、店頭で払った売上税は戻って来ません。制度の悪用に手を焼いたイギリスは、2021年に「旅行者向け付加価値税還付制度」を廃止しました。イギリスの付加価値税の標準税率は20%ですから、免税目当ての買い物旅行者にとっては大変な事態です。
2023年3月に閣議決定した「観光立国推進基本計画」では、冒頭で「旅のもたらす感動と満足感」「観光により地域の魅力を発見」「観光を通じて異文化を尊重し、世界の人々と絆を深めることは、草の根から外交や安全保障を支え、国際社会の自由、平和、繁栄の基盤を築く国際相互理解を増進する」とうたっています。
「免税店での買い物を促進し、国内消費の底上げを図る」などという言葉は、どこにもありません。
一方、インバウンドには光と影があります。消費が増えることは経済にとってプラスですが、オーバーツーリズムや治安の問題などを避けては通れません。きちんと消費税を徴求し、増えた税収を影の部分の対策に投じていくべきです。
財務省によれば、2023年の訪日外国人観光客の「免税購入額」は約1兆5855億円でした。大半は10%の消費税率が適用されていますので、約1600億円が還付されたと推計されています。今年の訪日客は昨年より3割以上増加して約3300万人、年間消費額は約8兆円となると予想されています。その30%が買い物代だとして、2兆4000億円の10%は2400億円です。
7月の観光立国推進閣僚会議では「2030年に6000万人」という数字も出ました。一刻も早くこの措置を取りやめるべきだと思われます。
6.外国人の本音
外国人の知人と話すと「日本は本当に安いね」と言います。聞いていて気持ちのよいものではありません。「だったら、免税でなくても買い物するか?」と尋ねると「する、する。それでも安い」と言われました。
これは、為替の影響だけでなく、長い間のデフレで「値付けそのものが低く設定されている」からではないかと思います。それならば、消費税を払ってもらおうではないですか。
2024年12月02日 (月)
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