中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2017年05月30日 (火)
1.フィンテックの推進
○中西健治君
おはようございます。中西健治です。
本日は、銀行法等の一部を改正する法律案についての審議ということであります。まず、私の日本の銀行に対するちょっと考えみたいなところから始めていきたいというふうに思っていますが、金融というとグローバルなイメージというのがあるかと思いますが、こと個人分野、個人金融のリテールの分野は基本的にローカルな色彩が強いというふうに思っております。
それぞれの国の文化の中で育まれた一種独特の公共財のような性格を持っていて、おいそれと外から入ってこられるものではないと、こんな認識を持っています。
例えば、例外的に世界中でリテールバンキングを展開していたシティバンクですとかHSBCが日本のみならず多くの国の個人向け金融業務から撤退したのは、御存じの方が多いことだろうというふうに思います。
その日本の個人金融部門の特徴ですけれど、これは一にも二にも消費者が銀行を信頼しているということではないかと思います。私もアメリカにいた時期がございますけれども、アメリカでは、基本的に銀行は間違えるものであると、こういうふうに思っている人が非常に多いです。
ですので、公共料金、これを自動口座振替をしてもらっているという話をすると、みんな目を丸くするということであります。銀行員に勝手にお金を動かされたくないと、こういうような思いを持っているということであります。
そういう意味で、まあ今回の件ではありませんけど、商工中金、バンクと名のって、商工中金バンクと名のっているわけですから、これは、今回の不祥事というのは大変深刻なことであるというふうに思っております。
この銀行ですけれども、銀行の信頼が高い。今回、銀行法の改正、このフィンテックの動きが加速する中で、フィンテックの業者それ自体は信用度が高くないと、どういう会社か分からないということで今回登録制にするんですが、銀行との契約内容などを開示することによって、言わば銀行の信用力というものに依拠してこの制度の枠組みをつくっていくと、こういうふうになっているのかなというふうに思います。
ですから、日本の金融の文脈の中で今回の法改正というのは理解し得ると、私はそのように考えております。
しかし、今後のフィンテックの発展という観点から幾つかお聞きしたいというふうに思います。
一つは、元々IT分野と金融というのは親和性は非常に高いというふうに思います。AIの進化などもありますので、これから想定もしなかったものがどんどん出てくるということになるだろうというふうに思います。
いろんなフィンテック企業が出てきますけれども、今回の銀行法の改正は、銀行の方での、オープンにすると、APIをオープンにするということの義務というのは課されておりません。
努力ということに、努力義務ということにとどまっております。五十二条の六十一の十一というのを見ても、フィンテック業者などとの契約内容を公表し、不当な差別的取扱いを行ってはならないとなっていますが、いかにこの接続ということ、オープンということを有効性あらしめるものにするのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(池田唯一君)
お答え申し上げます。御指摘のオープンAPIというものは、フィンテック企業のみならず、金融機関にとりましても、フィンテック企業との連携、協働を進めることによりまして、創意工夫を生かして、ITの進展等の環境変化に積極的な対応を図っていくということを可能とするものだというふうに考えております。
こうした趣旨に鑑みますと、できるだけ多くの金融機関がオープンAPIを導入して、フィンテック企業と幅広く接続することが重要であると考えられようかと思います。
このため、今回の法律案では、金融機関に対しまして電子決済等代行業者等との連携及び協働に関する方針を策定、公表する、それから、御指摘のありましたように、併せて電子決済等代行業者との契約に関する基準の策定、公表を求めている。
そして、これも御指摘ございましたけれども、策定した基準を満たす電子決済等代行業者に対して不当に差別的な取扱いを行ってはならないという規定を設けさせていただいているところでございます。
これらの規定を実施していきますことによって、オープンAPI自体は御指摘のとおり努力義務という扱いにはなっていますが、これらの規定全体を実施していくことによりまして、銀行と電子決済等代行業者との適切な連携、協働が幅広く図られ、利用者保護及びイノベーションの推進につながっていくということを期待しているところでございますし、そうした状況に進むことをよく注視をしていきたいと考えているところでございます。
○中西健治君
オープンAPIに関しては、後から「いやあ、義務化しておけばよかった」というふうに言われないように、政省令などで細部をしっかり詰めていただきたいと思います。
あと、一つお伺いしたいんですけれども、今回はリテール金融、特に決済業務の要となっている銀行に関する制度の整備ということでありますけれども、容易に想像が付くのが、今後、消費者側から一つのアプリで、銀行だけじゃなくて、証券、保険、こうしたものに全てアクセスしたいと、こういうニーズが出てきて、それに対応するものというのが出てくるんだろうというふうに思います。
そうすると、この銀行法の改正だけではとどまらないということになるんじゃないかと思いますが、そちらについて今金融庁はどのように認識しているのかということをお伺いしたいと思います。
○政府参考人(池田唯一君)
御指摘のとおり、フィンテックの動きは今後も多様に進展していくことが予想されるところでありまして、そうした中で、ITを活用することで規制領域をまたがるサービスが登場、拡大していくということは十分考えられるところだというふうに考えております。
そうしたことを踏まえましたときに、法制の大きい方向として、より横断的な規制体系の整備というようなことが一つの重要な視点になるということは御指摘を、そうしたものと受け止めておるところでございます。
その上で、具体的にどのような制度設計にしていくかということにつきましては、イノベーションを阻害するようなものになってはいけないところでもありますので、サービスの実態や利用者保護の要請の度合い等を踏まえて、基本的にはリスクの程度に応じてきめ細かな手当てというものが必要になってくるのだと考えておるところでございます。
いずれにしても、今後、法規制の体系の在り方については幅広く勉強をしていきたいというふうに考えております。
○中西健治君
二年も三年も制度設計までに掛かるということになると、その間に世の中は全く先に動いていくということになりますから、今回、銀行法の改正と同じようなタイミングで次のことというのは考えておかなきゃいけないものではないかというふうに思います。
ですので、できる限り早めにこうしたものに対する横断的な対応ということもしていただきたいというふうに思います。
2.LEI(Legal Entity Identification)コードとマネーロンダリング
次に、本日取り上げたいのは、国際金融の中で日本が大きく出遅れてしまっているリーガル・エンティティー・アイデンティフィケーション、LEIコードと呼ばれるものであります。
これは取引主体識別コードという日本語で訳されていますが、これはどういうことかというと、リーマン・ショックの反省の一つに、それぞれが保有する金融資産そのもののリスク管理はできていても、取引相手先別のリスクの管理が不十分であったために、相手の破綻等の事象が及ぼす影響を金融機関自身や金融監督当局が迅速かつ正確に把握することができなかったということであります。
リーマンが破綻するときにうちはどれだけやられるんだということが分からないと、こういう問題であります。この反省に立って、このLEIというのが、海外でというか世界中で整備をされているという状況であります。
リスク管理の高度化ですとか、あと脱税やマネーロンダリング、テロ資金対策、さらには資本フロー情報のビッグデータとしての利用なども視野に入れて、今世界的にLEIの導入が進んでいますが、このLEI、まだなじみのない方も多いと思いますので、金融庁、概略を簡潔に説明していただけますでしょうか。
○政府参考人(森田宗男君)
お答え申し上げます。LEIとは、金融取引等を行う主体を識別するための国際的な番号でございまして、先生御指摘のとおり、今般の世界的な金融危機後、金融取引の実態を効率的、効果的に把握する目的から、2011年のG20 カンヌ・サミット首脳宣言により導入が合意され、利用が進められてきたものでございます。
LEIの導入によりまして、特に金融機関等が行うクロスボーダーでの取引の把握が容易になり、また法人ごとの取引量の集計が可能になる等、データの利便性と透明性の向上に寄与すると考えられますことから、世界各国でその利用が始まっております。
LEIは、我が国では東京証券取引所が2014年8月から金融機関等への付番を行っておりまして、金融機関等の申請に応じて、20桁の数字、アルファベットの組合せで構成される番号で、法人ごとに一つ付番をしているところでございます。
A)低い取得件数
○中西健治君
その説明のとおりなんです。G20で決められて、これはもう国際的に金融機関、そしてファンドなどは皆取得していきましょうと、こういうふうにされているものであります。
ところがなんです、グラフをお配りしていますけど、御覧いただきたいと思います。
日本のこのLEI取得状況というのは極めて今良くないと、取得件数も少ないという状況になっております。アメリカが118,515件に対して、日本は4,672件にとどまっております。
これはどういうことなのかということ、金融機関やファンドごとの取得状況などを確認しているのか、そしてどうしてこんなに低いレベルにとどまっているのか、金融庁にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(森田宗男君)
お答え申し上げます。御指摘のとおり、本邦金融機関の取得件数につきましては、グローバルな統計作成を開始いたしました2014年以降増加傾向にはございますけれども、2016年末には4,672件となっているものと承知しております。
東京証券取引所によりますと、この内訳につきましては、銀行58件、証券会社52件、保険会社45件、年金や投資信託といったファンド3,950件、その他567件となっているというふうに聞いております。
LEIの業態ごとの取得状況につきましては、例えば外国金融機関等とクロスボーダーの店頭デリバティブ取引等を行うなど、金融機関等の業務内容等に応じた必要性の有無によってばらつきが生じているものというふうに考えてございます。
○中西健治君
他国に比べてこれだけ取得率が低いということについては、どのように分析していますか。
○政府参考人(森田宗男君)
お答え申し上げます。確かに、金融取引の実態把握の強化というLEIの本来の趣旨に鑑みますと、我が国におきましても金融機関等に対してLEIの取得を促進していくことは重要であり、金融庁におきましても、これまでLEIの国際的な議論に関する説明会を金融業界向けに行うなど、LEIに対する理解の向上に努めてきたところでございます。
また、国際的にもLEIの利便性向上や利用促進等の観点から議論が行われているところでございまして、金融庁といたしましては、こうした国際的な議論に積極的に参画いたしますとともに、今後とも引き続きLEIの重要性等に対する金融業界の理解の向上に努め、更なる利用の促進に向けて取り組んでいきたいと、このように考えてございます。
○中西健治君
いや、国際的な議論に参加するのであれば、まず国内で取得率を高めるということをしなけりゃいけないんじゃないかと思います。
アメリカが取得件数が大きいのはリーマン・ショックの直接的な影響があったからだ、そんなような説明もあったりするんですが、見てください、二番目イタリアですよ。
こうしたヨーロッパの国々のみならず、ほかの国々も法整備というのは進んでいます。そして、これは、もうLEIを使用しなければいけないと、義務になっているという国がたくさんあるんです。
二枚目のA3の資料(世界の法律や規制の一覧表ですので、こちらには掲載していません)を御覧いただきたいと思いますけれども、米国やカナダ、EU、イギリス、こうしたところではたくさんの法律にもうLEIは書かれているんです。というのは、いろんな局面でLEIが必要ですよということがもう義務化されているということであります。
我が国の名前はこちらには出ておりません。アルゼンチンですとかイスラエルというのも、強制力は伴わないまでも法規制というのを行っております。この状態でいいのかということであります。
私がいろいろと金融機関など聞き取り調査をしますと、今お答えがあったとおり、真面目に取り組んでいるところもあるんです。融機関の中で真面目に取り組んでいるところもある。
けれども、いや、これはもう義務化されていないんだから日本じゃ必要ないよと、こういうようなことを公言している金融機関というところもあります。それでいいのかということです。
金融庁は今プリンシプルベースの金融行政というのに変わってきていると思います。以前は重箱の隅をつつくというふうに言われていましたけど、今はプリンシプル行政、プリンシプルに基づいた監督ということでありますけど、このプリンシプルを守らない人がいるんです。
プリンシプルを理解していない金融機関があるということであります。そうしたところに対してどうすべきなのかということが問われてくるんじゃないかというふうに思います。
私が懸念していることは2つなんです。
a)ガラパゴス化する日本の金融市場
1つは、こうしたLEIを取得していない主体に対しては、世界の主要な金融機関及び中央銀行が取引をするなと、こういうことを言い出しています、そういう傾向が出てきています。
そうすると、LEIを取っていない日本の金融機関、ファンドなどは、いや、それで取引してくれるところと、言わば村社会の取引だけを行っていく、世界から取り残されていく、こうしたことが起こり得るでしょうというのが1点です。
b)マネーロンダリングに甘い国?
あともう1点、もう1点は、これは本人確認に関わることでありますから、数年前に我が国はFATFからマネーロンダリングや本人確認が弱いという先進国の中では異例の指摘をされてしまいました。
それ、銀行性善説に立っている部分もきっとあったのだろうというふうに思いますけれども、やはり制度化をしっかりしているかどうかということで見られているということなんじゃないかと思います。
まさに、本人確認に関わるこのLEI、次のFATFの第4次審査というのが2019年にありますけれども、それに直接つながるかどうか分かりません。
しかし、また日本はマネーロンダリングやこうした脱税などについて審査が厳しくないと、制度的に確立されていないと、こういう指摘を受ける可能性もあり得るんじゃないかというふうに思っています。
ですので、これは早めに手当てをしていくということが、法規制なのかそれとも指導なのか、いろいろあり得ると思います。
しかし、この今の取得率では全然話にならないという状況なんじゃないかと思いますが、済みません、大臣にこれを、今までの話を聞いてお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(麻生太郎君)
これ、カンヌの、カンヌでしたかね、たしかあのときのサミットで、これは20桁の番号を入れてこういったのをやるという話が出たんだと記憶をしますけれども、あのとき以来今日まで、今言われたような状況になっておりますのはもう間違いないんですが、
いずれにいたしましても、こういったものをやらないと、これ国内的にはいわゆる銀行の信用が高いものですから別に何ということないということになっていたんですけど、いわゆるこれ、マネロンの話が入ってきますので、こちらの方からもこれは結構いろんな話を使われるだろうなと私らもそう思いますので、
このリーガル・エンティティー・アイデンティファイヤーというような、これちょっと、何でそんなものが必要なのかと、これ必ず聞かれますから。
いや、これ、信用できる人たちばっかり相手にしているんじゃねえんだと、そうじゃないのがいっぱいいるからそれとの間も、ときを考えて、こちらの人の信用がないからこちらの信用もなくなった、結果としてクレジット、クレジットというのは、やっている人の信用もなくなるというのは、割食うのはこっちじゃないかと、だからちゃんとやってもらおうという話なんですけれども。
透明性が向上するというのは結構大きなことなので、そういった意味では、これは私どもは、このいわゆるLEIというものが金融取引の透明化に資する部分も極めて大きいというので、これマネロン対策上も大きいんだという点から、私どもとしてはこの利用促進というものを更にちょっとしっかり進めさせていただこうと、基本的にはそう思っております。
その上で全然数字が上がらないということになるのであれば、それはその段階でもう一回考えなきゃいかぬことになろうかと思います。
○中西健治君
是非これは厳しく前に進めていってもらいたいと思います。
東証が代行していますけど、このLEI取るの、料金としては2万円ですから、ちゃんとやるかやらないかという話だと思いますので、やっていくようにお願いしたいと思います。
私の質問終わります。ありがとうございました。