中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2015年05月14日 (木)
5月12日参議院財政金融委員会において、政策投資銀行における危機対応業務について質問しました。
政策投資銀行とは、大企業・中堅企業向けの融資を目的として設立された政府系金融機関のことであり、政府が全額出資しております。
政策投資銀行は、完全民営化の方向が決まっているのですが、リーマンショック・東日本大震災による金融秩序の混乱への対応(危機対応)のために完全民営化を先延ばしにしてきたまま、現在に至ります。
今回の法改正は、民間金融機関が危機対応業務を担えるようになるまでの「当分の間」政府に3分の1超の株式保有を義務付ける、というものですが、「当分の間」の見通しが立たず、完全民営化の方針が骨抜きにされるおそれがあります。
そもそも、危機対応業務は、民間金融機関から敬遠されています。理由は、危機対応業務はリスクが大きく、民間金融機関では担いきれないと受け止められているから、と思われます。しかし、政策投資銀行の危機対応業務の実績を調べてみると、異なる側面が浮かび上がって参ります。
資料②(委員会配布資料に即して付番しています)は政策投資銀行の危機対応業務と通常業務及び他の業態の金融機関における不良債権比率を比較したものですが、危機対応業務の不良債権比率(0.11%)は、主要行(1.28%)や同じ政策投資銀行の通常業務(1.31%)よりも低いという結果が認められます。
資料③は、2014年3月までの危機対応業務における融資と法的整理に至った融資の累積額を整理したものですが、これによると5兆3911億円弱の融資を行うに当たり、5兆3877億円は政策金融公庫からの借り入れで賄い、政策投資銀行の自己資金は34億円だけであったことが分かります。また、法的整理に至った776億円のうち、524億円は日本政策金融公庫から補填を受け、現実に回収不能となった金額は252億円にとどまります。
そのため、危機対応業務の実績からは、不良債権比率は極めて低く、自己資金もわずかで行うことができ、融資先が法的整理に至っても損害の補てんを受けることができる、という実態が浮かび上がってきます。
ところが、このような情報は基本的に開示されておりません。政策投資銀行が行うディスクロージャーは、あくまで危機対応業務と通常業務を併せた財務状況の開示に留まります。これでは、危機対応業務の実態が分からず、民間金融機関が参入を思いとどまることが容易に想像されます。
そこで、麻生財務大臣に対して、「政策投資銀行の危機対応業務を切り出す形で、情報開示を行うべきではないか」と提案いたしました。
麻生大臣からは、「政投銀等とよく調整しながら、今後とも財務省として開示ができる範囲、開示という方向で検討していきたいとい考えております。」とのご答弁をいただきました。
民間金融機関による危機対応業務への参入を促すのであれば、せめてそのための判断材料は用意すべきではないでしょうか。今後とも、完全民営化の方向性を常にチェックして参りたいと思います。
なお、情報開示の実効性を高めるべく、以下の内容を附帯決議に加えるように提案し、実際に附帯決議として採択されました。
「日本政策投資銀行の完全民営化に向け民間金融機関による危機対応業務への参入を促すため、これまでの危機対応業務に基づく貸付債権の状況などの開示を促すこと。」