中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2016年11月11日 (金)
11/10(木)の財政金融委員会では、「米大統領選挙後の日本経済・世界経済」、「消費税再引き上げへ向けての経済の好循環」、「相続税、賃貸ビジネス及び金融機関の健全性」について取り上げました。
米大統領選挙後の日本経済・世界経済
米大統領選挙直後の財政金融委員会ということで、まず麻生財務大臣にその影響についておうかがいしました。
新大統領の話題ばかりが報じられている中で、「上下両院とも共和党が多数となり、ホワイトハウスとのねじれ現象がなくなった」とのご指摘がありました。たしかに、これは大きなパワーバランスの変化です。今後のスタッフの陣容などについても注視していきたいと思います。
(1)保護主義的傾向について
米大統領選に限らず、先日のブレグジット(イギリスのEU離脱)などからも保護主義的なにおいが感じられました。そこで「国を閉ざそうとする誘惑に駆られる傾向が世界的に強まっている」ことへの懸念を表明したところ、麻生財務大臣から「日本は自由貿易を通じて弱小国、零細国でも極めて大きな経済力を有することになり得ることを証明した数少ない国の一つ。引き続き引っ張っていく見識なり矜持を持って臨むことが必要」との答弁がありました。
(2)通貨政策
大統領選の期間中に、両候補とも為替に関していわゆる「通貨戦争的な姿勢」を示していました。そこで、「我が国は、G7各国の共通認識である『為替の水準は、自由な市場において決定される』という原則を堅持する方針に変わりはないか?」という点をおうかがいしました。
麻生財務大臣からは、「通貨の競争的な切り下げは回避する」「競争力のために為替レートを目標とはしない」との大原則に加え、「政府は極力手を出すべきではない。過度の変動には各国が協調してあたらねばならない」との答弁がありました。この部分は、日本経済新聞(11月10日夕刊)に「為替介入は非常時のみ」として掲載されています。
(3)トランプ次期米大統領について
「直接的な言及は避ける」としながらも、麻生財務大臣は「日本に関する過去の発言について問われた時、サインをしながらアイ・ラブ・ジャパンと4回繰り返したらこの質問は消えた。予算委員会もアイ・ラブ・ジャパンで通れば、、」などと笑いを誘いながら、「候補者の時と大統領とではちがう」という認識を示していました。
消費税率再引き上げへ向けての経済の好循環について
(1)賃上げの滞り
消費が芳しくない状態で、消費税率を引き上げることが経済、特に内需に打撃を与えることは明らかです。従って、消費税率の再引き上げの環境を整える意味でも、個人消費を喚起するために賃上げが必要です。
しかし、有効求人倍率が全都道府県で1を超えるなど労働市場の状況が明らかに好転し、企業業績も上がり賃上げに必要なマクロ経済環境が整っているのに、ミクロ面を受け持つ企業部門がデフレマインドに囚われてしまい、その最初の一歩が踏み出せていません。
3月の当委員会でも指摘したのですが、企業が手元に現金を積み上げるばかりで、労使ともに賃上げに消極的というのでは困ってしまいます。この点に関する認識をおうかがいしました。
麻生財務大臣からは、冒頭「これは私にとって最大の関心事に近い」とした上で、「法人税を下げたのに、配当も賃金も設備投資も増やさず貯め込んでいる。リーマンショック後の賃金の伸び方は、日本が一番低い。働いている人の取り分を増やすべき」との答弁がありました。
(2)企業の社会的責任としての賃上げ
日本は自由主義経済国ですから、政府が企業の賃金に口を出すことはできません。しかし、手をこまねいていては、2年半などすぐに経ってしまいます。何らかの賃上げの目安のようなものを提示し、「それが実現できないのならば、コーポレートガバナンス・コードの精神にのっとって説明を求める」という形をとってはどうか?と提案しました。
麻生財務大臣は「基本的に官が介入する話ではない」としながらも、「政労使会議で『労働組合側は職場放棄されるんですか?』とまでいったのだが、全然動かない。コーポレートガバナンス・コードでやるかどうかはとにかく、なにか考えなければならない。労働分配率の引き上げを促すのもひとつのアイデアかもしれない」との答弁がありました。
相続税、賃貸ビジネス及び金融機関の健全性について
(1)「アパート空室率急上昇」に関する所見
日経新聞の「アパート空室率悪化、泣くオーナー」という記事(9月30日付)で、「首都圏では神奈川県のアパートの空室率が最も高く、37%と過去最高を記録している」と報じられショックを受けたことから、「不動産、特に賃貸業向けの融資」「賃貸ビジネスの健全性」「相続税対策の問題点」といった点についての質疑を行ないました。
まずこのグラフをご覧になったところで、「相続税対策で色々なものがあるとは聞いていたが、これほど数字が急激に上がっているとは知らなかった」との麻生金融担当大臣の答弁がありました。
さらに「3月に『貸す側のリスク』として取り上げたが、もはや地域金融機関のリスク管理の問題のレベルを超えてきている。将来的に金融制度を損なう種が撒かれているのではないか」「30年家賃が保証されていると誤認して、借金までして貸家を建てて返済に困っている事態が発生しているのではないか」という問いに対しては、遠藤監督局長から「借りる側が将来的なビジネスリスクまできちん理解した上での貸出を行なうといった、(金融庁の目指す)顧客本位の金融サービスを促す」と3月につづき踏み込んだ答弁がありました。
(2)相続税対策が歪める資産配分
2015年から急激に空室率が上昇した背景には、「相続税対策」が考えられます。
株や現金なら時価の100%で評価されるのに対して、不動産特に賃貸不動産にすると驚くほど評価額が下がり、さらに借金をすると大幅な相続税の節税が可能です。
これは一人一人としては、合理的な行動です。しかし、空き家問題が懸念されている中でさらに大量の貸家が建てられ、早くも空室に悩むというのは「合成の誤謬」が起きていると懸念せざるを得ません。
この点に関する質問に対しては、麻生財務大臣から「制度を利用して相続税対策をやりたいのは分かる。また問題が起きているとの報道は承知している。実態を精査する」との答弁がありました。
<<保険の窓販手数料の開示>>
最後に、5月に指摘した「金融機関の販売する保険の手数料が、非常に高いにもかかわらず開示されていない」という問題に対して、早速10月1日から多くの金融機関で開示が始まったことに関して、金融庁の取り組みを評価させていただく旨をお伝えして質問を終了しました。
参議院議員 中西けんじ(神奈川県選出)