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2018年09月21日 (金)

出口なき覇権争い 米の目的は中国経済の弱体化

貿易戦争は覇権争いの一側面

「米中貿易戦争」という言葉がよく使われるが、貿易戦争というよりも覇権争いが根底にある。覇権争いが貿易という分野に出てきている、と理解したほうがいい。

 貿易戦争ならば、具体的な数値目標を提示し、改善されれば制裁を中止するはずだ。ところが米国は具体的な要求をしない。中国からすれば何を改善すればよいのかわからない状況で、関税があがる、対象品目は増える。ゴールが見えない。

 

強まる中国脅威論

 背景には、中国の台頭に対する米国の警戒心が急速に高まっていることがある。米国が中国をたたきにきている、とみれば、貿易赤字の問題というよりもむしろ、中国の製造業などの力を弱体化させることが目的になっていると考えた方がわかりやすい。

  米中貿易戦争はトランプ流の一つと見られているが、共和党だけではなく民主党内でも中国脅威論は強まっている。関税引き上げに対しては製造業を中心に懸念する声が米国にもあるが、それでも米国内の支持は比較的高い。中国を今のうちにたたいておくべきだという考え方が広まっているためだろう。

  一方で、中国はこの「貿易戦争」には勝てない。中国でしか作れないものがあれば、関税率を引き上げることでかえって米国が追い込まれる可能性もあるが、そうではない。

  さらに中国には弱みがある。産業規制や資本規制など中国は自国保護政策のデパートのようなところだ。自国保護政策に問題があることは彼ら自身は十分に分かっているが、そのことが成長の前提になっており、今の段階ではやめられない。

  中国が米国に具体的な市場改善策を示せば、理屈の上ではこの貿易戦争を終わらせることができるだろう。しかし、現在の中国にその力はない。

 

敵が必要なトランプ氏

  さらにいえば、はたして米国は解決を望んでいるのか。

  トランプ米大統領のやり方は、外に敵を作ってそこに国内の不満を向けることで一貫している。もともと、メキシコ移民が仕事を奪っている、国境に壁を作るんだ、と言って大統領になった。

  その「メキシコ」が今は中国になっている、と見ることができる。中国は急速に成長しているため、脅威としては見えやすい。これが欧州連合(EU)ではやはり、響かない。

  身もふたもない話だが、トランプ氏からすれば、政権運営には敵が必要だ。米中間選挙が終われば、という見方もあるが、次は再選がある。再選のためには中国を敵にしておくほうが都合が良いのかもしれない。

  そうした観点で見ると、この「戦争」には出口がない。どこかで協議が進んで解決策が見いだされるのではないかという観測もあるが、簡単には終わりそうにないと思っている。

  一方、日本も注意しておくべきことがある。米国から見るとメキシコとは北米自由貿易協定(NAFTA)で合意した。カナダも協議が進んでいる。EUとの間でも関税引き下げに関する協議が始まる。韓国は自由貿易協定(FTA)を改定した。

  すると米国から見ると通商問題で残っているのは日本だけ、と見える。日米経済対話の枠組みはあるが、実質的な話はしていない。日本への要求が今後、強まってくる可能性がある。そこは備えておく必要がある。

  トランプ氏は2国間交渉を重視し、日本にも迫ってくる。しかし、関税貿易一般協定(GATT)、世界貿易機関(WTO)といった多国間の枠組みは長年の知恵に基づくものだ。

  日本としては、米中の争いに巻き込まれても何もいいことはない。別の次元で考え、アジアで中国も可能な限り組み込みながら、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)をはじめとした多国間の枠組みを広げていくしかない。

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