中西けんじの国政報告をはじめ、所属している各委員会での議論内容などについてご報告させていただきます。
2018年03月23日 (金)
昨日の法務委員会の動画(40分)です。
真に保護すべき難民の救済、適切な外国人材の受け入れ方法、抜本的な所有者不明土地問題の解決に向けた取り組み、司法外交のあり方などを取り上げました。
○中西健治君 おはようございます。自由民主党の中西健治です。
本日は、上川大臣の所信に関しまして質疑をさせていただきます。大臣の所信の中には、外国人に関する記述が多数ありました。外国人の人権や難民認定、入国審査、日本人と外国人夫婦の離婚、外国人材受入れなど、多数の箇所で言及をされていましたので、まずは、日本にいる又はこれから日本に来る外国人に関する政府の対応方針について伺っていきたいと考えております。
1.難民問題
(1)現状認識
最初に、難民問題についてお伺いしたいと思います。
昨年の難民認定申請数は一万九千人を超えて過去最高となりました。そんな中で、難民認定された人数は二十人にとどまっているということであります。そのため、我が国は難民の受入れ数が少ないと、こういう指摘が時々行われております。
また、テレビの映像などでは、難民申請をしたのになかなか審査すらしてもらえず、苦しい思いをしているなどと訴える人の姿などが報じられており、我が国は難民に冷たいと思っている人も少なくないのではないかというふうに思っています。
ただ、そのようなエピソードではなくて、エビデンスに基づいて問題点を認識する姿勢が重要なのではないかと考えております。現状の認識について、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 所信についての初めての御質問ということでございます。
難民についての考え方ということでございます。我が国におきましては、難民、避難民の流入が国際問題化している欧州等の状況とは異なりまして、シリア、アフガニスタン、イラクのような大量の難民、避難民を生じさせる国の出身者からの難民認定申請が少ないという状況にございます。
他方、難民認定申請によって庇護を求めることが主眼ではなく、我が国での専ら就労等を目的とすると思われるような濫用あるいは誤用的な申請が相当数見受けられるという状況でございます。
そもそも難民認定というのは、難民条約等に規定する難民の定義に申請者が該当するか否かにつきまして判断をするということでありまして、欧州等とのこのような状況の違い、このことが難民認定数の違いの背景にあるというふうに考えております。
このような状況の中で、法務省におきまして、申請者が難民条約上の難民に該当するか否かにつきまして、個別に審査を尽くした上で難民と認定すべき者を適正に認定しておりまして、結果として難民認定数が、平成二十九年、速報値におきまして二十名ということでございます。個別に判断した結果ということでございます。
(2)平成27年制度改正の効果
○中西健治君 今、大臣が、濫用、誤用的な申請が相当数見受けられると、こういうお話でした。こうした濫用、誤用的な難民認定申請に対処をしなければいけないということで、法務省では、平成二十七年九月に難民認定制度の運用の見直しを行ったというふうに承知しておりますけれども、その効果についてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘のとおり、法務省におきましては、濫用、誤用的な難民認定申請に対処するため、平成二十七年九月に難民認定制度の運用を見直し、我が国での就労等を目的とした難民認定申請を繰り返すような外国人には就労や在留を認めない措置をとってきたところでございます。これらの措置は原則として再申請者を対象とするものでありまして、難民認定申請数が急増する中でも再申請数が横ばいとなっているという状況であることから、再申請の抑制には一定程度の効果を発揮したものというふうに認識をしております。
しかしながら、依然として初めての難民認定申請する者による申請が急増しているということでございます。その結果、未処理数が急増し、処理期間、これも長期化をしている状況でございまして、真の難民の迅速な保護に支障が生じる事態となっていると認識しております。
(3)真に保護すべき難民の救済に向けて
○中西健治君 二十七年九月に行った見直しによって、再認定、これの申請は横ばいになったと、一定の効果を上げているということでありましたが、大臣おっしゃられたとおり、新規の申請数というのは依然として急増しているというこの問題は解決されていないということのようであります。
ちょっと例を見てみたんですが、シリア人の難民認定申請、これに対する平均処理期間、これを見てみましたら、平成二十九年では難民認定案件で平均二百二十日間掛かっていると、人道配慮による在留特別許可案件では二百三十六・八日掛かっていると。
これは、真に救済が必要な方ということでいうと時間が随分掛かっているなと、こういう印象を持たざるを得ないということだと思いますけれども、このシリア人のような真の難民の迅速な保護に向けてどのような措置を考えておられるか、お願いいたします。
○国務大臣(上川陽子君) 今委員から御指摘ありました、平均処理期間についての御指摘がございました。シリア人の案件を含めまして、真の難民の迅速な保護に支障が生じる事態になっているというふうに思っております。
そこで、法務省におきましては、真の難民の迅速な保護を図るため、難民認定制度の運用の更なる見直しを行いまして、本年一月十五日から実施をしているところでございます。
具体的に申し上げますと、我が国に正規に在留する者が難民認定申請をした場合に、難民である可能性が高い申請者など真に庇護が必要な者に対しましては、そのことが判明次第就労を認めるということによりまして、これまでより早期に生活の安定が図れるようにしたところでございます。
他方、借金問題のような難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を申し立てるなど、濫用、誤用的な申請を行っている申請者に対しましては在留を認めないという措置をとりまして、また、失踪した技能実習生等、本来の在留資格に該当する活動を行わなくなった後に難民認定をした者などに対しましては就労を認めない措置をとり、これまでよりも厳格な対応を行うこととしたところでございます。
今回の見直しによりまして、濫用、誤用的な申請を抑制し、そして難民認定の迅速適正化を推進し、まさに真に庇護を必要とする者への迅速な保護を図ってまいりたいというふうに考えております。
2.外国人材の受け入れ
(1)現状について
○中西健治君 不要な人に対して時間を割くがゆえに本当に必要な人に対して時間を割けないということになってしまっては本末転倒のようなことにもなってしまいますので、今回の見直しによって、一月に行われた見直しですので、効果は今の時点ではまだはっきり分からないということかもしれませんけれども、しっかりと救済すべき人を迅速に救済するということをしていただきたいと思います。
続きまして、やはり外国人関係で、外国人材の受入れについてお伺いしたいと思います。これは少し整理していきたいと、こういうふうに思っているんですが、我が国における外国人労働者全体の現状についてはどのようなカテゴリーの者がそれぞれ何人ぐらいいるのか、これちょっと大きな数字についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。外国人労働者全体の現状についてのお尋ねでございますが、外国人の雇用に関しましては、雇用対策法におきまして、事業主が新たに外国人を雇い入れた場合などにつきまして、厚生労働相に届け出なければならないことといたしております。
厚生労働省ではこの届出を集計し、外国人労働者数として公表しているものと承知しております。
平成二十九年十月末の外国人労働者数でございますが、総数で約百二十八万人となっております。前年に比べまして約一八%の増加となっております。その主な内訳でございますが、定住者、永住者など身分に基づく在留資格で在留している者が約四十六万人で三六%、留学生のアルバイトなどの資格外活動が約三十万人で二三%、技能実習生が約二十六万人で二〇%、就労目的の在留資格で在留している者が約二十四万人で一九%となっております。
(2)不適正事案
○中西健治君 そうしますと、今のお話ですと、外国人の労働者数の総数は百二十八万人であると、そのうち技能実習生が二十六万人、留学生のアルバイトが三十万人、この二つのカテゴリーで五十六万人ということですから半分弱というところだということだと思いますが、この技能実習生及び留学生のこのアルバイトというのがやはり問題が相当発生しているのではないかということが言われているところであります。
技能実習については失踪ですとか人権侵害の問題、留学生についてはその資格外活動許可で認められた時間を超えて働いているというような不適正事案が生じているという、そうした懸念が指摘されているところであります。
こうした懸念について、どれだけ、どういう認識を持っているのかということと、あわせて、この対策、もう随分前からこれ指摘されていることでありますので、どのような対策を打っていこうとしているのか、これについてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。ただいま御指摘ございましたように、技能実習生の失踪事案でございますとか人権侵害等の不正行為が依然として発生しているという状況が認められるところでございまして、この点につきましては入国管理局としても重く受け止めているところでございます。
まず技能実習生の関係でございますが、技能実習法におきましては、監理団体の許可制や技能実習計画の認定制を導入いたしまして、団体や事業者を直接規制することができる枠組みを構築しておりますほか、技能実習生に対する人権侵害の禁止規定や罰則、技能実習生からの相談受付体制の整備等を規定しておるところでございまして、制度の適正化を図っているところでございます。
次に、留学生に関してでございますが、留学生に対しましては、事前に許可を得た上で、学業に支障のない範囲、すなわち週に二十八時間以内、夏休みなどの長期休業期間におきましては一日八時間以内の資格外活動を認めているところでございます。
多くの留学生がこの資格外活動許可を取得して就労しているものと認識いたしております。
他方、留学生が就労時間の制限を超えて稼働しているとの報道等がございまして、実際にそのような学生も一部存在するということも事実であると認識しております。
法務省といたしましては、個々の外国人の入国、在留申請について厳格に対応するとともに、必要に応じまして留学生を受け入れている教育機関や留学生の就労先に対する調査などを行うなどによりまして、教育機関が就労目的の外国人の偽装滞在に利用されないよう努めてまいりたいと考えております。
(3)在留資格の在り方
○中西健治君 就労を目的とする在留資格の在り方、このままでいいのかどうかということについて、経済財政諮問会議でも総理から御発言があって、そして、今後ちょっと見直しをしていくと、一定の前提の下に見直しをしていくというようなこと、これが政府の方針となっているというふうに伺っておりますけれども、そこら辺の状況を知りたいと、お答えいただきたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 先月の二月の二十日に経済財政諮問会議が開催をされました。安倍総理大臣から、現在深刻な人手不足が生じており、専門的、技術的分野における外国人受入れの制度の在り方についても検討する必要があるとし、官房長官及び法務大臣であります私に対しまして、在留期間の上限を設定し、家族の帯同は認めないといった前提条件の下、真に必要な分野に着目しつつ、制度改正の具体的な検討を早急に開始するよう指示があったところでございます。
この御指示を踏まえまして、二月二十三日、内閣官房とともに、内閣官房副長官補を議長とする関係省庁による専門的・技術的分野における外国人材の受入れに関するタスクフォースを設置いたしました。今後、タスクフォースにおきまして、主要業種ごとに人手不足等に係る実態把握を行った上で、受入れに係る具体的な制度設計について関係省庁とともに検討を進め、今年の夏に政府として基本的な方向性について結論を示すことになっております。
○中西健治君 人手不足の世の中になっていて、しかも業種によっては大変深刻だということでありますので、その中で一定の条件を付した上で外国人材を活用させていただく、これは必要なことではないかというふうに思いますので、このタスクフォースの提言というのをしっかり見ていきたいと、こういうふうに思っております。
3.所有者不明土地問題
(1)実態
外国人に関しては取りあえずちょっとここまでにさせていただいて、続きまして、所有者不明土地問題についてお伺いをしたいと思います。
これ、大きな問題となっているということであります。少子高齢化、これは、取りも直さず、大量相続社会になってきているということでありますので、今後ますます深刻化していく問題であるという認識を多くの人が持っているだろうというふうに思います。
この所有者の把握が困難な所有者不明土地への対応というのは、公共事業用地の取得ですとか農地の集約化、森林の適正な管理などで、やはり大きな課題となってきております。こうした大きな課題に対処するためには、今実態はどうなっているのか、これについてまずお聞きしたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。所有者不明土地の問題の要因の一つといたしまして、相続登記が未了のまま放置されているとの指摘があることも踏まえまして、法務省では、不動産登記簿において相続登記がされていない土地の調査を実施しまして、その結果を昨年六月に公表しております。
具体的には、約十万筆の土地につきまして、所有権の登記が受け付けられた年月日を確認して、そこからの経過年数を調査したものでございます。
調査の結果、最後に所有権の登記がされてから五十年以上経過しているものが、大都市においては六・六%、中小都市、中山間地域におきましては二六・六%となっておりまして、これらの土地に関しては所有者が死亡して相続登記が未了となっているおそれがあるものと思われます。
(2)これまでの取り組み(相続登記の推進)
○中西健治君 ただいまの答弁にもありましたけれども、相続登記がされないまま放置されているということが所有者不明土地問題の大きな要因の一つとなっていることは間違いないだろうと思います。
五十年間登記がされていないということであれば、当然それは所有者が不明と、亡くなっている可能性が非常に高いということになるんだろうというふうに思います。
その中で、こうした相続登記をまずはしてもらうということ、これをやっていかなきゃいけないということになるかと思いますけれども、この相続登記の促進に関しては、これまでどのような取組をされているんでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。ただいま委員御指摘のとおり、所有者不明土地の発生を抑制するためには相続登記を促進することが重要であると考えております。
法務省では、相続登記を促進するために各種の取組を行っているところでございますが、主なものといたしましては、登記の専門家団体と連携の上、相続登記促進のための広報用リーフレットを作成いたしまして、死亡届の受理時にこれを配付するよう各法務局、地方法務局から全国の市町村に対して協力依頼を行っております。
現在までに全国の約七割を超える市町村に協力をいただいている状況でございます。また、昨年五月には、法定相続情報証明制度を新たに創設いたしました。この制度は、相続人の相続手続における手続的な負担を軽減し、またこの制度を利用する相続人に対して相続登記を直接的に促すきっかけになるものでございます。
これらの取組によりまして、引き続き相続登記の促進に努めてまいりたいと考えております。
(3)これまでの取り組み(市街地などで見られる共有者の問題)
○中西健治君 所有者不明土地問題といいますと、森林や原野などで生じているイメージがありますけれども、先ほどの法務省の調査でいえば、大都市においても六・六%の土地が五十年以上登記が変更されていないということでありますので、大都市でも大きな問題となっているということではないかと思います。
私もテレビのニュースなどで見ましたけれども、道路がまっすぐ新しい道路が造れないと、土地所有者が分からないのでもう曲がって造るしかないと、何か蛇道路というようなものも都内の住宅街の中でもあったりというようなこともりますので、ここら辺、大きな課題となっているということではないかと思います。
複数の者が共有する私道に関しても、この私道の補修工事を行う際に、民法の共有物の保存管理等の解釈が不明確であることから、事実上共有者全員の同意を得る運用がされているため、共有者の一部が所在不明である事案について工事を実施することができず支障が生じていると、こういう指摘もなされているところであります。
こうした課題についての法務省の取組状況、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) ただいまの委員の御指摘のとおり、複数の者が共有する私道につきまして必要な補修工事等を行う場合に、今事実上共有者全員の同意を得る運用がされており、共有者の所在を把握することが困難な事案において工事等の実施に支障が生じているとの指摘がされております。
こうした指摘を踏まえまして、法務省では、民法等において同意を得ることが求められる者の範囲を明確化するために、関係省庁の協力を得まして、昨年八月に共有私道の保存・管理等に関する事例研究会を設置いたしました。
この研究会でございますが、検討の結果、本年一月に報告書を取りまとめまして、共有私道の工事における適用法令の関係を明らかにするとともに、例えば公共下水管を共有私道に新設する事例については共有者の持分に応じた過半数の同意で足りるとするなど、工事に当たっての対処方法を明らかにしております。
この報告書が所有者不明の私道につき生じている問題を解決する際に参考とされ、私道整備の円滑化に資するものとなるように期待しているところでございます。
(4)登記に関する税負担の問題
○中西健治君 こちらも本年一月にまとめられたということでありますので、効果はこれからということだと思いますけれども、是非とも、まずは私道に関して円滑化に資すれればいいというふうに思っております。
相続登記が未了となっている土地の発生要因の一つとして、相続登記に係る税の負担ということも指摘されているところであります。相続登記の促進のためには、この相続登記の手続に係る税の負担を軽減することも一つの方策として重要なのではないかというふうに考えていますけれども、この点についても新たな取組がされているというふうに考えておりますけれども、こちらの方を御答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。委員の御指摘のとおり、相続登記の促進のためには、相続登記の手続に係る税の負担を軽減して相続登記をしやすくすることが重要であると考えております。
そこで、法務省におきましては、平成三十年度税制改正要望におきまして、相続登記の促進のための登録免許税の特例を新設することを要望いたしましたところ、平成三十年度税制改正の大綱におきまして二つの観点からの土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置が盛り込まれております。
一つは、既に相続登記が放置されているおそれのある土地への対応の観点から、例えば二次相続が発生している土地について、その一次相続についての相続登記の登録免許税を免除、免税するというものでございます。
もう一つは、今後相続登記が放置されるおそれのある土地への対応という観点から、一定の要件を満たします資産価値が低い土地についての相続登記の登録免許税を免税するというものでございます。いずれも平成三十三年三月三十一日までの期間適用されるというものでございます。
これらの登録免許税を免除する特例を設けるための法案につきましては、現在国会に提出されているものと承知しております。
(5)税負担免除特例(周知徹底を)
○中西健治君 まさに、この登録免許税の軽減措置については今税制改正で国会で議論されているというものでありますけれども、この特例を設ける法案が成立した場合、集中的に登記を促していこうと、期間限定でやっていこうという趣旨だというふうに伺っておりますので、しっかりこの周知をしなきゃいけないということになるかと思いますが、これはどのように行っていくのか、お伺いいたしたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。委員の御指摘のとおり、国会での審議を経ましてこの登録免許税を免税する特例を設ける法案が成立した暁には、その周知広報に最大限努めるとともに、この特例を積極的に活用していただき、法定相続情報証明制度を始めとしますほかの取組とも相まって、相続登記の促進についてより一層拍車を掛けてまいりたいと考えております。
(6)所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案
○中西健治君 制度はつくったけれども使われないということでは大変もったいないということになりますから、これは期間限定、積極的な周知をお願いしたいと思います。
この所有者不明土地問題、これに対応するために、これまで法務省も幾つかの施策を講じてきているということを今御説明いただいたとおりありますけれども、この問題、複雑な原因が絡み合う大変難しい問題であるということだと思います。現行法の枠内で収まり切らないものが随分あるということなんじゃないかと思います。
今回、国土交通省とともに法務省が新たな法案を提出したということでありますけれども、この法案、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案ということですけれども、これはどういう内容なのか、法務省関連のところ、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。委員の御指摘のとおり、法務省といたしましては、国土交通省と一体となりまして、この通常国会に所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案を提出したところでございます。
この法案では、法務省関連の制度として、まず一つは、登記官が、長期間相続登記等がされていない土地につきまして、その旨を登記簿に記録するとともに、相続人等の所有権の登記名義人となり得る者に対して登記手続を直接的に促すための不動産登記法の特例を設けているところでございます。
また、もう一点でございますが、所有者不明土地の適切な管理のために、地方公共団体の長等に財産管理人の選任の申立て権を付与すると、こういった民法の特例も設けているところでございます。
(7)抜本的な解決に向けて
○中西健治君 今回は国交省と共同で法案を提出しているということでありますけれども、この国交省の所管部分、公共事業を行いやすくするというようなことも含まれておりまして、全体としては大きな前進になるということなのではないかというふうに思いますけれども、今後に向けてのこの抜本的な解決ということに関しては、まだまだ考えていかなきゃいけないことがあるということではないかと思います。
国や自治体が持つ土地情報の一元化ですとか、土地所有者の情報を円滑に把握する仕組みの構築ですとか、あと相続登記の義務化ですとか、さらに、土地所有権を放棄できるのかどうかですとか、こうした点につきまして、登記制度、土地所有権の在り方の根本に立ち返った議論と、これをしていかなければいけないということではないかと思います。
政府としてやっていこうとしていること、この問題について抜本的な対策、解決、これについて考えていることを教えていただきたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘のとおりでございますが、所有者不明土地問題への抜本的解決に向けての対応ということで、この重要性につきましては、いろんな視点からこれからも取り組んでいかなければならないと思っております。
御指摘の土地所有者の情報、これを円滑に把握する仕組み、この構築は大変重要であるというふうに考えております。本年一月十九日に開催されました所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議におきましても、中期的な課題といたしまして、例えば個人、法人の番号システム等を利用して土地所有者情報を円滑に把握し、行政機関互で共有する仕組みを関係各省において検討するとされたところでございます。
法務省といたしましては、不動産登記制度及び戸籍制度を所管をしているものでございまして、たとえば登記簿と相続人を把握することのできる戸籍簿との連携など、土地所有者の情報を円滑に把握する仕組みの構築につきまして、総務省、農林水産省等の関係省庁と連携をしながら検討してまいりたいというふうに考えております。
また、相続登記の義務化の是非や土地所有権の放棄の可否等の登記制度、土地所有権の在り方等についての検討ということでございますが、現在、平成三十年度中の法制審議会への諮問を目指しまして、研究会におきまして鋭意検討を進めているところでございます。
所有者不明土地問題への対応における法務省の役割は極めて重要なものであるというふうに認識しておりまして、その解消に向けまして、関係省庁とも連携をして、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○中西健治君 抜本的解決というのは大変重たいテーマも含まれていますけれども、この所有者不明土地問題は拡大していくということは避けていかなければいけませんし、当然解消の方向に向かわせなければいけないものですから、この抜本的な解決、是非進めていっていただきたいと思います。
4.司法外交
(1)海外の制度支援
続きまして、司法外交についてお伺いしたいと思います。大臣の所信の中にも司法外交に関するくだり、随分ございました。そちらについてお伺いしたいと思います。
まず、海外の法制度整備支援についてお伺いしたいと思います。
法制度支援の目的についてまず確認させていただきたいと思います。日本企業の海外進出に役立つビジネス環境の整備という観点も含まれているのかどうか、そうした点も含めて、目的についてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) これまで日本が海外諸国に対しまして実施してきた法制度整備支援、この目的でございますが、自由、そして民主主義、基本的人権等の普遍的価値の共有による法の支配、これを確立することでございます。
相手国の法制度の基盤が整備されることによりまして、中長期的には相手国において法の支配が浸透した社会、すなわち明確な法令が定められ、これが適切に運用され、司法が適正に機能する社会が実現することになるわけであります。
その結果、法令にのっとった経済活動が行われるとともに、経済的な紛争につきましても公正で予見可能性のある司法判断がなされることになり、相手国のみならず、その国に進出する日本企業にとりましても有益であるということであります。
近時はビジネス環境整備の観点からの法制度整備支援にも取り組んでおりまして、インドネシアやミャンマーにおきまして知的財産権保護に資する支援等を行っているところでございます。
今後も、引き続き関係機関と連携をしながら、相手国のニーズにしっかりと合わせて積極的な法制度整備支援を推進してまいりたいというふうに考えております。
(2)ミャンマー案件
○中西健治君 ありがとうございます。今の御答弁の中にありました国の名前としてインドネシア、ミャンマーというのが挙がっていましたが、ちょっとこのミャンマーで気になったことがありますので、それについてお伺いできればと思います。
ミャンマーにおける法制度整備支援に関して、昨年の八月二十四日付けの日本経済新聞では、ビジネス環境整備の観点から重要である会社法と倒産法の起草支援について、我が国が法支援合戦で負けて支援できなかったと、こういう趣旨の報道がされていました。これに関する事実関係をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(山内由光君) ただいま委員御指摘の新聞報道でございますが、これは、ミャンマーにおいて各国が法支援合戦を繰り広げて、ビジネスに影響の大きい会社法とか倒産法、これが、今般、オーストラリア法を基礎として起草されて日本は支援できなかったという趣旨の記事であると承知しております。
しかしながら、この記事は若干事実と異なっているところがございます。
まず、倒産法に関してでございますが、確かにアジア開発銀行、ADB、これはミャンマーに対して倒産法の起草支援をしておりますが、他方、日本も平成二十五年十一月にJICAプロジェクトを通じて倒産法の起草支援を開始しておりまして、これは両者が競合しているという状態にございます。
しかしながら、ミャンマーがいまだどちらか一方の案を採用するか、その点についてはまだ決まったわけではなく、現在、むしろ日本とADBの支援内容を踏まえて独自に法案を作成、検討している段階でございます。
また、会社法に関してでございますが、これは、ADBがオーストラリア法を参考にしてミャンマー会社法を起草支援しているということは承知しております。他方、日本は元々会社法について直接的には起草支援はしておりませんが、しかしながら、法案審査を所管する連邦法務長官府などの研修を通じて同じ会社法の法案審査は支援しているという状況にございます。
以上のとおり、御指摘の日本経済新聞の記事は正確でないところがございますが、いずれにいたしましても、日本の行う法制度整備支援、日本の法律を直接輸出するものではありませんで、相手国のオーナーシップを尊重し、実情に合った法整備を行うことが特徴でございます。
こうした支援を通じて法の支配を定着させることによって経済的な紛争についても公正で予見可能な司法判断がなされる、そういうことになりまして、ビジネス環境の整備にも有益であると思っております。今後も相手国のニーズの調査を行い、我が国の援助リソースを効果的かつ効率的に活用して積極的に法制度整備支援を実施してまいります。
○中西健治君 日本経済新聞の報道は正確ではなかったということでありますが、今の答弁を聞いていて、ADBと日本が競い合っていると、JICAが競い合っていると、こういう実態となっているということでありますけど、ADBのドナー国で一番大きいところはどこなのかというようなことを考えると、こういう実態というのは少し違和感を感じるという方や、委員の方も多いのではないかというふうに思います。
いずれにせよ、我が国のビジネス、これも中長期的にこうした国々でビジネスがうまくいくということのためにも、やはり協調すべきところは協調して法整備支援というのをやっていっていただきたいと思います。
そして、我々が得意とするところは特に積極的に法制度支援やっていっていただきたいと、こういうふうに思います。
(3)国際仲裁活性化への取り組み
司法外交、もう一つ、ちょっと国際仲裁についても一件お伺いしたいと思います。国際的な紛争解決手段として国際仲裁ということ、大変主流となりつつあるということだと思いますけれども、現状を見てみると、シンガポール、そして韓国などの案件数と比べると、我が国がこの仲裁裁判で取れている案件数というのが十分の一とか、こういう数字にとどまってしまっているということであります。
そうした現状も踏まえて、今後どうしていくのかということについて、これもう最後の質問にいたしたいと思いますけど、法務大臣に今後の取組についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 国際仲裁の利用についての御質問でございます。昨年三月、省内で関係部局で構成される検討チームを立ち上げました。我が国の国際仲裁の活性化のためにどのような基盤整備が必要なのか、その取組の検討ということでございます。
また、昨年九月以降、内閣官房副長官補を議長とする国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議が開催されまして、我が国における国際仲裁の活性化に向けた必要な基盤整備を図るべく、総合的かつ効果的な取組について検討が進められているところでございます。
この会議の下で行ったヒアリングにおきましては、我が国における国際仲裁の活性化に向けた課題、現状の問題ということでありますが、課題といたしまして、英語で仲裁手続が実施できる人材の育成が必要であるということ、また、仲裁手続を実施するための施設整備、こちらも大変大事であるということ、また、国際仲裁の意義また利点等につきまして、企業等の側に意識を持っていただく、問題意識を持っていただく必要があるということでございますので、その意識啓発や広報などの点が非常に重要であるという御指摘がございました。
私自身、昨年九月以降にシンガポール、タイ及びマレーシアなどに出張いたしまして、仲裁機関等の視察をさせていただきました。各国におきまして、この国際仲裁、この位置付けは大変大きなものがあるということ、そしてそれに対して極めて積極的に取り組んでいるということを目の当たりにいたしたところでございます。
とりわけ人材育成、そして施設の整備、この点についても極めて力を入れていたということでございます。
今後、法務省といたしましては、我が国がアジアにおける国際紛争解決の中核として位置付けられるよう、また我が国の人材が国際仲裁の分野でより広く活躍できるように、諸外国の仲裁機関等との人的交流も深めるとともに、関係省庁や官民の関係機関とも連携をしながら、専門的な人材育成、企業に対する意識啓発、広報等を含めまして、国際仲裁の活性化に向けた基盤整備の在り方につきまして、必要な調査検討を更に進めてまいりたいというふうに思っております。
○中西健治君 終わります。ありがとうございました。