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活動報告

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国会活動

8/19(水)参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会報告 集団的自衛権の概念

2015年08月20日 (木)

8月19日の参議院平和安全法制特別委員会において、「国際法における集団的自衛権」の概念について、質問しました。

これまでの安保法案の審議において、集団的自衛権の合憲性(違憲性)についてはかなり採り上げられましたが、「国際法における集団的自衛権」に関する議論に乏しく、その概念自体も整理されていないように見受けられます。

他方で、政府は「国際法上違法な行為を支援することはない」と明言しているため、後方支援を行う前提として支援対象国の行為の国際法上の適法性を判断することが求められております。たとえば、アメリカの武力行使が「国際法における集団的自衛権」の行使として適法なものであれば日本も後方支援することができますが、そうでない違法な武力行使であった場合には、後方支援を控えなければなりません。

このように他国を支援する前提となる「国際法における集団的自衛権」の概念について、政府の見解を質しました。

資料①にお示ししておりますが、国際法における集団的自衛権の考え方は、①個別的自衛権共同行使説、②他国防衛説、③死活的利益防衛説の3つに大別されます。

このなかで、国際司法裁判所は、広く他国を防衛する権利と捉える②他国防衛説に近い考え方を採用したといわれております(ニカラグア事件判決)。すなわち、現在の世界標準の「国際法における集団的自衛権」の捉え方は、ニカラグア事件判決≒他国防衛説と考えられます。

他方、政府は、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が攻撃されていないにもかかわらず阻止する権利」と解しており(平成15年7月15日政府答弁書)、自国と密接な関係にある他国を防衛する権利と捉える③死活的利益防衛説に近い考え方といえます。

そのため、「自国と密接な関係にある他国」に限定するか否かを巡って、政府の捉え方と世界標準の考え方で差異が認められます。

そこで、岸田外務大臣へ、「国際法における集団的自衛権」について、政府の捉え方とニカラグア事件判決で示された概念は同じものなのか、違うものなのか、を尋ねました。

岸田外務大臣からは、以下のご答弁をいただきました。

「ニカラグア事件判決が他国防衛説に立っているのではないか、という指摘があることは知っているが、他方で、ニカラグア事件判決では他国の要請または同意が要件とされており、他国防衛説と完全に一致しているわけではない。」

「ニカラグア事件判決で示された『要請』は、密接な関係にあるからこそ要請が行われるのであり、ニカラグア事件判決はその意味における『密接な関係』を否定するものではない。」

「(国際法における集団的自衛権を巡る)我が国の考え方と国際社会一般の考え方は一致している。」

 

岸田大臣は「要請があるから、密接な関係が認められる。」と答弁されていますが、仮に政府の捉え方(フルスペックの集団的自衛権、③死活的利益防衛説)に立つとしても、「密接な関係」と「要請」という要件は分けて考えるべきではないでしょうか。

「要請があるから、密接な関係が認められる。」という岸田大臣の答弁は、ニカラグア事件判決における集団的自衛権の概念を、政府の捉え方に無理に合わせる強引な印象を受けました。

 

なお、「国際法における集団的自衛権」の捉え方を巡り、政府と国際社会一般において乖離が生じた理由について、私は、政府見解を作成した時期とニカラグア事件判決の時期の問題と考えております。

政府の集団的自衛権の捉え方は、昭和47年政府見解により明らかにされ、基本的にはその後も維持されています。実は、昭和47年当時、③死活的利益防衛説が通説的地位を占めており、おそらく当時の政府関係者は、この通説(③死活的利益防衛説)に沿って、政府見解を作成したと思われます。

しかし、昭和61年にニカラグア事件判決が出され、国際社会一般における通説は②他国防衛説となりました。本来であれば、この時点において、政府は集団的自衛権の定義を改めるべきであったと思われますが、これを怠ったため、いまのような乖離が生じていると思われます。

 

安保法案を整備するというのであれば、こういった問題点も整理するべきではないでしょうか。今後も、政府に対して整理しきれていない問題点を追及して参ります。

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