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色々な経済政策を行なう「目的」は、あくまで「働きたい人に活躍の場を提供する」ことです。その為には、今日の調査会のテーマである「あらゆる立場の人々が参画できる社会の構築」が極めて重要です。3人の有識者をお迎えして、4時間にわたり、しっかりと議論をしました。
この後すぐに、統一地方選挙の応援のために県内に戻ります!
2月17日(水)「国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会」では、
河村小百合日本総合研究所上席主任研究員(財政、金融、公共政策)
佐藤主光一橋大学公共政策大学院教授(財政学)
小黒一正法政大学経済学部教授(公共経済学)
から、現在の財政・金融状況に関するご意見をお伺いしました。
冒頭、3人の参考人からは、「日本の財政状況は危機的な段階を迎えており、金融政策にも限界が見えつつある」「早急な対処が必要である」という内容のご説明を頂きました。
これを受けて、質疑においては、対処に的を絞っておたずねしました。
<河村参考人との質疑>
(中西)「量的・質的金融緩和が時間を買う政策であり、いつまでもやるものではないことは理解している。ただ、政策の波及経路として最も有効だったのは為替、つまり円安を通じての企業収益の改善とそれを背景とした株価の上昇である。
早急に見直すべきだというご提言だが、為替レートに対する影響、つまり円高を引き起こす可能性が高いと思われる。その点に関する評価をお伺いしたい」
(河合)「円高が良いのか円安が良いのかという議論に関しては、たしかに円安によって企業業績が良くなり助かった面がある。また、Jカーブ効果はどこにいったのか(輸出が増えない)、この国の空洞化はそんなに進んでいたのかと気づかされたということもある。
短期的には円高にふれるかもしれない。しかし、もう少し長い目では超円安によって、輸入インフレどころではなく物価目標など簡単に達成できるインフレの方が怖い。円安になればなるほど景気が良くなる訳ではない。
日本のような大国が、為替ばかりを見て政策を行なうのは如何かなと思う」
(中西)「短期的という概念が不明だが、1年、2年という期間円高がつづくと、大変なことになるのではないかと申し上げておきたい」
<佐藤参考人との質疑>
(中西)「所得税の見直し、特に若年勤労者に手を差し伸べる見直しは必要だと思う。ところで、日本では年収1千万円以下に対する税率は10%以下、しかも納税者の80%以上がこのカテゴリーに入る。国際比較では著しく低い。この部分に手をつけるべきだと言うことか?」
(佐藤)「地方税が10%かかり、社会保険料も高いためピンと来ないかもしれないが、たしかに日本の場合所得税はあまり払っていない。一方、最高税率はというと、地方税まで合わせれば55%と国際的に見ても低くはない。
従って、税率表を見直すべきかもしれないが、問題の根源は所得控除が大きすぎることの方だ。1千万円稼いでいてもあれこれ控除されて、実際の課税ベースは小さくなっている。稼ぎに関係なく定額減税となる税額控除とするべきだ」
<小黒参考人との質疑>
(中西)「世代間格差を無くすべきだという論点に関しては、シルバー民主主義とのぶつかり合いという問題が避けて通れない。先ほど世代別選挙区制というご提言を頂いているが、この問題を考えるに当たってほかに留意すべき点があればご教示頂きたい」
(小黒)「世代間の対立に関しては、税収をどう配分するかという問題は当然あるのだが、もうひとつ挙げるならば情報の発信の仕方が稚拙だと思われる。
たとえば人口が減れば経済成長率は当然落ちる。そのため、マクロ的には配分するおカネがないように見えてしまう。しかし、1人当たりの成長率がプラスであるならば、配分するおカネは確保できていることになる。そういうことまで考えて制度設計をするべきだ」
学問的な立場から「あるべき姿」についてご教示頂き、財政・金融問題に関する知見を深めることができました。今後の活動に生かしていきたいと思います。
大沢真理参考人(東京大学社会科学研究所教授)
神野直彦参考人(東京大学名誉教授) 鈴木準参考人(株式会社大和総研主席研究員)
2月10日のデフレ脱却調査会において、信頼できる社会の構築による経済成長及び健全な財政の実現(国民の信頼を構築するための社会保障の在り方)をテーマに参考人質疑を行いました。
まず、大沢真理参考人(東京大学社会科学研究所教授)に対して、「所得再分配機能を強化するという主張は、所得税の累進性を高めるということを念頭に置いていると思うが、その増収分で若年層への再配分が十分に行われうるか」という点について尋ねました。
大沢参考人からは、以下のご回答をいただきました。
「税率表で各国の累進度を比較するのは問題である。OECDの税負担の統計も平均税率の統計で比較している。」
「平均税率を所得類型別にみていくと日本のカーブはほかの国に比べて寝ている。特に(所得の)下のほうのカーブがほとんどない。そのため、累進度の低さがデータ的に裏付けられている。」
「実質的な累進度をいかにして図るかにおいて避けて通れないのが社会保険料負担。特に低額負担しているところのテコ入れをしないと累進度を上げたり、再分配の効果を上げたりすることはできない。そのため、表面税率の最高税率をいじるという議論には意味がないと思っている。」
次に神野直彦参考人(東京大学名誉教授)に「交通網の発達により共同体が物理的に破壊されていく中で、『分かち合い』の仲間意識を持つためにはどうすればいいのか。よく例に出されるスウェーデンと比較して日本はどうやって意識改革を行っていくべきなのか」と尋ねました。
神野参考人からは、以下のご回答をいただきました。
「日本の社会で一番重要な点は、『分かち合う』ということの基礎になっている社会のほうがぐずぐずになっていることである。」
「スウェーデンの中学校の教科書では、『私たちの社会のなかで一番重要な組織は家族です。なぜなら、家族の中ではありのままでいながら好かれていることが感じられるからです』と教えられている。ところが、日本では家族と一緒にいることはストレスだと感じる割合は半分以上になっている。」
「スウェーデンモデルであれば、『国家は家族のように組織化されないといけない』というと説得できる。しかし、日本では、家族はストレスという認識であり、説得できない。いわば、分かち合いの社会に向けた説得材料が希薄化している。」
「このようななかで意識改革を行うのであれば、祭りでもなんでも意識的に共同作業をやることで『仲間じゃないか』という意識を培養していくしかない。」
鈴木準参考人(株式会社大和総研主席研究員)に対して、「社会保障のコスト意識を醸成して価格を通じて資源配分の効率性を高めるというご意見は、現在の社会保障給付の中で、金銭給付ではなくサービスの給付というのが非効率とおっしゃっているのか。また、どのようにして効率化を図るのか」という点についてお尋ねしました。
鈴木参考人からは、以下のご回答をいただきました。
「日本の医療において、高額医療機器の稼働率が低くてコストが高いことが問題となっている。また、ベッドがあるところは医療費がかかっているとよく言われている。しかし、実際はよくわからない。それぞれの住民は、自分の住んでいる自治体以外のことはよくわからない。」
「データは出そろっているので、データの見える化を行うべき。その際には、普通の人が普通に見てわかるフォトマップ型の見える化を行うべき。」
「非効率があっても見える化をして示していければ、破たんを避けなければならないというのは共通認識が持てると思う。そういう改革が必要」
成長と分配のどちらを優先する立場に立っても、社会保障の効率化を目指す方向に変わりはありません。本日の議論を今後の社会保障政策に活かしてまいります。
5月13日(水)、参議院デフレ脱却調査会において、黒田東彦日本銀行総裁へ、金融政策の現状認識と物価安定目標の達成時期について、質問しました。
1、金融政策の現状認識について
3月の完全失業率は3.4%であり、日銀は完全雇用水準に達していると言っております。また、需給ギャップについてはほぼゼロ近辺であるという認識を示しています。
そこで、黒田総裁へ、「金融政策の所期の目的というのは、既に達成されているのではないか。」と尋ねました。
黒田総裁からは、以下のご答弁をいただきました。
「失業率の場合も需給ギャップの場合も、構造的失業率以下になってはいけないということではなくて、景気が良くなっているときには構造的失業率以下になることも十分あり得ますし、需給ギャップの計算上もマイナスがゼロになってプラスになっても別におかしくないわけです。」
「他方で、2%の物価安定目標への道筋はまだ道半ばであるため、2%の物価安定目標の実現を目指して、量的・質的金融緩和を着実に推進していくことが必要であろうと思います。」
2、物価安定目標の達成時期について
2%の物価安定目標の旗を掲げ続けるということは金融政策論的に正しいと言えますが、「2年で達成する」と期間を区切る理論的根拠は乏しいと思われます。「期限が迫っているから」という理由で追加的な金融緩和を打ち出すことにでもなれば、かえって良くない物価上昇を招く恐れすらあります。
そこで、黒田総裁へ、物価安定目標の「期限」に対する認識についてお尋ねしました。
黒田総裁からは、以下のご答弁をいただきました。
「2013年1月に政府と日本銀行で出した共同声明における『できるだけ早期に』の英訳は、as soon as possibleではなく、at the earliest possible timeとなっており、かなり明確な早期というものを設定して日本銀行はコミットしたわけであります。」
「私ども、別に何か一定のきっちりした日にちに迫られて云々ということではありませんが、かなり明確な早期に実現するということにコミットしておりますし、量的・質的金融緩和も2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するということではじめていますので、このコミットメントはやはり引き続き重要であろうという風に考えております。」
昔の日銀のように「デフレを放置しても構わない」という姿勢は論外としても、金融政策だけで潜在成長率を引き上げることができるわけではありません。今後も日銀の金融政策を注意深く見守って参ります。
髙橋 洋一 先生 井堀 利宏 先生 井出 英策 先生
4月15日(水)に開催されました「国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会」において、3名の参考人の先生方のご意見を伺いました。
1、高橋洋一先生(嘉悦大学ビジネス創造学部教授)
高橋先生には、以下の2点を尋ねました。
①政府は、経済見通しについては高めに見積もり、後で下方修正をするのに対して、税収については低めに見積もり、後で上振れさせている。このように方向性が逆になってしまうのは何故か。
②税収弾性値(税収の伸び率を名目経済成長率で除した値)について、財務省は1.1を、内閣府は1.0を使っているがどちらも低いと思われる。いくらを用いるべきか。
高橋先生からは、以下のご回答をいただきました。
①経済と税収の見通しについて
「経済見通しと税収見通しがズレル原因は、マクロは内閣府、税収は財務省とばらばらに担当しているため。マクロできちんとやるのが大前提。」
②税収弾性値について
「ここ十数年の実績ベースで、税収弾性値は3。景気回復局面では赤字企業が税金を払いだすので、弾性値は大きくなる。財務省が弾性値を低く見るのは予算上のテクニックに過ぎない。」
2、井堀利宏先生(政策研究大学院大学教授)
井堀先生には、財政健全化目標についてお尋ねしました。
具体的には、財政健全化目標は、2020年度PBの黒字化でいいのか、もっと進んで財政収支を黒字化すべきなのか、あるいは債務の対GDP比率が発散しなければいいのかについて、お尋ねしました。
井堀先生からは以下のご回答をいただきました。
「財政健全化には2つの目標がある。ひとつは全体の財政が持続可能であること、もうひとつは中身の話。」
「全体の持続可能性という点ではPBの黒字化は中間目標であり、最終的にはGDP比の公債残高が安定的に下がっていく必要がある。そのためには数パーセントの黒字のレベルを作らなければならない。」
「他方で、マクロベースで均衡していても、賦課方式で人口が減少していく社会では世代間で不公平が生じ、若い人には財政に対する不信感が拭いきれない。財政や社会保障が中長期的に日本国民に受け入れられるためには、抜本的な社会保障改革という中身の改革も必要である。」
3、井手英策先生(慶応義塾大学経済学部教授)
井手先生には、井手先生が主張される「国税については累進性を高めてもいい。地方税については低所得の方にも払って頂きたい。」ということを進めた場合、結果として直間比率はどのような姿になると想定されるのか、をお尋ねしました。
井手先生からは、以下のようなご回答をいただきました
「女性の社会進出が進み、かつて女性が家庭で果たしてきたサービスの負担が問題となってきた。その結果、対人社会サービスの担い手である地方自治体に仕事や権限が下りてくる。」
「この財源については、みんなが納税者になるべきというのが私の考え方。そのため、税収は、地方消費税を増やすか、住民税を増やすかのどちらかと考える。」
「住民税が増えるか、地方消費税が増えるかによって、全体の直間比率の構造が変わってくる。ただし、自治体関係者が住民税の増税を言い出すことが難しいということを考えると地方消費税のウェートが大きくなると思う。」
先生方のご見識を伺い、財政再建への知見を深めることができました。今後の委員会質問に活かして参りたいと思います。
若田部 昌澄 参考人 湯元 健治 参考人 小峰 隆夫 参考人
本日は、先週に引き続き、デフレ脱却調査会において、参考人の先生方へ質問する機会を頂きました。
先生方への質問とご回答は以下の通りとなります。
1、若田部昌澄参考人(早稲田大学政治経済学術院教授)
≪質問≫
日米の金融政策の方向性の差から、今後さらに円安に進んでいく可能性が高い。円安のデメリットも言われているが、全体としてはプラスというご意見なのか。
≪回答≫
○日本は、30年前のプラザ合意以降円高基調が続いている。その結果起きたのがデフレである。それを是正するために一定程度円安方向に傾くのは自然なことである。
○内閣府が示している日本経済の短期日本経済マクロ計量モデルでも10%の円安によって実質経済成長率が1年で0.08%、2年目以降で0.4%伸びるとされている。3年3か月で50%の円安なので、この効果が少しずつ出ている。
○景気が良くなると輸入が増えるので、貿易収支が少なくなるのは自然なことである。この程度の円安はメリットが大きく、全体としてはプラスである
○もっとも、これ以上円安が進んだ場合には多少議論が必要であるが、単純に経常収支・貿易収支が赤字になるわけではなく、バランスが良い形で回復すると期待している
2、湯元健治参考人(株式会社日本総合研究所副理事長)
≪質問≫
財政再建の道筋について、国民負担を上げていくという考え方なのか。それとも、経済成長を重視していく考え方なのか。
≪回答≫
○プライマリーバランスの赤字は、2000年代前半の景気がいい時は減少したものの、リーマンショックを受けて大幅に悪化した後、景気回復とともに少しずつ縮小している。そのため、経済成長と財政健全化は整合性があると言え、経済成長が損なわれると、いかに歳出削減や増税を行ったとしても赤字は減らないと考える。
○もっとも、経済成長が持続すれば順調に赤字が減るというわけでもない。内閣府の試算では、名目成長率が3.4%という高い数字を前提にしても、2020年のプライマリーバランスは9兆4000億円の赤字と試算されている。
○つまり、財政再建を実現するうえで、経済成長が大前提だが、経済成長だけでは難しい。そのため、財政健全化のルールを作るべきである。
○具体的には、スウェーデンの財政健全化が参考になる。すなわち、①経済成長率を上回る社会保障の伸びについては、伸び率に応じて税率が上がっていくような仕組みを作り、②社会保障以外の歳出についても名目成長率以下に歳出を制限する。この2つのルールを作ることで財政健全化の方向に進む。
3、小峰隆夫参考人(法政大学大学院政策創造研究科教授)
≪質問≫
政府の示す経済成長戦略のメニューにおいて、足りないものは何か。
≪回答≫
○政府が出している成長戦略には、ほとんどあらゆるものが入っているため、項目として付け加えるものはない。問題は、「何を重点としているか」「どういう考え方でやっていくか」ということである。
○ひとつは、雇用の流動化である。なるべく発展分野に優れた人材が流動的に集まり、衰退分野から人が離れていくような流れを作ることが望ましい。
○つぎに、企業の活動の場を大きくして、ある程度のリスクを取りながら成長分野に進出できるような環境を整えることである。たとえば、お金はかかるものの質の高い「ビジネスクラス」を作ることで民間の活力が生かしやすくなる。
○最後に、人の居住地選択を容易にして移動をしやすくすることが有効である。老後は農業をやりたいという人に対して、農地の所有を可能とするなど居住の流動化を促進することが必要である。
現状に及第点をつけつつも、常に課題を意識するという姿勢は御三方に共通していました。先生方のご指摘を今後の委員会質疑に活かしてまいります。
早川英男 参考人 菅野雅明 参考人 岩田一政 参考人
本日は、「国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会」において、参考人の先生方に昨年の日本銀行の量的緩和(QQE2)について、お尋ねさせて頂きました。
今後の日本経済のために更なる金融緩和を主張される方がいらっしゃる一方で、追加緩和の弊害を主張される方も少なくありません。
更なる金融緩和の是非を考えるに当たって、昨年10月末に行われた日本銀行の量的緩和(QQE2)の評価が問題となります。
そこで、QQE2の評価について各参考人のご見解を伺いました。
各参考人のご意見は以下の通りとなります。
1、早川英男参考人(株式会社富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー)
・一昨年のQQE1はやってみる価値のある実験であり、また成果もあった。しかし、その経験に学ぶなら、QQE2の時点では望ましくなかったと考える。
・ただし、原油安などの幸運があって、日本にとってチャンスとなる1年を迎えている。そのチャンスを生かしてほしい。
・経済が順調に動くのであれば、新たな追加緩和は必要ないと考える。
2、菅野雅明参考人(JPモルガン証券株式会社チーフエコノミスト)
・答えはまだ出ていないと考える。
・QQE2を行うことで日銀は時間を余計に買えることになった。それをどう評価するかの問題だと考える。
・歳出削減が進まず、成長戦略も打ち出せないのであれば、日銀が買った時間を浪費するだけになり、寧ろコストになると思う。
3、岩田一政参考人(公益社団法人日本経済研究センター代表理事・理事長)
・仮に10月末に日本銀行が何もしなかった場合何が起きたかを考える必要がある。
・マーケットの参加者に、「日本銀行は、口では『2年で2%』といっているが、物価の上昇率が1%を割り込み、ゼロに近づいてきても何も行動をとらない中央銀行」という意識が広ってしまうと、デフレ脱却まで難しくなる。
・デフレ脱却が難しくなるというコストを考えると、QQE2はやった方が良かったと考える。
参考人の先生方は、三者三様のご意見を示されました。先生のご見解を今後の委員会質疑に活かしてまいります。