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2011年08月01日 (月)

国債整理基金と決算剰余金(1)

先日国会で、決算剰余金の処理に関する特例法が成立しました。22年度決算の剰余金を23年度第2次補正予算の財源として100%利用するための法律ですが、何故この法律が今議論されて成立したのか、そして私がどの様な主張を行ったかについてご説明したいと思います。

まず、国債の種類、発行、償還の流れについて簡単にまとめてみます。

国債の種類というと償還年限による種別(5年債、10年債、30年債など)や対象とする投資家による区別(通常の国債と個人向け国債)、あるいは利息の種類による区別(固定利付債と変動利付債)が思いつきますが、財政の立場からはその発行根拠法が重要になります。どの国債も国が民間から資金を調達することには変わりないのですが、どの様な目的で調達する資金なのかを規定しているのが発行根拠となる法律です。

昔ながらの国債は財政法を根拠法として発行されており、その使途が公共投資などであるために建設国債と呼ばれています。建設国債の発行高は近年公共投資の縮小によって低下してきています。一方で発行が大幅に増加しているのが特例国債、所謂「赤字国債」で、公債特例法を発行根拠法としています。赤字国債はその名の通り国家財政の赤字を埋め合わせるために発行されるものです。特例国債という名称は、国が財政赤字を借金で埋め合わせるというのは本来有るべき姿ではなく、このような資金調達は特例と考えられてきていることによります。公債特例法は通常は予算と同時に国会で審議される予算関連法案の一つですが、ご存じの通り本年度は予算が成立したものの公債特例法は成立しておらず、政府は赤字国債が発行できない状態になっています。

建設国債と特例国債を合わせて新規財源債と呼ばれており、通常新聞やニュースで国債発行額として報道されるのはこの新規財源債のことです。23年度は前年度を上回らないと言うことで、44.3兆円の発行が予定されています。4月の補正後では建設国債が7.3兆円、特例国債が37兆円です。しかし、今年度の国債発行予定総額は171.6兆円で、差額の127.3兆円は借換債と財投債と呼ばれるものです。借換債と新規財源債を合わせて普通国債と呼び、財投債はかなり性質の異なるものなのですが、発行時には同じ国債として発行されますので同じ有価証券として扱われます。

財投債は正確には財政投融資特別会計国債と呼ばれ、国が財投機関を通じて行う中小企業緊急支援や地方自治体への貸し付けに用いる資金調達のために発行されています。日本政策金融公庫などの財投機関がそれぞれの信用力で発行する財投機関債とは違い、国の信用によって国会の承認のもとで発行される債券ですが、償還資金には財投資金があてられる特別な国債であり、その意味で普通国債とは別に考えられています。23年度の補正後発行予定額は16兆円です。残りの111.3兆円が借換債で、国債整理基金特別会計において発行され、根拠法は特別会計法です。この借換債は発行量も膨大ですが、本日ご説明したい国債の発行、償還のサイクルの中で重要な役割を占めるものです。

個人や企業が借金をする時にはその返済方法についてもしっかりと決めておくことが重要ですが、同じように国が借金をする場合にも返済方法を考えなければなりません。そうしないと、借金を返すために借金をするという悪循環に陥ることになるからです。その主旨により、特別会計法のなかで国債整理基金に国債償還の為の資金を積み立てていくことが規定されています。具体的には毎年の国債残存残高の1.6%にあたる額が一般会計から国債整理基金に繰り入れられます。これが所謂「60年ルール」と呼ばれるもので、1.6%は1/60にあたります。つまり、毎年発行済国債総額の60分の1ずつ資金を一般会計から国債償還の為の資金(減債資金)に繰り入れ、貯めていけば、60年後には借金を全額返済できるはずという枠組です。

国債整理基金への資金繰り入れは、1.6%の定率繰り入れの他、毎年の一般決算剰余金のうち2分の1以上を繰り入れることになっています。国は毎年の予算執行の過程で資金が不足しないように、常に多めに国債発行などの資金調達を行う様にしています。足らないと困ってしまいますが、余れば、つまり国債を多く発行しすぎていれば、その分国債を償還すれば良いという考え方です。そのため、基本的に決算では剰余金が発生することが前提となっており、その2分の1以上を国債償還にあてる、つまり国債整理基金へ繰り入れられることになっているのです。また、政府が予算として計上して国会で承認されれば、一般予算から国債整理基金へ任意の額を繰り入れることも可能です。国債整理基金には国債利払いに充てられる資金も滞留していますので資金総額は20兆円を超えますが、ここでご説明したような繰り入れの結果、国債償還のための財源として積み上がっているのは12~3兆円になっています。

借金返済のための唯一の法的な規律となっている60年ルールですが、必ずしも安定して機能しているわけではありません。例えばある年に600億円の10年債が発行されたとします。毎年1.6%の定率繰り入れを国債整理基金にすると10年後には約6分の1の100億円が貯まっているはずです。従ってこの時償還する600億円の国債のうち、100億円は積み上がった資金を用いて償還し、残りの500億円分は新たに借換債を発行して資金調達をして償還することになります。10年ごとに100億円ずつ償還資金による償還を繰り返していけば60年後にはすべて償還が終了し、借換債の発行がゼロになるという理屈なのですが、問題は国債の残高が徐々に減ることによって定率繰り入れされる額が減っていくことです。

最初の10年は毎年600億円の60分の1、即ち10億円が繰り入れられましたが、次の10年は500億円の60分の1しか繰り入れられません。この借換債も10年債として発行されていると仮定すると、これが満期を迎える時には500億円の6分の1にあたる83.3億円しか国債整理基金には積み上がっていないことになります。60年ルールではこの時も100億円が現金償還されて借り換えされない想定ですので、16.7億円の現金が不足することになります。

実は国債整理基金の資金は国債や財投で運用されており、金利が高いうちはこの差額は何とかカバーできましたが、金利が低下した現在では償還資金が不足して借換債の発行が増大してしまう可能性があります。また、この例からもわかるように国債残高が減少していくと毎年の定率繰入金が減少し、償還財源が不足しがちになります。今後日本の財政が急激に健全化すれば基金は減少しますが、新規財源債の発行が続けば積立金は安定、もしくは増加を続けるでしょう。

第1回目は国債の種類、発行、償還の流れについてご説明しました。次回は復興財源として、国債整理基金や決算剰余金をどのように活用していくべきかについての私の考えをご説明したいと思います。 

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