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2011年07月07日 (木)

持続可能な年金制度の構築に向けて―(1)

6月30日に政府・与党社会保障改革検討本部は「社会保障・税一体改革成案」を発表しました。社会保障は多岐にわたるものですが、その中の重要な項目である年金についての私の考えを少しご説明したいと思います。年金について、私が問題として注目しているのは大きく3点あります。

第1に、年金制度のあり方の根本的な考え方です。

年金制度は方式によって「積立方式」と「賦課方式」の2種類に分けることができます。

「積立方式」は保険会社などで皆さんが任意に加入する個人年金保険がこれにあたります。積立方式では、支払った保険料を積み立て、運用した成果を、将来年金として受け取ることになる方式で、基本的には「自助」の考え方です。働いている間に、その時点での消費を少し我慢して保険料を積み立てて、それを将来自分が年金として受け取りますから、自分で自分を助けることになるのです。政府としてはこのような自助の動きを側方から援護する為に、年金積立における税制面での優遇などを行っています。

「賦課方式」は、年金受給者への給付金をその時の現役世代が支払う保険料によってまかなう仕組みです。加齢やその他の理由で働くことができなくなってきた人達の生活を、国民全体でサポートするもので、私は「共助」の考え方だと思っています。その意味では年金は生活保護の一種と考えても良いでしょう。これは所得の再分配などの問題も関連してくる、政府が前面に立つ考え方です。大きな政府の典型的な施策という事もできるでしょう。

日本の年金(厚生年金、国民年金)は、「世代間扶養の賦課方式を基本とする」と厚生労働省のホームページで説明されています。賦課方式ですので、自分たちが現役の時代に年金受給者が少なければ支払う年金保険料は少なくてすみ、そうした世代の人達は生涯で支払った年金保険料と比べて遙かに多額の年金を受け取ることができます。一方で自分が現役の時に多くの年金受給者が存在する様な世代では、将来受給するであろう年金と比べて多くの保険料を現役時に支払わなければならなくなります。つまり、賦課方式においては人口構成に応じて「得をする」世代や「損をする」世代が生まれてくる可能性があります。一方で積立方式ではそれぞれの個人、あるいは世代グループが現役時代に拠出した年金保険料を元に引退後の年金が支払われますので、世代間で損をしたり得をしたりすることは原則としてありません。

積立方式と賦課方式はどちらが良いかというのは、申し上げた通り根本の思想が異なるものですので、結論の出ない話しですが、現在賦課方式を選択しているわが国において、ひっ迫する財政事情から一刻も早い制度変更が求められている中、積立方式に変更するには長い時間がかかることから現実的ではなく、私自身としては、基本的には賦課方式を前提として制度変更を行っていくことを考えるべきと考えます。

話しを戻しますが、日本の年金制度は賦課方式、すなわち共助の考え方が基本になっており、厚労省の言う「世代間扶養」とはこのことです。扶養というのは養い助けることです。扶養を行うものが貧しくなり、扶養されるものが富んでいくというというのでは筋が通らないのですが、今まさに所得移転という形でそれがおこっています。

賦課方式の年金制度は、程度の違いこそあれ必ず世代間の所得移転を伴います。現役世代が支払う保険料と税金によって高齢者への支給が行われるからです。所得再分配の一環としての所得移転はすべてが悪いわけではありませんが、本当に必要なものだけに限って行われる必要があります。例えば憲法に保障される最低限の社会的生活を営むのに必要な資金を獲得することが困難な高齢者に対して、現役世代からの所得移転が行われるのは社会的正義だといえるでしょう。しかし十分な収入を労働から受け取っている高額所得高齢者や、十分な資産を保有していてそれを活用することで生活が十分にできる富裕高齢者に対して、「世代間扶養」の名の下で現役世代が自分たちの可処分所得を削って、あるいは自分たちの貯蓄を削ってまで所得移転をおこなうのは、全く理に叶っていません。

所得移転は、日本国が抱える多額の債務を考えると、実は今の現役世代ではなく将来の現役世代がこの負担を負っていることになります。今の高齢者は息子や娘が支払う保険料や税金だけで支えられているのではなく、実は孫や曾孫達の将来生活資金によって支えられているのです。

「昔頑張って働いたから」、あるいは「昔保険料をちゃんと納めたんだから」どんな高額所得者でも、どんな資産家でも年金を受け取れるというのは積立方式の考え方です。これ自体は積立方式の個人年金などでは全く間違った考え方ではありませんが、賦課方式をとる日本の公的年金の世界では、扶養を受ける必要のない人々への年金支給は必要ないはずです。

政府案では、年金を受給しながらも年収1,000万円以上の収入がある方から公費負担分の減額を開始して、1,500万円以上で負担分をゼロにする考えが例として示されています。方向性としては良いと思いますが、年収1,000万円とか1,500万円を高額所得者の基準に使うのは、子育てやローン支払い、将来への貯蓄なども考えなければならない現役世代の話しではないでしょうか。子育ても終わり、住宅ローンの支払いなども終わった人々の必要最小限の生活資金としては、通常月額で50万円もあれば十分でしょう。例えば、年金以外の月収が40万円を超える年金受給資格者に対しては、40万円を超える分だけ年金支払額を減額するというやり方も考えられます。受給年金額を15万円とした場合、仕事による収入が45万円の方は、これまでは年金と収入を合わせて月60万円の収入であったのを、これからは年金を5万円減額して10万円とし、月55万円にしたとしても、十分に世代間扶養になっていると思います。

さらに私は、賦課方式の年金制度を維持するのであれば資産家への給付も制限するべきだろうと思います。例えフローでの収入がなくても大きな資産を保有するのであれば、その人が世代間扶養の対象とされる必要はないからです。そのためには何らかの資産課税、特に相続税が重要になってきますが、一つのアイディアとして、支給された年金総額から支払った保険料総額を差し引いた額は過払い年金分の相続税として課税するということも考えられます。例えば現役時代に本人と雇用者で合わせて3,500万円の年金保険料を支払い、4,500万円の年金を受け取った方が亡くなった場合、1,000万円を超える資産を保有していた場合には、1,000万円分の一部はその故人の財産とはせず、年金過払いとして国が徴収するという考え方です。これによって不必要な所得移転に歯止めがかかるでしょうし、高齢者による消費支出増大も期待できます。このような相続課税は、今回の政府案に盛り込まれている番号制度が導入されれば可能になるはずです。また資産を生活資金として活用できるような仕組みを政府が推進していくことも必要で、自宅を担保にして銀行などの金融機関から借金をし、その借金を年金という形で受け取るリバースモーゲージなどがより普及するための制度改善も重要でしょう。

不必要かつ過分な所得移転の問題と並んで、修正賦課方式が抱えるもう一つの問題として、「年金保険料不払い」の問題があります。賦課方式は高齢者への強制的な所得移転であり、保険料の他にも税金が公費として支払い原資に充てられています。現役世代や将来現役世代が負担できるであろう水準の賦課のもとで、持続可能な必要高齢者への生活保護としての修正賦課方式による公的年金、すなわち所得移転が設計されていくべきで、そのために所得移転を制限しなければいけないと言うのは既にご説明したとおりです。

保険料を支払わない人達からすれば、制度の持続可能性に対する不信感があるからというのが表向きの理由でしょう。もちろん保険料を支払うと生活が苦しくなるということもあるでしょうし、自分たちが苦しんで高齢者への年金が支払われることに対して理解できないという思いもあるでしょう。しかし、賦課方式を堅持していく限り、保険料の強制徴収、あるいは税金としてきちんと徴収していくことで賦課方式としての機能を確立させなければなりません。年金制度のような複雑かつ長期間にわたる制度においては、制度設計と同程度にその正確な執行が求められます。制度設計にある程度の余裕を持たせることも可能ですが、それよりもまず最初に厳格な執行を目標とすべきだと思います。

次回は私が考える年金の第2、第3の問題点について触れていきます。

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