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2011年05月31日 (火)

二重債務問題

先日の国政報告にも書きましたが、東北被災地視察を行った際、二重債務問題へのしっかりとした対応の重要性を再認識しましたので、今回はこの問題についての現時点での私の考えをまとめてみました。

二重債務問題は、簡単に言ってしまうとこれまでのローンに加えて、今回の震災により新たに融資を受ける必要がある個人、企業が多く存在する問題です。例えば住宅ローンを借りて自宅を購入した方が津波でその家を流されてしまった場合、新しい家を建てるために再度融資を受ける必要がありますが、最初の住宅ローンはそのまま残っていますから二重の支払いを行う必要が出てきます。企業にしても借入金を利用して建設した工場が地震で倒壊した場合、再建には新たに融資を受ける必要があり二重債務を負うことになります。

これら被災者に対して、個人、企業を問わず何らかの支援を行っていく必要を痛感しています。
最近では、国による公的支援注入を前提に、金融機関は債権放棄を行うべきである、とか、債務の金利ぐらいは減免してあげるべきではといった考えなどが新聞紙上を賑わせています。

私としても、未曽有の災害に見舞われた東北が復興して行くにはそこに住む個人、活動する企業が再興していくことが絶対に必要であり、その為の支援は行われなければならないと強く感じていますが、一方でリスクに対する準備をしてきた個人、企業とそうでなかった個人、企業との間で、おかしな公平性、あるいは不公平性が発生しないようにしなければなりません。

例えば工場を持っている企業を考えてみましょう。資金面から考えると、工場建設に伴う借入金が存在している企業と、既に借入金を返済し終わったかあるいは最初から自己資金を使って無借金で工場を保有する企業の、二つのパターンが考えられます。保険の面で考えると、地震に対する備えを行っていた企業とそうでない企業、つまり地震保険に加入していたかしていなかったかに分けられるでしょう。

もし政府の金融機関への公的資金注入によって金融機関が債権放棄を行うとしたら、どうなるのでしょうか。債権放棄を受ける企業は、その分だけ帳簿上は収益をあげることになります。1,000万円の借金があった企業がその借金を棒引きにしてもらえるならば、1,000万円を銀行から供与されたことと同じなのです。一方で借金がなかった企業は放棄してもらう債権もないわけですから、この収益を受け取ることができません。つまり、多重債務問題の解決策として債権放棄を行うとすれば、債務のある企業と無い企業の間で大きな不公平を生み出すことになるのです。

地震に対する保険に加入している企業は工場が地震で倒壊すれば保険金を受け取れますので、工場再建を保険金で行う事ができる一方で、保険に加入していなかった企業は新たに銀行からの借り入れを行う必要が発生し、二重債務者問題の当事者となります。仮に二重債務者対策が既存の債権の放棄ではなく企業にとっての新規債務の条件面での優遇で行われるならば、地震に対する保険の備えを行っていた企業と行っていなかった企業で、後者の方が経済的な便益を受けることになってしまいます。

どんな施策を行っても、全ての個人、企業を公平に扱うことはとても難しく、公平の定義も非常に曖昧です。その様な中で政策を立案、決定していかなければいけない私たち議員は、最低限の公平性を確保すると同時に、正しいと思われることをしている個人、企業が逆に相対的に不利益を被ってしまうということがないようにしていかなければなりません。

一つの施策だけですべてを解決するのは大変難しく、実際にはいくつかの複数の施策の組合せが必要となっていくと考えておりますが、例えば、政府による土地の買い上げというのは一つの有効な方法かと思っています。震災が発生する前の固定資産税の基準公示価格の何割とかで一律に国が被災地の土地を買い上げることにより、国が土地保有者に対して対価を支払う、ローンを抱えている人はそれを原資にして債務を返済する、ローンを抱えていない人はそれで新しい土地を購入するあるいは家を建てるという考え方です。国にとって見れば今後実施する被災地の復興都市計画を策定していく中で、国有化された土地を有効に活用していくことができるわけです。買い上げ価格を決定する際に、被災状況によって買い上げ価格を変えるということではなく、被災地の個人や企業に一律の基準(先の例では固定資産税における基準価格)で一時金を支払って既存の債務弁済にあててもらうぐらいの大胆な考え方が必要だと思っています。この場合も債務の存在しない個人や企業にも平等に支払いを行わなければなりません。

安易な債権放棄の考え方は個人、企業に対してきわめて不公平な措置になる可能性が高いと共に、実は被災者(個人、企業)救済ではなく金融機関救済になってしまう危険性も考えなければなりません。債務のある企業からしてみれば破産宣告してローン弁済を一方的に止めてしまうのも、銀行に債権放棄をしてもらうのも、今回のような特殊な事態においては似たようなものです。ところが、金融庁が今回緩和した上で延長しようとしている金融機能強化法を合わせて考えると、金融機関にとってみれば、債務者が破産してしまう前に債権放棄をしてしまい、それによって国から資本注入を受け入れることを選択する方が有利になってしまうのではという問題です。金融機関は経営責任を問われず、問題になるかも知れない債権は放棄して綺麗さっぱり忘れてしまうことが出来、それによって発生する損失は国が穴埋めしてくれるわけです。こうしたことが行われないように眼を光らせる必要があります。

被災者を支援するという大前提の元で、政治家に求められる公平性の最大限の実現を目指して頑張っていきます。

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