中西けんじ公式ホームページ(参議院議員:自由民主党 神奈川県選挙区)

国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2010年09月30日 (木)

経済金融有事

中国との間では尖閣諸島をめぐる領土侵犯問題や日本人4名の拘留などで緊張感が高まっていますが、それ以外にも着々と進行しつつある「戦争」があります。それは各国が中央銀行のバランスシート拡大競争と自国通貨安誘導を行う、ある種の経済金融戦争です。例えばアメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度(FRB)は、バランスシートを危機前の8,000億ドル程度の規模から2.5~3倍の2.3兆ドル程度まで膨らませました。その中で大量に購入したモーゲージ債(MBS)の期限前償還が金利低下に伴って加速していますが、8月の政策決定会合(FOMC)で償還分を長期米国債買い入れに回すことを明言し、バランスシート縮小は許さない姿勢を明らかにしています。またヨーロッパでも欧州中央銀行(ECB)、英国中央銀行(BOE)共に同様なバランスシート拡大を行っています。

FRBのバーナンキ議長は、9月のFOMC後に追加緩和をほぼ約束するかのような議事要旨を発表することで市場に追加緩和に対する強い期待を植え付けました。早ければ11月、遅くとも1月には追加の量的緩和を行うと市場は予想しているようで、万が一にも量的緩和が行われなければ市場は大変失望することになるでしょう。また、量的緩和の規模も前回と同様かそれを上回る水準を市場は希望していると見られ、1.5兆ドル程度になるとも言われます。ヨーロッパでもECBが危機に陥った加盟諸国の国債を積極的に買い入れる形でのバランスシート拡大を続けています。一方の日本では、長引く不況の中で日本銀行のバランスシートは既に拡大してしまっており、実はGDP対比で見るとFRBやECBよりも大きくなっており、これ以上の拡大は難しいというのが日銀の主張です。

為替に関しては、アメリカや欧州諸国は直接外国為替市場に介入してはいませんが、中央銀行のバランスシート拡大による通貨価値毀損を容認する形で、間接的に自国通貨安政策を推し進めています。一方ブラジルやロシアなどは積極的に為替市場への介入を行っていますし、中国は自国通貨を安い水準に保っている上に日本国債購入の形で円買いを行っています。韓国も中国と同様、自国通貨を安く保っています。9月28日の英ファイナンシャル・タイムズ紙の記事によると、ブラジルの財務大臣は国際通貨戦争が起こっていると発言しているようです。

さて、このような状況の中で我が国の金融政策はどうなっているのでしょうか。量的緩和の様な非伝統的金融政策に関しては、その効果とリスク(副作用)を慎重に検討しながら進めなければならないという考えを日銀は示しています。私も量的緩和のインフレ率押し上げに対する直接的効果とその潜在的なリスクに関しては慎重な見通しを持っていますが、慎重な見通しを持つことと何もしないことは全く違います。経済金融戦争下においては、何もしないことは自国経済の破綻を招くのです。このような危機下において、少しでも早いデフレからの脱却が求められる今、量的緩和やゼロ金利政策、時間軸政策などは全てデフレ脱却のための必要条件であるというのが私の認識です。言い換えると、量的緩和だけで簡単にデフレから脱却できるとは思いませんが、経済金融戦時下においてまずは日銀が量的緩和を行った上で政府が無駄を省きながら積極的かつ効果的な財政政策を遂行し、日銀がそれを更に側面支援するというチームプレーが必要なのです。

私は9月9日の参議院財政金融委員会で、白川総裁に対して量的緩和を求める質問を行いました。現在の状況は平時ではなく一種の有事であるという認識のもとでの質問でした。ところがこれに対する白川総裁の答弁は、徹底的なゼロ金利は市場機能を損ない経済全体の安定性を阻害するという、まさに平時におけるが如くのものでした。この「市場機能論」は白川総裁が以前から主張している話で、8月のジャクソンホールにおける中央銀行会議の場では確かにFRBのバーナンキ議長もECBのトルシェ総裁も同じような話をしています。白川総裁はそれがよほど嬉しかったのでしょう。確かに市場機能論は平時においては量的緩和に対する一つの有効な反対議論になり得ると思いますが、先述のような経済金融戦争下においてはそのようなことを言っている場合ではありません。日銀のGDP対比でのバランスシートがいくら大きいとしても、2006年の量的緩和解除によって縮小してしまった分ぐらいはすぐに膨らませるべきです。市場機能が若干損なわれるかもしれませんが、そのようなことには後で対処すれば良いのです。

このように量的緩和の再開を頑なに拒んできた日銀ですが、若干姿勢が変化してきているように思える部分もあります。今年3月から新たに神戸大学経済経営研究所から日銀政策委員会のメンバーとなった宮尾教授は、9月22日に徳島で行った講演の後の記者会見で、「あらゆる手段を排除することなく選択肢に入れ」ることを明言し、政策の「効果・副作用は、その時々の経済・物価の情勢によって変わってくるので、量的緩和政策に関する評価についても、かつての評価と現時点における評価は当然変わり得る」と話されました。白川総裁の答弁とは違い、世界中が経済金融戦争に突入しつつある中では当然量的緩和政策に対する効果とリスクの考えも変わるべきと解釈できるものであり、期待が持てるものです。日銀の今後の言動に注目し、「戦時体制」を強化させるべく働きかけていきたいと思います。

長くなりましたが、最後にもう一言。上述の通り私は金融政策だけですぐにデフレから脱却できるとは思っていません。財政政策や債務管理政策を含めた、政府と国会の強いリーダーシップがあって初めて経済に上向きの期待を生み出すことが出来るのです。単に予算をどの様に配るかという次元を超えて、戦時下の認識のもとで戦っていきたいと思います。

 

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