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国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2011年08月26日 (金)

「二階から目薬?JBIC独立正当化?」~円高対応緊急パッケージについて

8月24日に財務省は「円高対応緊急パッケージ」を発表しました。既に報道の通りですが、内容は大きく分けて二つあります。第1に1,000億ドルの円高対応緊急ファシリティを創設すること。第2に外為法55条8に基づく外国為替の持ち高報告を求めることです。2番目の持ち高報告に関しては、裏側で米国や欧州マーケットで大規模な取引が行われているのに本邦にある上位30社のみを相手に実施したところで、財務省のいう「牽制効果」はほとんどないと思われます。

より問題なのは第1のファシリティの方です。当初は「基金」と一部に報道されたようですが、基金のように一定の額を外為特会から移管するという形態ではなく、需要に応じてそのたびに外為特会からお金を引き出してくるという意味で「ファシリティ」と言っているようです。財務省の資料によれば「民間円資金の外貨への転換(いわゆる円投)の促進による、為替相場の安定化」と「長期的な国富の増大」を目的としており、外為特会のドル資金を国際協力銀行(JBIC)に国際金融取引の基準値として利用されるドルLIBORフラットで貸し付け、それを基にJBICが日本企業の海外M&A、資源関連投資、中小企業の輸出などを支援するというものです。

私は本施策に対しては、3つの観点から疑問を持っております。

1点目は、「円高対策」という目的に対して合致する施策だとは到底思えないということです。

このパッケージが発表された際、市場関係者からは瞬時に、これではそもそものドル買い需要を政府供給のドルで打ち消してしまうから、円高に対応する「円高対策」ではなく円高にしようとする「円高方策」だという声が上がりました。財務省の資料をよく読み、説明を聞くと、一応彼らとしてはこれが本当に円高対策になると信じている、あるいはそのふりをしているようです。理屈としては日銀の成長基盤融資と同じ「呼び水」効果です。

財務省が期待している呼び水効果は、JBICが通常、本邦金融機関との協調融資の形を取るために、本邦金融機関もJBICのドル建て融資実行と並んでドル建て融資を行う事になり、そのドル貨調達のためにドルを買うだろうというものです。これは、銀行の資金調達を考えると考えにくい話です。円貨をドル貨に変換する際は通常通貨スワップを用います。邦銀は潤沢な円資金を持っていますから、彼らはその円を期近でドルに変換し先で円に戻すという両建て取引を行えば良いのです。出資ならともかく融資であれば満期がありますから、通常はこの手法を採る、あるいはドル建てで短期資金を借り入れてドルでの長短金利差リスクを取る方法を選ぶはずで、円投とよばれる為替リスクを負った形での融資を行うことはまずありません。そうでなければ銀行の収益が為替相場の変動により大きくぶれるということになりますが、そうではないのは皆さん良くご承知の通りです。円高対応に資するという観点では極めて効果は限定的と言わざるを得ないと考えます。「二階から目薬」といったところでしょうか。

2点目は法律的な問題です。外為特会のドルをただ漫然と米国債に投資するだけの無作為ぶりに対して、私はこれまでも復興財源に充てるべきだと何度も主張してきておりますが、それに対して財務大臣は外為法第7条3項の「為替相場の安定化」という目的に適わないからと否定的です。私は、そうであるならば法改正を行えば良いだけのことと申し上げてきておりますが、今回財務省自身が行ったこの施策を見ても、到底「為替相場の安定化に資する」という目的に適った施策とは言えず、やはり法改正を正面から行うべきではないかと思います。

また、財務省が平成17年に「外国為替資金特別会計が保有する外貨資産に関する運用について」という文章で示した運用基準であり、これまでの私の提案を否定する財務省のロジックとして使われてきた「安全性、流動性、収益性」から見た場合、安全性はJBICに対する融資であるから担保されているとしても、流動性、収益性の観点から米国債と比較した場合にどうかと考えれば疑問と言わざるを得ないということです。だからやるなということではなく、こうした運用基準の見直しが時代の要請に応じて行われるべきであると考えます。

最後の3点目は、JBICそのものに対する心配です。今年4月末に株式会社国際協力銀行法が成立し、政府系金融機関統合の中でいったんは日本政策金融公庫の一部門となったJBICが、2012年4月1日に「晴れて」再度の分離独立を果たすことが決まったわけですが、そのJBICにあえて役割を与えて肥大化させることが目的化していないかなといった懸念です。そもそもJBIC単独では調達コストが高すぎて、やりたいことができないという課題をどう解決しようかという課題解決の目的のために、経済合理性を度外視してまで実施に踏み切ったのではないかと勘繰りたくなるような内容ともいえます。市場でのJBICの調達コストは外為特会から提供される今回のパッケージのドルLIBORフラットを大きく上回っている模様です。安いコストで大量に調達したドルをリスクの大きな投融資につぎ込むなど、リスク管理が甘くなり、焦げ付きが発生してひいては国民負担となってしまうことも懸念されます。

私は、政策金融は必要であるものの、一カ所に集中して行うべきだという立場から、この分離独立には反対してきましたが、残念ながらこの法案は国会で成立をしてしまいました。(詳細はホームページ「国会活動」内の「4/28財政金融委員会報告」をご覧ください。)

組織というのは一旦成立するとその「存続」自体が目的となり、それにとどまらず、「規模の拡大」が目的化されやすくなります。営利目的の民間企業であれば株主や債権者、顧客などからの厳しい評価に常に晒されますが、国営企業はそうではありません。政策金融という錦の御旗を与えられたJBICでは、中々自らが抑制することができなくなります。ただでさえ現在でもJBICは財務省の事務次官や財務官の天下りポストとなっており、財務省の意向を受けた別働部隊が新しく出来上がることにより、一層天下りの温床となる危険性があります。本来、日本政策金融公庫の中で十分に実行できたものをあえて分離独立させてことを正当化するために、今回の円高という好機を利用して「円高対応緊急パッケージ」という名の下で、「JBIC分離独立正当化パッケージ」を発表したというのが、実のところ本質なのではないでしょうか。

今回の施策が、私の考える懸念のとおりにならないように市場を注視していく必要がありますが、私はこれを外為特会の根本的な見直しの第一歩とすべく、前向きにとらえて今後の活動を行ってまいりたいと考えているところです。

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