中西けんじ公式ホームページ(参議院議員:自由民主党 神奈川県選挙区)

国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2010年10月06日 (水)

ボールは政府、国会に

報道等で皆さんもご存じの通り、10月4日、5日の政策決定会合で日銀は新しい金融緩和政策を打ち出しました。金利誘導目標を現状の0.1%から0~0.1%に引き下げること。消費者物価指数の安定(日銀の見解は1%程度の上昇率)が展望できるようになるまで、実質ゼロ金利政策を継続するという時間軸の明確化。そして、国債、社債、CP、ETF、REITなど多様な金融資産買い入れと新型オペを行う為の基金をバランスシート上に創設すること、の三つがその要旨です。

金融界に生きてきた人間から見て、今回の政策変更は非常によく考えられたものだと評価しています。私が9月9日の財政金融委員会で総裁に質問したゼロ金利政策は、しっかり組み込まれることになりましたし、全体的に事後から予防への動きも感じられます。その上で、若干のコメントをいたします。

まず0~0.1%の政策目標金利幅ですが、アメリカFRBの0~0.25%の幅を持った目標と好対比をなすものです。あまり報道されていないもう一つのFRBとの類似性は、超過準備金に対する付利です。日米で呼び方は若干違いますが、中央銀行に法令上の必要量を超えて預けられている市中銀行の資金に対して、中央銀行が金利を支払うことが近年では行われており、この金利水準はアメリカでは0.25%、日本では0.1%です。市中銀行は中央銀行に余剰資金を預ければこの金利が得られるので、これ以下の金利で短期資金運用を市場で行う事にはためらいます。その結果、アメリカのフェデラル・ファンド・レート(日本の無担保コールレートにあたります)は0.2%程度の水準を推移する結果になっており、この0.25%の付利水準を下げるか否かが現在一つの大きな議論になっています。今回の日銀の新しい「実質ゼロ金利政策」においても、この付利水準は0.1%のままで留め置かれています。従って、すぐにオーバーナイト金利が0%に向けて下がるというのは想像しにくく、今後は付利水準を引き下げるかどうかがアメリカと同様に重要なポイントになってくると思います。

二番目の時間軸効果ですが、これまでの日銀の緩和策の中でも比較的うまくいったものが再度登場した感じです。中央銀行がいくら足下の金利を低く誘導しても、その緩和策がいつまで続くか疑問に思われている限り刺激効果はほとんど発生しません。ある一定の結果(この場合は消費者物価指数上昇率が1%程度になること)が達成されるまで緩和を続けるというのは、中央銀行のコミットメントを示すものです。勿論、これを市場が信じるかどうかは別問題ですし、1%になったら緩和が止まってまたインフレ率が低下すると市場が予想すれば、効果はあまりなくなります。また、政策委員会メンバーが定期的に入れ替わることも考えると、将来にわたる制約、コミットメントがどの程度まで有効かは理論的には議論の余地があります。しかしながら、日銀のデフレ克服に対する強いコミットメントの表れとして評価したいと思います。

本当の問題は、日銀がこのようなスタンスを維持していられる間に、政府、国会が日本の産業構造改革や社会福祉改革を進めて、金融緩和無しでも本質的な成長によって経済が発展できるような姿に日本を変えていけるかどうかです。時間軸政策の効果は、最終的にはこの点にかかっていると私は考えています。そんな中で政府は経済対策、成長戦略を覚悟を決めてスピーディーに実行していくことが求められているわけですが、民主党代表選の最中に政府が発表した「日本を元気にする規制改革100」の内容は、民間の意見を反映したものとは到底思えず、各省庁からの思いつきの寄せ集めといった色彩が強いものです。そこからは政府が「規制改革」で「日本を元気にする」という本気度が伝わってきません。この点につき、質問主意書を参議院議長経由で内閣宛てに提出しましたので、来週早々には内閣からの回答が戻ってくるはずです。またご報告いたします。「日銀も漸くわかったらしい」などと評論家じみたことを言っているのではなく、政治は当然私自身も含めて今こそリーダーシップをとって動かないといけません。

最後の基金創設ですが、国債の買い取り額としては量的緩和というには物足りない感はあるものの、リスク資産の買い取りは量的緩和というよりも信用緩和、あるいは金融資産市場の歪みを是正する政策と言えるものです。金融危機等の影響による急激な金融資産市場の価格変動が起こると、リスクプレミアムが拡大し流動性の低下がおこります。これは市場の自動的価格調整による資源の最適配分機能を損なうことになり、経済に大きな損失を与えることに繋がります。公的な資金によって拡大しすぎたリスクプレミアムを縮小させ、市場機能の回復を促すことは非常に重要なことだと、私は今まで色々なところで主張して参りました。9月9日の財政金融委員会でも、日本のREIT(不動産投資信託)市場は、世界第1位、第2位の市場であるアメリカ、オーストラリアに比べて、金融危機後の相場の回復が極めて限定的で、日銀がREITの買い取りを行うことでリスクプレミアムを解消し、株式市場、不動産市場への波及効果が見込めること、ひいては資産効果を通じての消費刺激効果もありうることを、日銀に対して事前質問通告を行い、REIT配当利回りと10年国債の利回り格差の国際比較を資料として提出しておりました。

中央銀行が資産価値リスクを負いながらこうした政策を行う事は、金融政策の枠を超えた極めて財政的な行為となり、今回も日銀法43条の適用によって「臨時の措置」をとるという理解だと思います。この「臨時の措置」というのは日銀としてもぎりぎりの線だったと思いますが、我々はこれをしっかりと受け止めないといけません。つまり、日銀としては臨時措置の形で当座の行動を起こせる体制は作りましたが、これを継続的に且つ大規模に行うとすれば政府、国会の側でそれに対応していかなければなりません。具体的に言えば、この「基金」に対して政府保証を付け、この資産買い入れを金融政策から財政政策として正しく認識し直す事が考えられます。本来は政府、国会の主導で政府系金融機関を通じて行う事がより望ましいのですが、国会の現状を考えるとタイムリーにそのような動きを期待することは難しく、今回の日銀の助け船に政府、国会はすぐに呼応していくべきだと思います。ボールは政府、国会の側に投げ返されました。

 

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