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国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2011年09月20日 (火)

ユーロ圏経済問題について想う

ユーロ圏の経済混乱が続いています。ギリシャがデフォルトするのか、イタリアは、ポルトガルはどうなるのか、そしてドイツはどうやってこれらの国々を助けていくのか。予断を許さない局面が連続し、世界中が固唾をのんで見守っています。そんな中で中国がイタリア国債を購入するとか、スイス中央銀行の為替政策によってスイス円の為替レートが急落して日本国内の個人投資家が損失を被ったり、影響は裾野を広げてきていると言っても良いでしょう。

フランスの銀行はギリシャなどの国債保有額が大きいと言うことで資本市場で厳しい目で見られるようになり、資金繰りにそれなりの努力が必要な状況になっているようです。資金繰りをサポートするために各国中央銀行が年末越えのドル資金を無制限に貸し出すという対策を発表するなど、世界中が緊急危機管理体制に入ってきています。サブプライム問題を巡る世界的金融危機も2007年に発生したBNPパリバ傘下のファンドによる解約停止が端緒だったことが思い出されます。

ユーロ圏の安定が世界経済の安定と回復に極めて重要であることは言うまでもなく、今後も各国が緊密に協力していかなければならないことは明らかです。ここで少し、今回の事態に陥ってしまった構造的要因のようなものを振り返ってみたいと思います。厳密に学問的な議論ではありませんが、大局的な観点から状況を認識し、そして日本が抱えている問題と関連させて考える事は、重要だと思います。

私が金融業界で社会人としての第一歩を踏み出した頃は、ヨーロッパ各国は独自の通貨を持ち、その中でEMSという制度の上でECUという仮想通貨のようなものが存在していました。そしてそれがEUの誕生と共にユーロという通貨になったのです。ヨーロッパ全域で使える一つの通貨が生まれただけに見えるかも知れませんが、財政金融政策の面から見ると一つの通貨というのは一つの金融政策を意味します。EU誕生までは各国それぞれの中央銀行がそれぞれの通貨の金利や通貨供給量を決定していました。しかし、ユーロはどこの国で受け取っても同じユーロですから、金利も供給量も一元管理をせざるを得ず、それを行うのが欧州中央銀行(ECB)です。

また、金融政策の他にもう一つ重要な変化は為替です。昔はドイツ・マルクやイタリア・リラ、フレンチ・フランやギリシャ・ドラクマなどがあり、それぞれ別個に取引されていました。ドイツ経済が弱くなればマルクが売られ、ギリシャ経済が大変なことになるとドラクマが売られていたのです。しかし今ではユーロという一つの通貨です。これは二つの意味で大きな変化をもたらしました。まず、ユーロ圏内諸国間で経済状況に大きな変化が発生した場合、通常では各国間の為替レート変動によって吸収されるべきものが、そのまま持続することになります。例えば域内のある国で生産性が著しく高まった場合、その国から域内他国への輸出が伸びることになりますが、為替が自由に変動していればやがて輸出国の通貨が強くなって輸出競争力が低下し、貿易は均衡に向かうはずです。ところが域内各国が全てユーロという単一通貨を使っているためにこのメカニズムが働きません。

今一つの為替に関する重要な点は、ユーロ圏外との為替レートがユーロと他通貨という一つのもので縛られているため、各国個別の事情が反映されないことです。従って、例えばドイツという域内国の生産性が高まって輸出が増えたためにユーロが強くなる一方、ギリシャという別の域内国の生産性が弱まったとしても、ドイツの方が圧倒的に経済規模が大きいため、ユーロはドイツの強さに引きずられてしまいます。この例で考えると、普通ならばギリシャの通貨が弱まり、ギリシャからの輸出産品の競争力が高まったり、ギリシャへの観光が割安になってギリシャ経済が回復するというプロセスが、ユーロという単一通貨のために働かなくなるのです。

ここではドイツとギリシャを例に取りましたが、実際に起こってきたことを振り返ると、やはりユーロという単一通貨の存在によって一番の恩恵を受けてきたのはドイツであり、ある意味での被害を受けてきたのはギリシャをはじめとする経済が小規模弱体な国々です。ですから、周辺国を中心とする現在のユーロ危機は構造的な必然だったと考える事もできます。

ドイツ経済はユーロ圏の平均よりも高い生産性を保つ一方で、ユーロによる人為的な為替水準のおかげで本来あるべき水準よりも有利な交易条件を、域内、域外で保つことができました。このことがドイツ経済の成長に大きな影響を与えたと思います。ユーロ誕生前は年中行事であったドイツ国内の鉄鋼や自動車産業の組合によるストライキも、最近では耳にすることもなくなりました。もしドイツ・マルクが現在もユーロとは別に存在していたならば、スイス・フランではなくドイツ・マルクが買われていたことでしょう。

逆にギリシャをみてみると、正反対の構図が浮かび上がります。ユーロに加盟せずにドラクマのままだったならば、様々な要因によってドラクマが対ユーロあるいは対ドルや円で大幅に減価し、輸出競争力を高めたり観光客を増やしていたかもしれません。ギリシャの状況が現在ユーロ安を招いているのは事実ですが、別個の通貨ならばもっと以前からより大規模な減価が起こっていたはずです。1999年1月に1ユーロ1.17ドル近辺から始まったユーロ・ドルの為替レートはその後ユーロ安に動き、2000年から2003年にかけては1ユーロが1ドル以下の水準で取引されていました。現在は1ユーロ1.37ドル程度ですから、実は今はユーロ高が続いているのです。

概観してきましたが、少々一般化して日本に置き換えて考えてみましょう。まず、ドイツがギリシャはじめ南欧諸国を援助することはこれまでの経緯を考えると当然のように思えますが、ドイツ国内での合意形成ができるかどうか、見守る必要があります。EUを連邦制に移行して財政もユーロ圏内で一体化しようという主張もあるようですが、時期尚早という見方が圧倒的です。今後道州制を検討し実行していく中で、日本国内でもこの問題を十分に議論する必要があります。
現在は地方交付税という仕組みのもと、唯一財政黒字である東京から地方へと交付金や補助金の形で多額の資金が流れています。国民中心の真の民主主義を目指すために道州制の導入が重要だと思いますが、権限と責任の双方が地方(道や州)に移譲されるとともにもちろん財源も渡されることになります。地方分権、道州制の推進は間違いなく遠心力を日本国にもたらします。そのような状況の中で、どのようにして国内各道州間の貧富や環境の格差が過大にならないようにしようという求心力を維持していくかを、私たちは真剣に考えなければなりません。

次に、金融政策の一元化と財政政策の個別性維持というユーロ圏のそもそもの構造ですが、何が財政で何が金融かという境界の問題がヨーロッパでは日本とは違う形で現れてくる可能性があります。ご存じの通り日本では日本銀行のリスク性資産購入によるバランスシート拡大が財政の領域への浸食と認識されており、財政民主主義との関連で問題視され始めています。ユーロ圏では中央銀行が財政危機にあえぐ国々の国債を銀行などから買い入れることによって国債市場の安定を保とうとしており、中央銀行(ECB)が買い支える意志の範囲内においてこれら諸国の財政が継続しうるという、中央銀行による財政の支配とも言える構図が生まれています。日本でも日銀による国債直接引き受けが議論され始めていますが、現在の論調は日銀に引き受けを強要するという形のものです。日銀が独立した存在である限り、日銀引き受けに依存する構図は日銀による財政の支配に繋がりかねない事も、私達は認識しておくべきでしょう。

最後にもう一つ、為替レートに関しては本来ならば自由に変動することによって経済の自動調整メカニズムの一翼を担うはずのものが、ユーロという形で固定化されたことがユーロ圏経済の混乱の一因となっています。何でも自由に市場に任せれば良いというのは極端な考え方ですが、一カ所(為替レート)を固定することによって本来ならばバネのように変動を吸収してくれるものが固まってしまい、その変動が他の予期せぬ部分に伝わったりしわ寄せが発生することは、どんな局面でも考えられることです。日本国内においてはもっと経済の自立的な調整メカニズムが働いていても良さそうなものなのですが、それがうまく機能していないのは様々な規制のためであり、既得権益を守ろう、現状を維持しようという力が働いているからです。激変する世の中でこのような固定化を望むことは、ますます問題解決を困難にしていきます。

未曾有の国難においては何事も先入観を持たずに、常識を疑ってでも自分の頭で考えていくことが重要です。欧州の危機的混乱を見守りながら、我が国の状況にも十分な注意を払いつつ、学べる点は貪欲に学んでいこうと思います。

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