中西けんじ公式ホームページ(参議院議員:自由民主党 神奈川県選挙区)

国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2013年01月22日 (火)

日銀との新しい関係

金融財政政策が動き出しています。選挙期間中から安倍総裁の発言に金融市場は強く反応し、株価の上昇、円安が起こっています。年末から年初にかけてはアメリカの「財政の崖」問題がとりあえずの解決を見たり、ヨーロッパの信用問題が小康状態を示したり、円安株高への追い風も吹いています。ある意味で安倍首相は非常に幸運なのかも知れません。

 

経済は期待によって動きます。上向きの期待を多くの人が持っていれば景気は上向き、物価は上昇します。どうやれば楽観的な、上向きの期待を醸成できるのかについては、明確な処方箋はありません。公共事業を起爆剤として使い、一部だけでも賃金が上昇し始めることで消費が上向き、直接の恩恵を受けていない人々も上向きの期待を持つようになるというようなプロセスが財政政策の範疇で考えられます。金融政策では金利を下げることによって投資の期待純収益率を高めたり、あるいは貨幣供給量の増加を永続させると約束することで、インフレ期待を作り出すことができるとも言われています。勿論経済学者の間でも「流動性の罠」に陥った状況下での政策効果に対しては様々な見方がありますし、効果を認める経済学者でも副作用の大きさを理由に反対する学者が少なくありません。

 

私の立場は、金融政策だけでは景気回復効果に限界があり、日銀とともに政府がしっかりとアクセルを踏まなければならないというものです。政府のアクセルと言ってもバラマキを行うのではなく、規制緩和などによって競争力を高める努力とセイフティーネットの構築を行い、実際にどの産業部門に資本、人材などの資源を配分するかは市場の判断に任せるというのが私の考えです。自民党の最近の動きは民主党政権下でのまったく不明確な経済政策からの転換という点では評価できますが、そこかしこに旧来の自民党の臭いがぷんぷんしています。ターゲティングポリシーなどといっていますが、政府が成長部門を見極めて投資を主導する、特定の産業に補助金を手厚く配分していく等という産業政策は1970年代までのものだったのではないでしょうか。

 

金融政策に話を戻しますが、日銀の政策はすでにかなり緩和的であり、政策手段としてはほぼ出尽くしていると言ってよいと思います。しかし、政策効果を発現するうえで、極めて重要と私が考えるのは、将来も緩和を続けるという強固な姿勢を示し、景気回復に対するコミットメントを強く発信していくことです。こうした考えから、白川総裁が物価目標に対して懐疑的な発言を様々なデータを用いながら行うたびに、自ら政策効果を減じているようなものだと私は首をひねってきました。決定会合後の発表では必ず、「日銀は強力な金融緩和を間断なく推進していく」というような文言が使われますが、一方で「理論的には実現が難しいんですよね」という発言が行われるわけですから、せっかくの金融政策も期待醸成という意味では全く効力を持たなくなっていました。白川総裁は非常に真面目なエコノミストだと思いますが、国民を踊らせる能力はお持ちで無い、しかしその頑なさはもし貫き通すのであったならば、一人のセントラルバンカーのモデルとして良きにつけ悪しきにつけ語り継がれたのかもしれません。

 

ところが、最近では民主党政権下でも政治からの要求が高まるにつれて小出しに緩和策を出し続け、ついには今日の決定会合で2%の物価安定の目標、期限を定めない資産買入れ方式の導入、政府・日銀の共同声明のような政策を決定することになりました。何が起こったのかはわかりません。任期切れ直前ですから、次の総裁が政府の圧力に屈して任期を始めるより、自分がその役を引き受けて、次の総裁にはすっきりと出発して欲しいと考えられているのかも知れません。しかし、この段階で方針転換を行うのであれば何故もっと早くそうしなかったのか。確かに昨年は4-6月期、7-9月期の2四半期連続のマイナス成長を経験しましたが、皮膚感覚的には直近で急に景況が悪化したという雰囲気はありません。海外の状況はどちらかというと落ち着きを取り戻しつつありますから、何が白川総裁を動かしたのでしょうか。日銀法再改正は避けたいということなのでしょうか。職を賭してでも貫くなら貫き通す、そうでないならばもっとずっと以前に大胆な緩和を決断すべきだったと考えています。

 

みんなの党は日銀法改正案を28日から始まる通常国会に提出する予定です。これで5回目の提出です。われわれの法案は、日銀の目的として物価と雇用の安定を明記するとともに、政府と日銀の間で物価目標に関して法律に基づく協定(アコード)を締結するなどの内容となっており、日銀に対して政策手段の独立は認めるものの、その目標については強く縛りをかけるものです。こうした法案提出とともに、委員会質疑でも金融政策と日銀のあり方については大いに質していくつもりです。中央銀行の独立性が何故必要かと言えば、通貨の価値を守るためです。通貨の価値とは、海外との関係においては為替レートですし、国内においては物価です。通貨の価値が毀損すれば自国通貨安、つまり円安になりますし、インフレが発生します。通常の世の中では自国通貨は強い方が好まれ、インフレは嫌われます。つまり、円高、インフレ抑制を目指すのであれば、日銀の独立性は非常に重要なのです。ところが今求められているのはこの反対です。ならば、中央銀行の独立性を制限することによって、我が国の目指す経済状況に近づくことができるとも考えられます。

 

現在、日米で壮大な金融、財政政策の実験が行われています。FRB(アメリカ連邦準備理事会)は昨年2月にインフレターゲットに近い考え方を導入しましたが、12月には失業率を政策目標に追加しました。(FRBは2月の政策をインフレターゲットとは認めていません。)これは非常に興味深い動きです。経済理論の話としては、明確なインフレターゲットは経済効果を持ち得ないという主張が経済学会では以前からあり、かのクルーグマン教授も「中央銀行が自らが無責任になることを人々に信じさせることができない限り、インフレ目標は達成され得ない」と繰り返し発言してきました。目標が明確であれば、経済指標がそれに近づくにつれて政策の転換を予想する人々が増えて指標の動きは目標手前で止まります。ならば真の目標よりも高めの目標を発表すれば良いではないかとも考えられますが、人々はそれを必ず察知してやはり真の目標の手前で政策効果は消滅します。この考え方で行くと、明確な目標を持った金融政策でインフレを起こすことはできません。目標に到達するに足りる期待を作り出せないからです。クルーグマン教授の主張は明確で、金融政策は期待を通してしか経済に働きかけることができないが、財政政策は期待なしでも直接働きかけることができるというものです。

 

FRBの12月の政策修正は、ある意味でクルーグマン流の「無責任さを信じさせる」効果があるかも知れません。物価が目標だと人々は考えていますが、FRBはそれに新しい目標を追加しました。二つの目標を達成することの難しさを指摘する声が多いのですが、私はそれよりも、FRBは今後も指標の追加をする可能性があると言うことを市場に告げたのだと思っています。周りがいくらFRBの政策目標に注目しても、彼らはそれを自由に変更したり追加したりすることができ、そのことが実は中央銀行のもつ強い力なのではないでしょうか。今後は経済財政諮問会議で日銀に対して政策目標を提示する動きになる可能性がありますが、このFRBの議論は主語を経済財政諮問会議に代えればそのまま成り立ちます。諮問会議は政策目標に柔軟性を持たせることで、より目標達成の可能性を高めることができると思います。

 

世界中の中央銀行は、市場との対話を続けることで政策実現を目指してきました。日銀がいくら資金を市場に放出しても、相手(市場経済)がお金を回そうと思わない限り、お金は回りません。日銀は政府の定めるインフレ目標を事実上受け入れることを決めたのですから、今後は政府が定めるいかなる目標をも受け入れてその達成に努めるという姿勢をとるべきでしょう。政府が定めて日銀が達成を目指す目標を限定列挙するのではなく、政府が日銀に指示してはならないこと、例えば財政ファイナンスなどを規定した上で、それに当たらない目標に関しては諮問会議や国会の定めるところに従うという考えです。明確なインフレターゲットに対する反論として、政府や国会が目標インフレ率を決定したら政権交代ごとにバラバラな数値目標を指示する可能性があり、金融政策の一貫性が保てないというものがあり、私もそう考えています。しかし、一貫した緩和策を市場に信じさせることができないのであれば、皮肉なことではありますが、日銀が政治に振り回されることで金融政策の効果が却って回復するのかも知れません。政治は学問の世界ではありませんから、単なる実験ではなくしっかりと結果を出していかなければなりません。政府、国会と日銀との新しい関係の構築を目指して頑張っていきます。

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