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2012年10月31日 (水)

政府・日銀の共同文書 ― 再びボールは政府のもとに

昨日の政策決定会合で日本銀行は一段の金融緩和策を打ち出しました。従来からの買い入れ基金の増額や、「無制限」に銀行の貸し出しをサポートする新たな基金の創設などが発表されましたが、一番の「サプライズ」と思われるのが政府と日銀の共同文書でしょう。文書にはデフレ脱却に向けて政府と日銀が一体となって最大限の努力を行うと書かれています。

 

これは大きな前進であるかのようにも見えますし、何も変わっていないと考えることもできます。

 

3年前、国会での質疑で「乗数効果」すら知らないことが明らかとなった当時の財務大臣菅直人氏が、2009年11月20日の閣議後懇談会で突然「デフレ宣言」を行いました。それまで1995年以降一時期を除いて持続的な価格下落が続いていた中での、まったく唐突な、真意をいぶかるデフレ宣言でした。あえて宣言をするからには当然対策が打たれなければなりませんが、それから昨日の日銀政策決定会合までのほぼ3年の間、何が具体的に行われてきたのでしょうか。また、何が行われなかったのでしょうか。今回の日銀の決定には、当然政府からのプレッシャーの増加が寄与しているでしょう。新しい二人の審議委員が加わったことで、日銀としても経済見通しの変更がし易くなったという理由もあると思います。しかしながら、いろいろな状況の変化を勘案してみても、「何をいまさら」という気持ちがどうしても強くなります。どうして民主党政権はもっと早く日銀に対する働きかけを行い、日銀としてもアナウンス効果を重要視してこなかったのか、不思議で、残念でたまりません。

 

ご存知のとおり、みんなの党は2年前から日銀法改正案を国会に繰り返し提出してきました。これは、日銀の手足を縛ろうというような意図を持つものではなく、政府と日銀はともに政策当局として同じ目標に向かって政策を決定、実行しているということを内外に示す枠組みを作るためのものです。

 

日銀はこれまでも世界に先駆けて非伝統的な金融緩和政策を行ってきました。これが十分か十分でないかはいくらでも議論ができますが、学問の世界の外では無意味な議論です。なぜならば、金融政策としては十分、つまりこれ以上の緩和策をとってもマネタリー・ベースを増やしてもマネー・ストックが増えない(世の中を回るお金が増えない)と考えても、それでも追加の緩和策を打ち出すアナウンスメント効果により、何らかの影響を実質経済に与えることができる可能性があるからです。何よりも、政府に対して強いプレッシャーを与えることになります。これまでも私は、ボールは政府の側にあるという考えをお話してきました。日銀はもっとアナウンスをうまく使って金融政策の効果をさらに高めることができると思いますが、それでも金融政策だけで景気が上向くわけがありません。日銀からすれば政府を動かさなければならない。ならば、政府が動かざるを得ない状況を作り出すのが一番の得策だったはずです。

 

今回の共同文書は、政府の日銀に対するコントロールを強めるものという解釈もできますが、私は逆に日銀から政府に対する大きなプレッシャーになるものだと考えています。日銀は、これ以上の緩和策は実質的な効果がほぼゼロである一方で潜在的なリスクが大きいという立場をとり続けていますが、それでも今回はあえて踏み込んできました。今回こそ、ボールは本当に政府の側にあるといえるでしょう。私の日銀に対する最大の不満は、どうせこういうことに至るのであれば、なぜもっと早くから外部の予測を上回るような政策を打ち出し、金融政策だけではデフレ脱却できないという自らの考えを立証するために、政府にプレッシャーをかけてこなかったのかということです。今回の決定に対する外部の評価を見る限り、日銀が「負けた」という見方が大勢ではないかと思いますが、同じ決定を行うにしてもそこに至る経路次第では対政府で優位に立つこともできたわけですから、もったいない話です。

 

さて、ボールを受け取った政府側ですが、無策な民主党政権はどんな政策を打ち出してくるのでしょうか。これから年末にかけて策定されていく来年度予算は、間違いなく選挙を睨んだものになってきます。民主党お得意のばら撒きのオンパレードになるでしょう。日銀からのプレッシャーを悪用すれば、これにさらに無意味な公共事業を大量に織り込んでくる可能性もあります。以前お話したこともありますが、私はすべての公共投資に反対しているわけではありません。今後の経済発展を支えるためのインフラ作りは重要であり、これを怠ると後々ボディーブローのように効いてくるからです。しかし、短期的なGDP増加を狙った土木工事などを無節操に行うと、これまでの財政政策の繰り返しとなり、短期的な効果が剥げ落ちた後に残るものは増大した政府債務だけということになります。

 

政府民主党がとるべき景気刺激策は、国民が「ルールが変わった」と実感するような大幅な規制緩和、自由化による競争力向上策だと私は考えています。公共事業によって何が起こるのかはこれまでの経験で大方の予想がつきますから、そこには大した乗数効果は存在しなくなっています。しかし、競争環境の変化、特に農業や医療、電力、貿易における規制緩和が行われると、経済学でいわれるところの生産要素の配分がどんどん変更されていきます。新しい成長産業が生まれ、これまで成長していた産業が安定期に入ったり、場合によっては衰退を始めたりするからです。競争がなければ競争力は向上しません。経済はこういったダイナミックな動きがなければ成長しませんし、景気回復も達成されないと私は考えています。

 

このような規制緩和、自由化には、当然痛みが伴います。ルールの変更そのものは法律を変えるだけで歳出は必要ありませんが、痛みが発生する部分においてのスムーズな再生が起こるようなセイフティーネット運営にはお金が必要です。しかし、ここにかかる資金は景気刺激のための公共投資に比べればはるかに小さくなるでしょうし、何よりも政策効果は短期、短絡的なものではなく、長期的なものになります。効果が生まれるまでの期間に関しては、経済が期待によって動くということを忘れてはなりません。日本経済の将来に対して明るい予想を皆が持つようになれば、具体的な自由化の効果が発生する前に景気は回復を始めるはずです。もちろん早ければ早いほど良いですから、デフレ宣言をした3年前から民主党政権がこのような競争力向上のための政策を取ってくれていれば、今頃日本経済はまったく違う状態だったでしょう。

 

なぜ民主党政権はこのような政策を取ることができないのでしょうか。それは、彼らが究極の利権集団だからです。基本的な国家観を持たない烏合の衆であるがゆえに、支持してくれる団体の利益を代弁することしかできません。規制緩和と自由化を進めようとすれば、農業団体、医師会、労働組合などから大きな反対を受けることは目に見えています。しかし、このような支持団体に対して根気強く説明し、説得していかなければ、世の中は変わっていかないのです。政策を選ぶとき、政治家として組織票目当てで選挙で楽な道を選べば、効果が低い一方で財政が悪化するために国民に痛みを押し付けます。本来政治家とは、国民の痛みを中長期的に少なくするために自らが困難を負うべきものではないのでしょうか。

 

いささか遅きに失したとはいえ、日銀は動きました。これで吹っ切れたとしたら、今後も政策効果と費用(リスク)のバランスを勘案しながら追加緩和を打ち出していく、あるいはアナウンスを向上させていくでしょう。再度繰り返しますが、ボールは政府の側にあります。日銀にやれというだけではなく、自分たちが何をできるのか。共同文書を作って「一体となって」努力すると宣言したのですから、政府はすぐにも動かなければなりません。獲得議席の読みを最優先させて解散、選挙日程を弄り回していてはだめです。実効性のある政策が決定されていくように、予算委員会、財政金融委員会などでの活動を通じて私も働きかけていきたいと思います。

 

 

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