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国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2012年02月29日 (水)

AIJ問題について

多くの企業年金基金などから資金運用を受託していたAIJ投資顧問の運用状況に関する問題が発覚し、金融庁(正確には関東財務局)が業務停止の行政処分を発表した上で証券取引等監視委員会による検査が始まっています。この事案についてはまだまだ不明な事ばかりで、全貌が明らかになるまでには長くかかると予想されます。現状では情報も限られ、また論点が多岐にわたる問題ですが、現時点での私の考えを簡単に纏めてお伝えしようと思います。

 

 まず、企業年金の資金が実際に投資顧問会社によって運用されるまでには、実に多くのプロセスを経ており、多くの主体が関与しているということを最初に認識する必要があります。企業年金、あるいは基金は、従業員に対する将来の年金支払いを約束しており、その為に資金の運用を行います。どのような運用をするかの一義的な責任は、資金運用者である企業年金、基金に属します。そして、一部の資金は直接債券や株式の購入などに回され(直接投資)、残りの資金は外部の運用受託者(投資顧問)へと運用委託されます。その際に、勿論最終決断は企業年金、基金の担当者が行いますが、証券会社や年金アドバイザーによる提案などが行われます。

 

 企業年金、基金の運用担当者がある投資顧問への運用委託を行おうと考え、それを組織決定した場合、資金は信託銀行へと送られ、投資顧問会社からの指図の下でこの資金が運用される事になります。運用成績に関しては勿論投資顧問会社から運用委託者である企業年金、基金へと報告されますが、資金や証券を実際に管理している信託銀行からも、預かり資産の報告が運用委託者へと報告されます。さらに、定期的に監査法人による監査も行われ、これらの報告の正確さがチェックされる仕組みになっています。

 

さて、これらを踏まえた上で考えると、二つの大きな論点が浮かび上がってきます。まず、この企業年金資金の外部委託運用の流れの中で、どこがおかしくなったのかの問題を考える必要があります。必要な牽制機能が働いていたかという問題です。勿論、倫理観無く法令違反を行った疑いをかけられている投資顧問会社は言語道断です。しかし、経済思想的、そして国際競争的観点に基づき、投資顧問業の許認可制から登録制への変更を行ったとき、つまり箸の上げ下ろしに関するまでの細かな規制を行うのではなく、ルールを定めて定期的に検査を行い、問題を起こした運用業者に対して厳しい処罰を加えるという制度に移行したとき、我々はある程度の確率で問題が発生する事は想定していたはずです。それらに対して、市場原理に基づいて何らかのチェック機能が働き、牽制が行われ、全体としてはうまく機能する事が想定されてきました。今回、そのチェック機能が働いていなかったことが明らかになりましたから、どこがおかしくなったのか、入念に精査する必要があります。言い方を変えると、これは単純に投資顧問業に対する規制を厳しくする事で解決する問題ではないということです。登録制から許認可制へ戻すべきという意見も呈されていますが、問題の投資顧問会社は、登録制に移行する前に投資一任業務の認可を受けていた、という事実を踏まえれば、入り口における規制はどれだけ効果的なのかということには疑問があります。それよりもむしろ関与した証券会社、アドバイザー、信託銀行、監査法人がそれぞれの責任を果たしていたのか。もし果たしていたとするなら今後牽制機能が働くためにはどの主体の役回りを変えていくべきなのかを考えるべきだと思います。また自らの自由意志で投資の決断をした企業年金、基金のガバナンスや運用体制も見直さなければなりません。金融商品取引法上のプロ・アマの分類という形式的な問題に帰着させるのではなく、旧社会保険庁からの天下りや母体企業の総務畑出身の理事に果たして運用の決断ができるのかという本質的な問いかけをしなければなりません。

 

もう一つの大きな問題は、そもそもの厚生労働省の年金に対する関り方です。年金は雇用関係や社会保障の重要な部分を占めますので、これまでは厚生労働省が管轄してきました。年金の給付に関しては、そのあり方で間違いはありません。しかし、厚生労働省は資産運用をはじめとする金融業に対しては専門的な知見を持ち合わせていません。その端的な例が、厚労省からGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に示されている4.1%や、多くの企業年金が用いている5.5%という高い予定利率(保証利回り)です。

 

金融の世界では、高いリスクを伴わずに高いリターンを得られないことは常識です。年金資金は支払いも常に行っていますし、ある程度の低リスクで流動性の高い資産を持つことが必要ですから、国債などを多く保有します。これは正しい選択です。仮に平均利回り1%の債券と高リスク資産を半々で保有して、平均利回りを5.5%にしようと思えば、単純に計算すると10%程度のリターンを生む資産を持つ必要があります。しかも、瞬間的にではなく、これから何十年にもわたって10%のリターンです。大きなリスクをとって平均的な予想利回りを10%にする事はできますが、その代わり元本が消えてしまうほどのリスクをとる事が必要になります。

 

私はこれまで財政金融委員会でも質してきましたし(こちら)、この目ヂカラ(こちら)にも書いてきましたが、年金資金が高いリスクを取りながら高いリターンを追い求めるのは根本的に間違っていると思います。年金は将来の支給という負債を抱えており、それに見合った安全資産を保有すべきものです。何故それが、様々な高リスク資産への投資を行うのかといえば、それは4.1%や5.5%という高い予定利率を設定しているからなのです。高い予定利率は、企業会計上は非常にありがたいものです。なぜならば、将来の給付予定額をこの高い利率で割り引く事によって現在価値を小さくし、今現在年金資金として保有しなければいけない額を小さく見せる事ができるからです。例えば30年後に1億円を支払わなければならないとき、これを1%で割り引くと現在価値は約7,400万円ですが、5.5%で割り引くと約2,000万円になります。もし予定支払いがおよそ30年後の1億円に当たる企業が、現在5.5%の予定利率を用いておりその利率を1%に引き下げるならば、約5,400万円の追加積み立てが必要になるのです。それほどに大きな違いが出てくるのです。被雇用者を保護するため、予定利率の引き下げ後でも十分な積立があることが示されなければ、予定利率の引き下げは法律上認められません。年金に十分な積み立てがあるなら別ですが、通常は企業本体が追加で巨額の拠出をしなければなりません。財務状況の芳しくない企業や年金基金が予定利率の引き下げができず、高リスク商品に手を出しやすいという、いわば窮鼠猫を噛む状況となってしまっているのです。

 

本来厚生労働省はこれを戒め、より低リスクで実現できる低い予定利率を採用させるべきです。厚生労働省の金融に関する無知と無作為が、今回のAIJ問題の根源にあると私は考えています。できないものをやれと言う。あるいはできない事を知らずにやろうとする年金に、それで良いよと言う。それによって企業年金や基金は高い予定利率に縛られ、本来投資すべきでない資産へと資金を振り向けるようになってしまったのです。今回の問題を受けて、厚生労働省は厚生年金基金の運用ガイドラインの見直しを行うことを発表していますが、ガイドラインの問題に矮小化させ、問題の根っこにある予定利率を放置してしまっては到底本質的な解決にはなりえません。

 

 税と社会保障の一体改革で公的年金の問題は脚光を浴びていますが、実は企業年金にもこのような大きな問題が存在しているのです。私は国会審議などを通じて、引き続き厚生労働省の年金への関与の仕方について問題点を質すとともに、提言を行っていこうと考えています。

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