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国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2011年10月14日 (金)

経済成長と「人」

日本経済は1991年のバブル崩壊以来、低迷を続けてきています。どのような指標によって経済の力を測るかによって落ち込みの大きさに関して違う見方があったり、あるいは所々経済力が回復しているように見える場所があったりもしますが、基本的に大きなトレンドとして下向きであった、右肩下がりであったということには異論がないでしょう。

 

日本は今、震災からの復興という大きな課題に直面していますが、たとえ復興が着実にすすんだとしても、それだけでは日本経済全体としてはまた元の右肩下がりに戻るだけです。これからの日本を考えるとき、復興だけではなくその先のことも忘れるわけにはいきません。特に、この右肩下がりの20年間で日本は多額の政府債務を積み上げてきました。そして、復興のために、もちろん必要な事ですが、それに更なる上積みがなされます。復興債を発行しようが、建設国債を発行しようが、あるいは「埋蔵金」を取り崩そうが、税収以外の財源によって政府支出がなされる限り政府の純債務が増加することに変わりはありません。

 

この膨れ上がっていく債務を私たちはいずれ返済しなければならず、そのためには何としても経済を成長させていかなければなりません。日本経済を如何に成長させていくかについての私の考えを、最も重要な要素である「人」に光を当ててご説明したいと思います。

 

経済学の基本に立ち返って考えれば、経済成長を実現するために有効なのは労働力や資本といった生産要素を増加させることと、一定の労働力と資本を用いたときの生産物を増やす、つまり生産性の向上です。日本では人口は総体で見ても減少を始めており、特に労働人口ははっきりとした減少トレンドにあります。日本には大量の資本もありますが、資本というものは非常に動きの速いものです。資本移動に関してはかなり自由化を進めてきましたから、日本国内で如何に資本が不足、あるいは過剰であっても、日本における資本生産性が高まれば資本は自然と日本に集まってきます。人口をすぐに増やすことはできませんし、大量の移民受け入れというような話も現実的ではありませんので、私は生産性の向上が何よりも重要だと思っています。

 

生産性というと、効率性という言葉に結び付けて考えがちですが、必ずしもそれだけではありません。日本経済全体というマクロな観点に立った場合、個々の生産活動の効率性を高めることだけではなく、生産性の高い産業に対する適切な労働力と資本の配分を行っていくことが非常に重要です。第一次産業、第二次産業、第三次産業といった言葉は古くからありますが、経済の産業構造はどんどん進化していきます。いわゆるITが我々を取り巻くようになって以来、この進化は非常に速くなっています。つまり、今日の花形産業が来年には斜陽産業になっているかもしれませんし、再来年世界経済を引っ張っていく産業は今日ではその萌芽すら存在しないかもしれないのです。そのような環境では、労働力(ヒト)と資本(カネ)が高い流動性を持って移動しなければ、生産性が落ちてしまった産業にいつまでも貴重な生産資源が貼り付けになってしまうことになります。

 

資本に関しては先述の通り日本でも非常に流動性が高まっています。しかし一方では、銀行の追い貸しによって本来は退場しているべき企業が存在し続けているケースも依然見られます。これは「ゾンビ企業」と呼ばれますが、ゾンビ企業に貼り付けられている資本は端的にいうと無駄になっている資本です。このような企業が存続することは資本の無駄遣いになるのですが、それ以上に問題なのはこれらの企業が雇用を行っていることです。雇用はあればよいというものではありません。本来生産性の高い企業であれば、労働者は努力することによって賃金の上昇を獲得することができますが、存在すべきではない低生産性の企業では、労働者はいくら頑張っても報われません。

 

今ご説明したことの「企業」を「産業」に置き換えて考えても、まったく同じことが言えるのです。すでに国際的な競争力が失われてしまったような産業が、政府の直接、間接の支援によって生きながらえているケースというのは一般論としては存在します。そして、産業全体で考えたときに最も重要な問題だと私が考えているのは、このような競争力を失いつつある産業から新しい、より生産性の高い産業へと労働力の移転がなかなか進まないということです。「労働力の移転」と書くととても抽象的ですが、一人ひとりの労働者がひとつの仕事を辞め、新しい仕事に就くという転職こそが、この「労働力の移転」の実質です。労働者がひとつの企業に就職し、その企業で社会人生活を全うするという終身雇用的な労働観でいると、雇用者であるところの企業そのものが国際環境の変化に応じて自らの業態を変えて行かない限り、労働者はいずれ生産性が低い企業、産業で働くことを余儀なくされる事になります。では、企業そのものがどんどん新しい産業に進出していけば良いかというと、幾つかの問題がありそれは簡単ではありません。最大の問題は、企業にとって労働力と同じく重要な生産要素である資本を獲得する上で、行き過ぎた多角化やめまぐるしい業態変化は不利に働くことになるからです。株主や債権者にとって、今年と来年で違うことをやっているような会社に出資、融資するというのは、その判断が非常に難しくなります。

 

このように少し冷めた目で考えると、日本経済を復活復興させていくには個々の労働者が容易に新しい職場に転職していける仕組みが重要だということになります。企業の側を考えると、産業全体として生産性が落ち込んでしまった場合は国内、海外で移転して生産性を高めるか、それが無理であれば廃業、清算をして、資本と労働力を新しい企業、産業のために提供する必要があります。合理的な資本主義の観点からは、生産性を持続的に高めていくためにはこれが正当な考え方ではありますが、これでは様々な場所で大小の痛みが発生します。特に問題なのは、労働者の生活がなかなか安定しないということです。労働者の生活安定のためには終身雇用のような就労形態で、かつその雇用主たる企業が安定していれば最高です。従ってこれまでの日本の政策では、企業が終身雇用を守るように労働者の解雇を困難にし、かつ企業が潰れにくいように銀行による低生産性企業への融資(不良債権)を容認するようなものでした。これは、世界経済が右肩上がりで伸びていて単純な工業品に対する需要が伸び続けているような状況では持続可能ですが、世界的に生産力が十分に存在し、新興国の追い上げも激しくなっているような今日、日本はその政策の根本的な考え方を変えていかなければならないと私は思います。

 

労働力の流動化が極めて重要であるという観点に立った時、政府がなすべきことは何でしょうか。

 

まず、流動化を促進するためには、それを阻害してきた規制を撤廃し、労働法制などを抜本的に見なおしていくことが必要です。更に、生産性が落ち込んでしまった企業や産業がいつまでも銀行の延命策にすがりながら雇用を続けることがないように、不良債権の査定など金融検査制度も見なおしていくことが重要でしょう。また、政府による投融資や特定産業への税制優遇などはかえって資源の最適配分を歪め、生産性の向上を阻害することがありますから、基本は規制緩和です。そして、何よりも大切なのが、労働力流動化のプロセスの痛みを緩和するためのセイフティーネット拡充です。OECDの統計などを見ますと、日本の直接の雇用対策政府支出は下から数えたほうが良いような成績です。これは、これまで雇用対策を政府ではなく民間企業が行なってきたことの証左です。これでは、世界市場で通用する競争力を持つ企業を作っていくことはできません。セイフティーネットは政府の手で拡充する必要があります。

 

具体的には、まず雇用保険、健康保険、年金保険などの社会保障が雇用形態によって差別的悪影響を受けないことをしっかり担保する必要があります。そして、労働者がそのキャリアの途中で転職をする際に必要な職業訓練などを充実させなければなりません。勿論「フリーライダー」の問題など、制度を悪用する人々が出てくることも考えられますが、これは民間企業が雇用対策を行なっていても同じ事です。まずは労働力を流動化し、そこで発生する痛みを国がケアすることに重点をおいて考えていくべきだと思います。

 

TPPなどの貿易、経済協力協定は国内企業や生産者を競争に晒すことによって、効率的な資源再配分を促進します。しかし、様々な産業で「痛み」が発生し、それを避けようとするために議論がなかなか進みません。しかし、日本経済が更に成長していくためには「痛み」は必要なのです。痛みによって初めて世の中は動き出します。高度成長は敗戦という大きな痛みをバネにしたものだったのではないでしょうか。痛いからやらないのではなく、痛いからこそ頑張ってやって、その傷口にはしっかりとセイフティーネットで手当てすることが重要だというのが私の基本的な考え方です。小泉改革は、日本を動かすという意味では非常に重要で有意義なものでした。しかし、痛みを強いるだけで、セイフティーネットの提供が十分に行われたとは思えません。
労働市場の自由化の遅れが経済成長における一番のボトルネックになっていると私は考えています。社会保障が雇用形態によって差別的悪影響を受けないことをしっかり担保した上で雇用に関する規制を撤廃していくならば、その結果生じる流動的な労働市場では雇用者と労働者が常に最適な関係を探すというある種の緊張関係が生まれ、そこでは女性の社会進出が更に進むとも考えています。今後の日本経済成長にとって最重要な労働市場改革は、連合に支えられている民主党には決して遂行できません。しがらみのない私たちの手で、この改革に取り組んでいきたいと考えています。

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