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国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2018年06月19日 (火)

アベノミクス、初心に立ち返れ

「道半ば」

  アベノミクスの基本は、デフレからの脱却に真正面から取り組むということである。現時点において「道半ば」と言われるのは、政府も認めているように、まだデフレから「完全に脱却した」とはいえないためだ。また、日銀の掲げた2%の物価上昇目標も達成できていない。

 ただ、経済政策で一番重要なことは雇用の創出、つまり「働きたい人に活躍の場を提供すること」である。その点ではアベノミクスは十二分に成功している。この先、賃金が上昇していると実感できるような状況を作り、消費の盛り上がりにつなげることが重要である。そこが問われている。

  景気に敏感なところ、労働市場の需給に敏感なところ、具体的には非正規労働者を中心に賃金が上がり始めている。また、大企業よりも中小企業で上がっている。賃金が上昇傾向にあるのは間違いない。

 しかし、大企業を中心としたいわゆる日本型雇用がつづいている部分では、「雇用の安定と引き換えに賃金は抑制しても良い」という感覚が労使ともに残っている。そのような労働移動が少ない正規の労働者に関しては、労働市場の需給がすぐには賃金に反映されにくい傾向となりがちである。

 景気に敏感な部分に関しては、アベノミクスというマクロ経済政策をきちんと継続してゆけば、「見えざる手」による賃金の上昇がこの先も期待できる。しかし、この制度や習慣によって経済政策への反応が鈍くなっている部分に対しては、「政府の企業への賃上げの要請」といった「見える手」も必要である。官製春闘などと揶揄(やゆ)すべきではない。

 また中長期的な視点からすると、生産性の向上こそが持続可能な賃金の上昇につながることを忘れてはいけない。そのためには、賃金が能力や成果に応じて上がるという仕組みに変えていく必要がある。その部分はまだ「道半ば」。働き方改革を進め、生産性革命をやろうという現在の政策の基本的な方向性は間違っていない。

 

 当初の熱気薄れた

  ただ、第2次安倍内閣が発足した当初の、「なんとしても経済を成長させる」という熱気がやや薄れたように感じられることが気になる。

 新三本の矢では、かなり分配政策のほうに重点が移っているのではないか。消費税率の引き上げについても、社会保障を充実していくという。もちろん、そうした政策は必要ではあるが、その分、経済成長に対する熱意の部分が見えにくくなってしまっている。

 

規制改革にもっと力点を

 2014年にスイスであったダボス会議(世界経済フォーラム年次会議)で、安倍晋三首相は「いかなる既得権益といえども、私のドリルから無傷ではいられない」と述べていた。あのような「明日から絶対やる」という熱気が、政府の中から発信されなくなってきている。国家戦略特区をめぐる加計学園の問題があったことも影響しているのかもしれない。

 規制改革は半歩先、一歩先を行かなければならないので、冒険をしなければならない部分がある。しかし、現状を見ていると、やや安定を目指すことに傾いているように思われる。社会保障の充実を前面に押し出すことは、野党との争点を消すという意味から政治的には正しいのだろう。

 しかし規制改革というものは、事柄の性格上アクセルを踏み続けないと止まってしまう側面がある。「最初の三本の矢はどこに行ってしまったのか?」という感覚を持つ人が、増えてしまっているのではないか。規制改革を行い中長期的な成長の基盤を確立するというメッセージを発信しつづけることが重要だ。

 成長するためには、生産性の向上が必要不可欠である。生産性が上がれば、企業収益も上がり賃金も上がる。そのためには技術革新が必要だが、それを妨げている規制がたくさんある。起業一つとっても、大量の書類が必要だし、まだまだハードルが高い。思い切った規制改革に挑むことが不可欠だ。

 

出口戦略はゆっくりと

 日銀が「2%の物価上昇目標について、達成時期を明示しない」ことにしたのは、現実的であり良いことだと思う。これまでは金融政策決定会合で達成時期を先延ばしするたびに、後手に回っているという印象を与えてしまっていた。

  そもそも最初に2年と年限を切って、物価上昇目標を掲げたこと自体に無理がある。発表当時は明確に言い切ることがサプライズにつながり、政策の効果を後押しする側面もあったが、2年先の世界経済の状況など分かるはずがない。

  オーソドックスな金融政策論的にいうならば、物価目標は期限を区切って設定すべき性格のものではない。大事なことは、人々が「物価は2%ぐらい上がるものだ」との期待を持ちつづけるように、分かりやすい旗印を掲げることである。その上でさまざまな金融政策を実行し、中長期的に2%程度が維持できれば、物価上昇目標政策は成功したといえる。

  金融政策を今後どうするかという点では、長い時間をかけてゆっくりやっていくことが大切だ。デフレが20年もつづいているのは日本だけ。そこから脱却するのに、即座に出口戦略にいけるわけがない。まずマイナス金利をゼロ金利に戻し、量的緩和の買い付け量は徐々に減らす。国債は満期を待ちながらゆっくり償還していく。そういうやり方しかない。

  いま、中東の緊張で原油価格が上昇し、米国の金利も上昇傾向にある。物価が上がる可能性は高まっていると思う。ただ、物価上昇が本格化した時に、日銀がすぐさま利上げなど金融の引き締めを考えて、それが効き過ぎてショックを与えることが一番怖い。

  たとえばバブルの末期に、不動産の総量規制というショック療法にダメを押す形で、大幅な金利の引き上げを一緒にやってしまった。そのために景気が一気に冷え込んで、そのまま立ち直れなくなった。あの繰り返しだけは避けなければならない。だから、時間をかけてゆっくりやるしかない。

  そういう意味でのいわゆる「出口戦略」は、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁の今の任期では終わりきれないだろう。「黒田後」がどういう政権かはわからないが、いずれにせよ出口戦略であせって失敗しないようにしなければならない。

  中途半端に「出口戦略に行く」となった時に、市場はそれだけでショックを受ける。下手をすれば、また「失われた10年」の繰り返しになる。それだけは避けなければならない。

 

TPPは米国の参加を辛抱強く待つ

  日米の貿易交渉では、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表で協議の枠組みができたが、基本的には環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を基本に置く日本と、2国間の自由貿易交渉(FTA)を求めてくる米国との間で、双方の主張がなかなかかみ合わないということになる。

 

 日本としてできるのは、まずTPPの参加国を増やす。タイ、インドネシア、韓国などが対象になる。そうしてアジアでの連携を強める。

 

 また、TPPが実際に動き出すとオーストラリアから牛肉が日本にどんどん入ってくる。そうなれば、政治的にも大きな力を持っている米国の畜産業界が黙っていない。米国の畜産農家が米政府を動かすことが期待できる。

  だから、TPPを早く発効させて、米国も最終的に参加せざるを得なくなるような実績を作っていくことが重要だ。

  ただ、米韓FTAでは米国が在韓米軍のことまでちらつかせて韓国を譲歩させ、米国に相当有利な協定を結んだ。トランプ米大統領にとってはこれが成功体験になってしまっており、日本にとってはあしき前例だ。

  自由貿易の議論の文脈のなかで、軍事力など別の要素を出してきて取引をするのはいけない。日米関係はかつてないほど良好だが、ここは譲れないところだ。

 

人口減下で工夫の余地あり

  人口減が経済への大きな押し下げ要因であるのは確かだが、人口が減っている国が必ずしもみな、低成長に陥っているわけではない。グローバル化がこれだけ進んだなかでは、どんな国でも世界に打ってでていくことができれば、そこに可能性がある。

  米国でも人口は増えているが、自動車産業の街であるデトロイトなどは非常に疲弊している。一方でシリコンバレーは非常にいい。要は成長の要因がハードからソフトに変わった。そういう意味では、米国だろうと日本だろうと、企業に依存しているいわゆる「企業城下町」のままでは衰退せざるを得ない。

  個別の面で見ていけば、日本では世界で戦えるソフトパワーが中央、地方に限らずたくさんある。香港やシンガポールの高級スーパーでは日本の果物や野菜に非常に高い価格がついている。

  ブランドをしっかり確立していけば、まだやりようはいくらでもある。たとえば福岡市は特区制度を利用して起業が盛んになっている。起業が増えることで、それを支えるインフラの部分である会計士や弁護士も増え、アジアからも起業家がやってくる。そういう相乗効果が生まれている。

  日本の人口が減っていくということ自体は前提として考えるしかないが、そのうえで工夫の余地は十分にある。

毎日新聞プレミア に掲載されています

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