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国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2014年10月06日 (月)

円安による最大の恩恵を受けたのは誰か~外国証券1.2兆ドルを保有する財務省外為特会

かなり急速に円安が進んでいます。お盆の頃までは102円近辺を行ったり来たりでしたが、その後はほぼ二ヶ月で8円程度円安になり、現在は1ドル110円に近い水準で取引されています。米国経済に対する楽観的な見通しが増して金融政策の転換が取りざたされる一方、日本では消費税増税後の景気減速が注目されており、日銀の金融政策については日銀の黒田総裁が「追加緩和」に言及するなど、緩和からの出口を見通せるような状況ではありません。そうすると日米金利格差が今後は拡大されると予想されますから、ドルが強くなり円が弱くなるのは当然の動きです。また、為替は他の金融商品、指標よりも、「ファンダメンタルズ」の議論が難しく、一旦流れが出来るとなかなか勢いが止まらなくなります。

 

為替水準が動くたびに政治家のコメントが報道されます。私は為替の水準そのものに関して高過ぎるとか安過ぎるとかいうつもりはありません。市場が決める価格ですから、政治家が何を言ってもあまり意味もありません。為替の水準が決まればそれに対して経済がアジャストし、生産や消費のパターンが調整されて新しい均衡に移ります。例えば長期にわたって円高トレンドが続く中で日本の輸出企業は生産拠点の海外移転を行ってきました。

 

為替がどの水準になるかは市場が決めることで経済がそれに対応していくことになりますが、経済の実態とあまりに外れた為替の水準であれば持続可能ではなくなり、為替レートはあらためて変化せざるを得なくなります。いずれにせよ政府がこの水準に対して出来ることはありませんし、「何もすべきではない」というのが国際的な認識です。一方で為替レートの変化が急激になると、生産や消費の調整が追いついていけずに経済に混乱が生じることがあります。従って為替の急激な動きは好ましくないというのが、政治家として最大限出来るコメントになります。いわゆる為替政策としては、為替レートの水準を力づくで訂正を図ろうとする為替介入は先進国の間では「やるべきではない」ということがコンセンサスとなっていますが、市場の動きの速度を緩和するための市場介入(スムージングと呼ばれます)は、かろうじて許容される唯一の市場介入といったところでしょうか。

 

為替レートの変化に対応していくのは民間経済だけではありません。この2年間の円安の動きでもっとも恩恵を受けたのはだれでしょうか。それは財務省の所管する外国為替特別会計(「外為特会」)ではないかと思います。これまで円高への動きに対応して円売りドル買い介入を行ってきた結果として、外為特会には膨大な量の外貨が積み上がり、米国債を中心に1.2兆ドル分の外国証券を保有しています。外為特会は円で借金をしてドルへの投資をしていますから、円高に進めば為替評価損を抱え、円安に動けば評価損が減少します。単純に計算をすると80円から110円への30円の動きで1.2兆ドル×30円=36兆円程度の恩恵となったはずです。事実、2012年3月時点ではこの勘定が約41兆円の含み損を持っていましたが、2013年3月では27兆円に含み損が減少しています。この間に為替レートは1ドル77円から89円へと円安になりました。2014年3月には為替レートが104円で含み損は9.8兆円になっています。恐らく1ドル112~113円程度になれば、外国為替特別会計の為替含み損は消えることになるでしょう。

 

ようやく外国為替特別会計の含み損益がほぼゼロになってきたわけですから、以前から私がお話ししている「外貨準備のあるべき姿」に移行していく良いチャンスです。日本より外貨準備を多く保有している国々は中国ぐらいであり、我が国は実にアメリカ・イギリスの約10倍、ロシアの約2.5倍という水準の外貨準備を持っていて、先進国で日本ほど巨大な外貨準備を持っている国はありません。変動相場制のもとで為替介入は行わないことになっているわけですから考えてみれば当然と言えるでしょう。いまこそどのような規模の外貨準備が日本にとって必要なのかを考えるべきです。現状追認ではいけません。介入をしてきた結果こうなったというだけでは、国が十分な説明責任を果たしているとは到底言えません。あるべき姿を考えて、そこに至る道筋を財務省はしっかりと示すべきでしょう。私はこれまでも保有する外国債券は満期を迎えたものについて、これまでのように外貨で再投資を行うのではなく、順次円に戻してゆくべきだと主張してきました。外為特会の保有する証券の平均満期は4年程度と推測されるので、何年かかければ大幅に縮小することが可能です。外為特会の順次縮小をアナウンスすることは、米国債の保有を今後減らすことを意味しますから、外国為替市場や米国債市場には影響はあるでしょう。しかし、円の借金と外貨での資産を両建てで持ち、膨大な金額となってしまった特別会計を維持し続けることの正当な理由は見出し難いと思います。

 

円安が進むと、原油など輸入品の円建て価格が上昇することによってインフレ圧力になります。「2年で2%」のインフレ目標を掲げた日銀にとっては有り難い話でしょう。しかし一方で、円安になっても以前ほど企業業績の上昇には繋がらなくなっています。これは、日本企業が生産拠点の海外移転を進めてきたことなどによります。あるいは個人の生活で考えると、円安によるガソリン価格の上昇で、自動車の運転が控えられている様です。環境保護の観点からはこれは好ましいことかも知れませんが、人々の移動を妨げるほど移動コストが上昇しているとすれば問題です。その一方で、海外から日本を訪れる観光客にとっては円安は喜ばしいことでしょうし、国内のホテルや観光施設は円安を歓迎していると思います。

 

このように、経済全体としては円安の影響はプラスともマイナスとも言いにくいものですが、部分部分を見ていけばプラスであったりマイナスであったりします。政府は調整の痛みを緩和させるために何らかの措置をとることも検討すべきでしょう。例えば外為特会で含み益が出るような水準まで円安が進んだとすれば、その一部を実現して介護用の車両などに対する燃料費の補助をする事も可能です。為替レートの水準そのものに対して働きかけをしようとするのではなく、それを所与のものとして、外貨準備のあるべき姿の検討なども含め経済をどのように為替水準に対応させていくのかにフォーカスしていきたいと思います。

 

巨大な外為特会の含み損が解消される今こそ適正規模について議論すべきです。

 

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