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国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2010年10月22日 (金)

池の中のクジラ

2010年3月末時点の日本国債発行残高は、普通国債と財投債を合わせて発行ベースで720兆円になります。ここから1年未満の短期の債券を除いて時価ベースで見る、つまり投資家の立場から見ると約684兆円です。このうちゆうちょ銀行が156兆円を保有しており、これは割合で見ると郵貯が22.8%になります。これに対してメガバンクを含む全ての銀行を合わせた保有割合は20.6%です。つまり、ゆうちょ銀行は全ての銀行を合わせたよりも多くの日本国債を保有しているのです。因みに日銀の国債保有残高はゆうちょ銀行の1/3以下です。

特定の資産(日本国債)に資金の大半を投資しており、しかも投資資産市場規模の2割以上を保有しているという状況は、いざという時に自由に売却できないという極めて大きなリスクを抱えているということになります。

金利リスクについてはどうでしょうか。ゆうちょ銀行の広義の自己資本は8.4兆円です。ゆうちょ銀行のディスクロージャー誌から保有している日本国債の平均残存年限を計算すると、約3.8年となります。この平均年限を元に計算すると、金利が1%上昇するとゆうちょ銀行の日本国債ポートフォリオは5.9兆円の損失を計上することになります(*)。1.5%も金利が上昇してしまえば資本金は全部吹っ飛んでしまって債務超過になってしまうのです。

バーゼル銀行監督委員会が定めた新たな自己資本比率規制である「バーゼルⅡ」の第二の柱では、金融機関の自己管理と監督上の検証が求められています。金利リスクについてはいわゆるアウトライヤー基準が導入されており、金融庁の監督方針では金利リスク量が広義の自己資本の20%を 超える銀行(アウトライヤー銀行という)について、監督当局は特に注意を払うこととなっています。

ゆうちょ銀行のアウトライヤー比率は、2010年3月末で24.2%と基準である20%を上回っているばかりでなく、1年前の2009年3月末の22.2%よりも悪化しています。比較のためにメガバンク二行(三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行)を見てみると、2010年3月末でそれぞれ3.3%と6.1%であり、いずれも広義自己資本の20%の枠内に充分に収まっていますし、両行とも2009年3月末よりも比率は減少しています。金融庁は当然のことながらゆうちょ銀行に対してリスク削減か資本の拡大を求めなければならいはずですが、ゆうちょ銀行に対するアウトライヤー基準の適用については、金融庁が定めた「主要行等 向けの総合的な監督指針」において、「ゆうちょ銀行は、法令上、一部の資産について国債等の安全資産の保有が義務付けられているため、(アウトライヤー基準に該当する場合の)監督上の対応をするに当たっては、当該特殊事情を適切に勘案することとする。」とされ、一般銀行とは異なった基準が適用されてしまっています。

こうしたゆうちょ銀行の抱えるリスクを踏まえた上で、民主党の郵政改革法案について考えると、二つの大きな疑念が生まれます。

まず第一に、ゆうちょ銀行はユニバーサルサービスを提供する関連銀行としての役割を担うこととされていますが、ユニバーサルサービスとして提供するとされている役務は簡易な貯蓄、送金、決済のみであり、これらの役務を提供する上で巨大な日本国債投資ポートフォリオは全く不要です。ゆうちょ銀行の収益は4,000億円から5,000億円ですから、少しの金利変動ですぐにでも赤字に陥り、経営が不安定になってしまうでしょう。ゆうちょ銀行の収益が減少してしまった場合、あるいは赤字になってしまった場合にはユニバーサルサービスの提供は止めるというのでしょうか。それとも税金を投入するのでしょうか。

さらに第二の疑念としては、ゆうちょ銀行が万が一破綻することになっても、恐らくゆうちょ銀行の果たす役割を他に肩代わりしてくれる様な銀行は現れないであろうということです。政府の郵政改革関係政策会議においても、ゆうちょ銀行が破綻したとしても国費を投入して再建せざるを得なくなるだろうとの議論が平然となされているのです。このような使命を負わされている銀行、そして銀行業法下にあるにもかかわらず破綻すれば恐らく政府が国費で立て直すであろう銀行が、金融庁の定めたアウトライヤー規制に大きく違反しているというのはいかがなものでしょうか。

ゆうちょ銀行を今後どのようにしていかなければいけないかを考えると、二つの事が重要になってきます。

まず、何とかしてこの巨大な銀行を小さくしていかなければいけないということです。預金者からのお金のほとんどは国債に投資されているのですから、預金を国債に振り替えてもらう、あるいは 国債だけに投資する中期国債ファンドの様な投資信託に振り替えてもらうのも一つの考え方ですし、地域ごとに分割していくことも考えられます。今の5分の1程度の大きさになって初めてメガバンクと同程度になるのですから、かなり思い切ったことをやっていく必要があります。

もうひとつの重要なポイントは、この巨大な金利リスクを何とか管理していくために、民間から優れた能力をもった金融のプロフェッショナル達を雇用しなければならないということです。ゆうちょ銀行のような巨大な銀行の経営が悪化する事は、金融システムに大きな動揺を与えますし、国民に対して莫大な費用が発生する可能性もあります。この銀行を破たんさせないためにはしっかりしたリスク管理が必要ですが、そのような能力を持った人々を半官半民の金融機関で雇用する事は困難でしょう。そのためにもゆうちょ銀行の完全民営化は絶対に推し進めていかなければならないのです。

 

(*)試算根拠 (2010.10.25追加掲載)      (利回り、利率が低いために年限とデュレーションは同じと仮定しています)

    ゆうちょ銀行国債残高155.89兆円×平均残存年限 3.8年× 1% ≒5.9兆円

 詳細は活動報告「10/21財政金融委員会報告」内の「配布資料はこちら」をご参照ください。

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