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国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2013年06月17日 (月)

「日本再興戦略」に見えるアベノミクスの危うさ

6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」の「基本的考え方」に以下のように書かれています。

「中長期的に、2%以上の労働生産性の向上を実現する活力ある経済を実現し、今後 10 年間の平均で名目 GDP 成長率3%程度、実質 GDP 成長率2%程度の成長を実現することを目指す。2010 年代後半には、より高い成長の実現を目指す。その下で、1人当たり名目国民総所得(GNI)は中長期的には年3%を上回る伸びとなり、10 年後には 150 万円以上増加することが期待される。」

どこか可笑しいと思いませんか。名目成長率が3%で、実質成長率が2%ならば、インフレ率が1%になります。安倍内閣の三本の矢のうち、一本目の矢である「大胆な金融政策」では日銀が2%のインフレ率目標を掲げています。この金融政策に関してはこれまでもお話ししてきました通り、期待に働きかけるという以上はインフレ率が2%に到達しそうになって、若干それを超える様になっても日銀は金融引き締めをしないという強い確信を市場に植え付けなければなりません。ところが第三の矢でインフレ率の目標が1%程度と言ってしまうと、一体どうなるのでしょうか。こんな辻褄の合わないことをやる国は他にはありませんから、どうなるかの先例は無いでしょうが、うまく行かないだろうということだけはわかります。

金融緩和も必要ですし、成長戦略もとても大切です。やろうとしていることは間違ってはいないし、私としても応援したい部分もあります。しかし、これも繰り返しになりますが、現在の金融、財政政策は物価、賃金、財政等の関係において、その成功のためには非常に細い経路を進むものです。どちらに転んでも大変なことになりかねない。だからこれまでの政権、日銀執行部はそれを避けてきました。ここに勇気を持ってチャレンジしていくことは良いのですが、1本目と3本目の矢でも整合性がない、こんなことで大丈夫なのかというのが私の偽らざる心境です。

最初に引用した部分にもう一つ数字が載っています。名目GNIが中長期的には年3%を上回る伸びとなり、10年後には150万円以上増加することが期待されるというくだりです。現在の一人あたりGNIは約384万円です。簡単に逆算をしてみると、10年後に150万円増加するには、今年から毎年3.35%増加する必要があります。成長戦略に対する最も代表的な批判は、成長戦略は中長期的には必要なものだが即効性が低いというものです。私はそれでもやるべきだと思っていますが、即効性が低いというのは事実です。再興戦略に組み込まれた成長戦略を全てその工程表通りにやっても、実際にそれがGNIという実体経済の数字に表れるのには2~3年はかかるでしょう。ということは10年後に150万円増やすためには年4%以上の伸びが必要ということとなります。季節調節済の名目GNIで1994年第一四半期が499兆円、2013年第一四半期が491兆円ですから、この20年間のGNIの伸びはほぼフラットか、若干低下しています。「一人あたり」の数字を目標としていますから、ひょっとすると人口減少をあてにしているのかも知れません。

更にこの数字に関しては、安倍首相の各地での演説も大きな問題です。「一人あたりGNI」と言うのは、GNIを人口で割っただけの数字です。380万円強と、サラリーマンの平均給与額(400万円強)と近い数字なので誤解しやすいのですが、個人の収入とは全く無関係です。もしこの一人あたりGNIが個人収入を現すのであれば、三人家族で平均1,150万円の収入があることになります。日本は残念ながらそこまで豊かな国ではありません。実はGNIには企業所得も含まれています。つまり、企業が今以上に利益を出したものの従業員の給与は増やさないという場合でもGNIは増えるのです。しかしながら安倍首相は、各地の演説で、国民の年収が150万円増えるかのような話を何度もしています。菅官房長官も「首相はわかりやすく説明しようとしたのだと思う」等と説明していますが、これも官房長官自身が理解していないことを明らかにしているだけです。スタッフの誰かが首相に説明する時に、似たような数字だから個人給与額と混同してしまったのか、それとも確信犯なのかはわかりません。しかし、こんなに単純な間違いを平気でしてしまい、それが正されないという政権に、この難しい舵取りを任せておいて大丈夫だとは到底思えないのです。

揚げ足取りをする気は全くありません。物価上昇等に関する矛盾も、総所得についての議論も、経済財政運営上決定的に重要だからこそ指摘しているのです。これからの荒海を乗り切るのに心許ない船長や航海士が船を迷走させるのであれば、それを正すのが政治家の責務です。国政の質の向上に向けて、しっかりと目を光らせていきたいと考えています。

 

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