中西けんじ公式ホームページ(参議院議員:自由民主党 神奈川県選挙区)

国際金融のプロ。最前線にいたからワカル!日本のココが変!

2010年08月23日 (月)

為替相場に関して

ドル円為替レートが85円をめぐる攻防となり為替水準に対する発言が多くなっています。8月6日(金)の米国での、事前予想より悪い内容の雇用統計の発表で、円高の流れが決定づけられてから、もうすでに2週間以上が経過してしまいました。これまでの政府の対応は緩慢であり、無定見であるといわざるをえないと思います。そもそも市場のことは市場が決めるとして、なにも対処はしない、という選択肢も存在するわけです(これはこれで覚悟がいります)が、なにか対策を打たなければいけない、ということを菅首相をはじめとして政府はいっているのですから、それならスピード感をもって果敢に対策に取り組まなければいけません。政府の緩慢な動きに市場は覚悟のなさを見透かしてしまっています。経済対策のとりまとめというのも関係閣僚の聞き取りをやっと始めたという段階ですし、菅総理と白川日銀総裁の会談をセットする、しない、というようなことにも必要以上の時間をかけてしまいました。為替政策は財務省の専管事項ですが、金融政策をあずかる日銀とのあいだでは緊密な連絡があってしかるべきです。なぜ菅総理は休暇中の軽井沢から白川総裁に一本電話をしてみる、というようなことが行われなかったのでしょうか。先週は、これだけ為替や株式相場が緊張して景気の先行きを懸念している中、財務省では、財務大臣が小田原で民主党代表選に向けた自分のグループの会合で不在の間、何と財務副大臣、政務官もすべて休みで、政務三役の誰一人として財務省に登庁してこなかった日もあったそうです。政治主導は何処にいってしまったのだろうか、危機意識をもっているのだろうか、大いに首をかしげざるをえません。

為替介入に関して4点指摘をしておきたいと思います。

まず、中国の通貨管理政策を批判しているG7のメンバーである日本が為替市場に単独介入を行うことは無理があるし、また介入そのものにも単独では効果はないだろうと考えています。為替レートが円高から円安に反転していくためには、そもそも日本がデフレから脱却してインフレに転じ、経済の回復とともに日本人のリスク選好度が高まっていかないとなりません。それとは別の道で介入によって為替市場を操作しようとするのであれば、単独介入ではなく欧米との協調介入、少なくとも欧米中銀からの暗黙の了解とサポートが必要です。アメリカの失業率は表面上日本の二倍です。アメリカも欧州も経済の見通しが厳しいなかで輸出主導の景気下支えを図って、自国通貨安を容認しています。そのような状況で為替介入へのサポートは困難であるのは間違いないでしょう。可能性があるとすれば、日本が欧米に対して日本の窮状を懇々と説明し、日本の経済状況は見た目よりずっと悲惨であり、このままでは日本発の世界恐慌の可能性すらあると説得することです。もし欧米がそのように納得すれば、日本の単独介入であれ欧米との協調介入であれ、欧米はサポートするでしょう。逆にこのような同意無しに日本が単独介入を行えば、効果が無いばかりでなく、欧米当局との大きな摩擦と日本に対する大きな非難を引き起こすことになりかねません。私が早急に欧米の通貨当局のトップと緊密に話すべきだといっているのはまさにこの点です。

第2に、仮に欧米からの同意があって介入を行えたとしても、その経済的なリスクについては十分考えておかなければなりません。現在でも外為特会の外貨ポジションは90兆円で、評価損は約30兆円になっています。為替市場で1000億円単位の取引を行う参加者は沢山います。今の為替の流れを介入によって反転させるためには、少なくとも10兆円単位の介入が必要になるでしょう。そのような大規模な介入を行っても、もし効果が無く更に10パーセント円高が進めば、損失は追加介入分だけで1兆円余計に増えることになります。日本は既に巨大な外国為替取引のポジションを持っているのです。予算の財源が限られている状況で特別会計の積立金をも当てにしているなかで、介入は大変大きな経済的なリスクがあることを改めて認識していなければなりません。スイスは最近までのユーロ買い/スイスフラン売りの単独介入で1兆円以上の損失を抱えた模様です。精神論だけでリスクの分析を伴わない議論は、全く無益で有害です。介入する以上は効果がなければなりません。それは勝たなければいけないということです。

第3に、外国為替取引に関しては日本の産業・貿易構造の変化に伴って大きな変化が起きています。5年前、10年前のデータや常識にとらわれて議論をしていると、判断を大きく誤ることになります。日本は原材料を輸入して製品を輸出しているので常にドルの受け取り超であり、ドル円レートが円高に振れれば日本は大変なことになるというのが少し前までの常識でした。ところが最近では、輸入の多くがドル建てである一方、輸出に関しては円建てやユーロ建てが増加し、貿易統計を見るとマクロ的には日本はドルに関してネットで支払い超です。つまり、ドル円のレートに関してだけ言えば、円高になれば日本は助かるのです。これは案外知られていないことだと思います。一方でユーロ円や他のクロス円に関しては、昔のドル円と同じ議論が依然として当てはまります。また、アジアにはドルにペッグした通貨もありますから、ドル円の影響が全くないとは言いませんが、最新の貿易構造やデータを元に理論的な議論をして通貨政策は決める必要があります。ドル円ばかりを気にしていると見誤ります。

最後に、市場関係者と話しているとまだあまり過熱感が感じられません。日米金利差が急速に縮んできていることなどもありますし、購買力平価との関連で見ている人々も「まだまだ」という感触のようです。市場は過熱感を感じれば何処かの段階で自立反転します。逆に、市場が「まだまだ」と思っているときにいくら介入しても、投機家を呼び寄せてかつてのポンドの様になるだけです。感情論や精神論にとらわれず、正確なデータを元に冷静に情勢を分析してリスクを考え、海外の関係者にはしっかりと説明を行い、市場のタイミングを捉えて果断に行動することが求められています。

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