今の議論は減税や補助など「お金を配ること」に偏りすぎており、財源についての関心が薄れています。パイの奪い合いに終始するのではなく、分かち合うための富を生み出す政策を進めていきます。
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可能性に挑戦し、豊かさを分かち合う社会を
「賃上げ」と「減税」
103万円までの収入に税金がかからない制度は、「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法の精神に基づくものだと私は理解しています。
したがって、物価の上昇により基本的な生活費が上がったことに対応して免税基準を引き上げ、実質的な「減税」をすることには大きな意義があると思います。
一方、私は10年以上前から「賃上げ」の必要性を訴えてきました。
日本は独裁国家ではないので、政府、ましてや一人の政治家が企業に対して「賃金を上げろ」と命令することは出来ません。しかし、「賃上げは企業の社会的責任である」と国会で強く働きかけるとともに、賃上げを促進する税制改正も行なってきました。
現在、賃金が上がりつつある状況が続いています。この流れを定着させるために、引き続きしっかりと支援していきます。
そのお金はどこから?
さて、賃金が上がっても、減税を行なっても、皆さんの手元に入るお金が増えるという点では同じです。
また、高校授業料の無償化、幼児教育・保育の無償化、出産費用の助成、福祉タクシー券やバス無料パスなどによっても皆さんの支出が抑えられますから、手元に残るおカネはやはり増えます。
ただ、賃上げとこれらの政策には、大きな違いがあります。賃上げは、経済活動を活発化させて企業収益が上がったことで増えたパイを、従業員の皆さんで分けるということです。
それに対して「無償化」とは「税金によって全額負担しますよ」ということですし、「助成」とは「税金で一部を補助しますよ」ということですから、元手となるのは我々が払う税金です。
財源に責任を
たしかに、ここ数年税収は増えていますが、国債などの政府の借金の残高は昨年末で約1318兆円でした。日本国内で生み出された「稼ぎ」とでもいうべき名目GDPは約609兆円ですから、すでに稼いでいる額の二倍以上の借金があることになります。
したがって、これらの政策を実行するには、どこかから財源を確保してこなければなりません。いわゆるパイの奪い合いです。財源が不足すれば、さらに借金を増やすことになりますが、それでは将来の大規模な財政出動に対応する余力が失われてしまいます。
「借金は悪」「財政赤字は解消すべき」と単純に言うつもりはありません。私が政治家として大切にしているのは、「本当に支援が必要な人のためには、国は借金をしてでも手を差し伸べるべきである」という考え方です。
しかし、今の議論は減税や補助など「お金を配ること」に偏りすぎており、財源の確保についての関心が薄れているように感じられます。私は20年以上のビジネス経験を通じて、「お金は天から降ってこない」ということを学びました。その視点から見ると、現状には危うさを感じざるを得ません。
日本を前へ
政府には、収益を上げて税金を払う能力がありません。しかし、払っていただいた税金を使ってインフラを整備したり、国民の皆さんにとってプラスになる事業を支援したりすることは出来ます。
例えば、桐蔭横浜大学の宮坂教授が発明した薄くて曲がる「ペロブスカイト太陽電池」は、日本が世界第二位の生産量を誇るヨウ素を主原料としています。エネルギーの約九割を海外に依存する我が国にとって、次世代太陽電池を国産の原料で製造できることは朗報です。
また、国際医療福祉大学大学院の下川副大学院長が取り組んでいる世界初の「認知症に対する超音波治療」は、すでに治験段階に入っています。実用化されれば、5500万人と言われる世界の認知症患者を救うことになります。
さらに、私自身が財務金融部会長として抜本的な改革を進めた新NISAは現在2560〇万口座。成人の四人に一人にまで普及しました。これは多くの方の堅実な資産運用を後押しすると同時に、資本市場の成長と安定を通じてスタートアップ企業の資金調達を支援することにもつながります。
立ち止まってパイを奪い合うのではなく、国民の皆さんが前に進むことを支援し、日本の発展を後押ししていきます。